名作シリーズの中には必ず出てきそうな子供向け寓話である。1943年に出版され、これまで世界中で5000万部にも達する大ベストセラーだ。はずかしながら今まで読んでいなかったので、読んでみた。
すぐにファンタジーの世界が広がる。親がベッドの中で子供に読んであげるのにちょうどいいようなトーンだ。ストーリーは、サハラ砂漠に不時着したパイロットが目が覚めると、星の王子さまがいたというところから始まる。このパイロットは、まさにサン=テグジュベリの職業だ。このパイロットと星の王子さまの交流が、この物語の底流に流れているのだが、それはまさに、この本の献辞に書かれているように、テグジュベリとこの本を捧げた親友との友情が隠されているのだろう。
『星の王子さま』から織り成すファンタジーの世界は、おもわず子供が空想の世界に入り、夢を膨らませ、星の王子さまやこのパイロットに自分を重ね合わせるのが、想像される。親にとっても読ませたくなる、もってこいの物語だろう。それが、これまでベストセラーを続けるゆえんでもある。
その本当に平易な子供向け物語の中に、人生の真理のようなことばが出てくる。そのことばの重みは、子供向け物語の中に出てくるので余計に感じるのかもしれない。
以下あげるのは、キツネと王子さまの会話だ。
・ 王子さま-友だち(になってくれる人)をさがしているんだ。『なつく』ってどういうこと?
キツネ-それはね、『絆を結ぶ』ということだよ。
王子さま-絆を結ぶ?
キツネ-そうとも。きみはまだ、ぼくにとっては、ほかの十万の男の子と何も変わらない男の子だ。だからぼくは、べつにきみがいなくてもいい。きみも、別にぼくがいなくてもいい。きみにとってもぼくは、ほかの十万のキツネと何の変わりもない。でも、もしきみがぼくをなつかせたら、僕らは互いに、なくてはならない存在になる。きみはぼくにとって、世界で1人だけのひとになる。ぼくもきみにとって、世界で一匹だけのキツネになる...
・ キツネ-人間たちはもう時間がなくなりすぎて、ほんとうに何も知ることができないでいる。なにもかもできあがった品を、店で買う。でも友だちを売っている店なんてないから、人間たちにはもう友だちがいない。きみも友だちがほしいなら、ぼくをなつかせて!
星の王子さま-どうすればいいの?
キツネ-がまん強くなることだ。はじめは、ぼくからちょっとだけ離れて、こんな風に、草の中にすわるんだ。僕は横目でちらっときみを見るだけだし、きみもなにも言わない。ことばは誤解のもとだから。でも、日ごとにきみは、少しずつ近くにすわるようにして...
・ キツネ-きみが夕方の4時に来るなら、僕は3時からうれしくなっている。そしてとうとう4時になると、もうそわそわしたり、どきどきしたり。こうして幸福の味を知るんだよ!でもきみが来るのが行き当たりばったりだと、何時に心の準備をしたらいいのか、ちっともわからない・・・ならわしって大事なんだ。
・ 王子さま-ならわしって?
キツネ-これもずいぶん忘れられてしまっている。ある一日を、他の毎日とちがうものにすること、あるひとときを、ほかの時間とはちがうものにすることだ。
・ キツネ-ものごとはこころで見なくては、よく見えない。いちばんたいせつなことは、目には見えない。
・ キツネ-きみのバラをかけがいのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ。
・ キツネ-きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。きみは、きみのバラに責任がある。
なお、この本の挿絵は、サン=テグジュベリ自ら作成のもので、この物語と一体になっているようないい絵だ。
『星の王子さま』サン=テグジュベリ著(新潮文庫)
すぐにファンタジーの世界が広がる。親がベッドの中で子供に読んであげるのにちょうどいいようなトーンだ。ストーリーは、サハラ砂漠に不時着したパイロットが目が覚めると、星の王子さまがいたというところから始まる。このパイロットは、まさにサン=テグジュベリの職業だ。このパイロットと星の王子さまの交流が、この物語の底流に流れているのだが、それはまさに、この本の献辞に書かれているように、テグジュベリとこの本を捧げた親友との友情が隠されているのだろう。
『星の王子さま』から織り成すファンタジーの世界は、おもわず子供が空想の世界に入り、夢を膨らませ、星の王子さまやこのパイロットに自分を重ね合わせるのが、想像される。親にとっても読ませたくなる、もってこいの物語だろう。それが、これまでベストセラーを続けるゆえんでもある。
その本当に平易な子供向け物語の中に、人生の真理のようなことばが出てくる。そのことばの重みは、子供向け物語の中に出てくるので余計に感じるのかもしれない。
以下あげるのは、キツネと王子さまの会話だ。
・ 王子さま-友だち(になってくれる人)をさがしているんだ。『なつく』ってどういうこと?
キツネ-それはね、『絆を結ぶ』ということだよ。
王子さま-絆を結ぶ?
キツネ-そうとも。きみはまだ、ぼくにとっては、ほかの十万の男の子と何も変わらない男の子だ。だからぼくは、べつにきみがいなくてもいい。きみも、別にぼくがいなくてもいい。きみにとってもぼくは、ほかの十万のキツネと何の変わりもない。でも、もしきみがぼくをなつかせたら、僕らは互いに、なくてはならない存在になる。きみはぼくにとって、世界で1人だけのひとになる。ぼくもきみにとって、世界で一匹だけのキツネになる...
・ キツネ-人間たちはもう時間がなくなりすぎて、ほんとうに何も知ることができないでいる。なにもかもできあがった品を、店で買う。でも友だちを売っている店なんてないから、人間たちにはもう友だちがいない。きみも友だちがほしいなら、ぼくをなつかせて!
星の王子さま-どうすればいいの?
キツネ-がまん強くなることだ。はじめは、ぼくからちょっとだけ離れて、こんな風に、草の中にすわるんだ。僕は横目でちらっときみを見るだけだし、きみもなにも言わない。ことばは誤解のもとだから。でも、日ごとにきみは、少しずつ近くにすわるようにして...
・ キツネ-きみが夕方の4時に来るなら、僕は3時からうれしくなっている。そしてとうとう4時になると、もうそわそわしたり、どきどきしたり。こうして幸福の味を知るんだよ!でもきみが来るのが行き当たりばったりだと、何時に心の準備をしたらいいのか、ちっともわからない・・・ならわしって大事なんだ。
・ 王子さま-ならわしって?
キツネ-これもずいぶん忘れられてしまっている。ある一日を、他の毎日とちがうものにすること、あるひとときを、ほかの時間とはちがうものにすることだ。
・ キツネ-ものごとはこころで見なくては、よく見えない。いちばんたいせつなことは、目には見えない。
・ キツネ-きみのバラをかけがいのないものにしたのは、きみが、バラのために費やした時間だったんだ。
・ キツネ-きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、永遠に責任を持つんだ。きみは、きみのバラに責任がある。
なお、この本の挿絵は、サン=テグジュベリ自ら作成のもので、この物語と一体になっているようないい絵だ。
『星の王子さま』サン=テグジュベリ著(新潮文庫)