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グローバル・スタンダードの最高峰資格CFAとCFPを持つ完全独立のFP・資産運用アドバイザー尾藤峰男の書評ブログ

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『統計数値を疑う』門倉貴史著-を読んで

2008-07-24 09:43:48 | Weblog
この本は、いま気鋭のエコノミストが書いたものだが、なかなか面白い。

統計のマジックのようなものをかなり広範囲にわたって書いている。

たとえば、交通事故の死亡者数だが、警察庁の統計では、92年のピーク11800人から05年には6871人に減ってきている。多くの人は車の安全性が向上したから、飲酒運転などの交通取締りが行き届いてきたから、ガードレールなど道路インフラが整備されてきたからとその理由を想像するだろうが、どうもそれだけではないのだ。警察庁は、交通事故の死亡者のカウントを、24時間以内に死亡した場合だけにしている。すなわち1日以上たって死亡した人はその中に入らない。救急医療の技術が著しく進歩し、延命が可能になれば、統計上の数値はどんどん減っていく。事実、厚生労働省が『人口動態統計』で発表する一年で交通事故で死亡した人数は、05年で約10000人だから、大きな乖離だ。

その他、おもしろいところでは、犯罪検挙率の大幅な低下だ。87年には60%を超えていた検挙率が01年には20%まで落ちた。これをもって安全神話が崩壊した、由々しきことだと誰もが思うが、一方で違う見方をする必要があるという。というのは、警察庁が大きく捜査方針を転換したということがあるらしい。検挙率が高い時期は、その率を上げるため軽微な犯罪も重要犯罪も同じように扱っていたという。自転車泥棒も必死になって捜査していたわけだ。しかし、近年は捜査方針を変え、殺人、強盗など凶悪事件の捜査に重点を置き、その検挙率は05年には65%と非常に高い数値になっている。殺人犯は96.6%という。一方で数多い軽微犯罪は手薄になり、全体の検挙率は下がっているというわけだ。

ほかにもいろいろ興味深い統計マジックがあったが、経済アナリストのイベントの景気効果のいい加減さ、裏資金の表経済への現れ方など興味深い記述もある。

この著者は、『夜のオンナはいくら稼ぐか?』『マネーロンダリング-汚れたお金がきれいになるからくり』などの面白いテーマの本も出している。肩書きは、またこれらの分野とは違って、『BRICS経済研究所代表』だから、守備範囲の広さを感じる。

『統計数値を疑う なぜ実感とズレるのか?』 門倉貴史著(光文社新書)

新訳『ハムレット』角川文庫-を読んで

2008-07-23 09:14:45 | Weblog
このところ読後感想が多くなっているが、ご容赦を。あまりいいニュースもなく、市場もこのような状況だから、すきま時間に本を読むことに当てている。

あらためてハムレット、小生も齢53にもなるが、まじめにシェイクスピアを読んでいなかった。ここのところで、実はリア王、ヴェニスの商人と読んできている。17世紀はじめの400年以上前の劇だが、この展開の仕方は実に力強いものがある。また役者のせりふに叙情的なところがあり、人間の精神の奥底を示し、よくかみ締めると味わい深い。いうまでもなく、読み継がれ、演じ続けられたシェイクスピアものだから当たり前だが、心に響く心地よさを感じるのだ。

このあと、ロミオとジュリエットが待っているのだが、これも読むのが楽しみである。恥ずかしながら、じっくりこれらを読むのは初めてという状況だが、名作に接しられて幸運に思う。

『新訳 ハムレット』(角川文庫)

『座右のニーチェ』齋藤孝著-を読んで

2008-07-22 09:39:01 | Weblog
小生、ニーチェというと、何か暗いイメージ、破壊的、むずかしい、異端的というイメージが強く、いままで恥ずかしながら、名前程度しか知らなかった。

今回、この本を読んで大変よかったと正直に思う。というのは、ニーチェの原著を読んでも-たとえば『ツァラトゥストラ』-、よくわからないまま終わることが、かなり高い確率で予想されるからだ。この『座右のニーチェ』がたいへんわかりやすく、ニーチェの思想をだれにでもわかるように解説してくれているので、読んでいて楽しいくらいだ。

これというのも、著者の齋藤氏がニーチェに心酔し、深くその思想を理解しているから、素人の人にもわかりやすく書けるのだと思う。多分に齋藤氏の思い入れも入っているのだろうが、それがしつこく感じないところがまたいい。

ともあれ、どこにかなりの学びを感じたかというと、人間の力を鼓舞する力強さだ。既存の観念にとらわれず(ニーチェはキリスト教思想と完全に相対する)、自分自身を鍛え上げるための導きを与えてくれるようだ。

この程度しかまだ表現できないが、まずはニーチェへの扉を開けてくれたこの本に感謝し、もういちどこの本で、ニーチェの思想を噛み締めてみたいと思う。

『座右のニーチェ』齋藤孝著 (光文社新書)

中国はまだまだこれからだ!! GDP成長率は、依然2桁の伸び(10.1%増)

2008-07-18 10:05:53 | Weblog
世界経済の減速、上海株式市場の大幅下落、中国国内のインフレ懸念、四川大地震の影響などから、今後の中国の成長にやや疑問符が出され始めているが、ここで少し違った角度から中国のこれからを見てみたい。

いままで中国は、世界の供給基地としての役割を果たし、それが貿易収支の大幅黒字やつみ上がる外貨準備の源泉となっていたわけだが、これから注目すべきは、中国国内の消費市場だ。6月には、小売売上高がなんと21.4%も増えた。この数字は、設備投資も20%台半ばで伸びていることを考えれば、別におかしくないと思いがちだが、インフレ率約8%を差し引いても、この伸びは実はすごいものがある。要するに、設備投資とともに、消費市場も順調に育ってきているということだ。ここが、これからの中国を見る上でのポイントで、自己完結型経済構造が形成されつつあり、世界経済の影響を少なく出来つつあるということだ。

いまでは、高級ブランド、コーチのバックにこういうマークがついているという。-ハンドクラフテッド イン チャイナ- 高い製造技術を身につけ、国内で高級品を売る。自己完結型だ。

中国政府は、沿岸部、内陸部の格差をなくし国全体が豊かになるという目標を掲げているが、その政策運営も、さまざまな問題が上がられるが、信頼できるものと見ていいと思う。そのいい例が、人民元の持続的な高め誘導だ。アメリカの圧力には表面的には抵抗しながら、着々と経済構造を変えながら、この誘導を続けている。アフリカ外交や資源戦略など、日本よりよほどしたたかではないか。

上海市場の大幅下落が大きな話題になっているが、個別銘柄を見ればまた別の光景が見える。
たとえば、中国工商銀行は、2006年10月に香港に上場したが、そのときの株価3.5香港ドルがいまでも5.5香港ドルだ。また、配当金は、2006年は通年換算で(普通配当金)0.064中国元だったのが、2007年には0.133中国元に倍増。税引利益はその間60%増益で、2008年も少なくても50%以上の増益になる見通しだ。すさまじい伸びでありながら、配当政策も、2007年は55%の配当性向で株主還元に厚く、2008年も相当な増配が期待できる。

よく日本から中国を見ると、斜めに見る向きが多いが、欧米から見る目は熱く、ジム・ロジャース、バートン・マキール、マーク・ファーバーなど世界の著名投資家は、大変な強気である。われわれも、日本の外から中国を見るような視点が必要なのだろう。

すさまじいアメリカ市場の上げ下げ相場

2008-07-17 08:49:13 | Weblog
17日NY市場は、+276ポイント(+2.52%)で終わったが、その中で大手金融株の上げ下げがすさまじいことになっている。

ファニーメ         9.25ドル(+30%)
ウェルスファーゴ      27.23(+32%)
ワシントンミューチュアル  4.53(+25%)
リーマンブラザーズ     16.65(+26%)
バンクオブアメリカ     22.67(+22%)

こう見ると、いかに市場が金融機関の動きに神経質になっているかがわかるというものだ。昨日の引けで買って今日の終値で売っていたらと考えがちだが、そうは簡単にはいかない。あとで見るとそういうことが出来たと思えるのだが、いまの株価は、1年前の数分の1にまで下がった過程を経てきていることを、よく覚えておくべきだろう。というのは、ファニーメ(現在52週高値の約8分の1)やワシントンミューチュアル(現在52週高値の約10分の1)が、半値になった当りで安くなったと思って買った人もたくさんいるだろうということだ。あるいは5分の1になった当りでも…。そういう人たちには、安いと思って買った値段からさらに何分の一になっているわけだ。

こう考えると、昨日買った人は、とりあえずは今日大幅に反発し、しめしめだが、これでもう下がらないとは限らない。それは誰にもわからず、今買っている人や売っている人は、非常に足の早い人が多いということを覚えておいたほうがいいだろう。こういう人たちこそ、大幅な下げの損失が怖いから早く売買を確定する。特に、今回はSECの空売り規制の検討が報じられ、あわてて空売りをしていた向きの買戻しが入ったともいえる。

相場を見るうえでは、このような目先の動きにどっぷり浸かるのではなく、大局をいつも観るということが大事だということは肝に銘じたい。

ちなみに、ファニーメが昨年の高値近辺で、今日の値幅分上がったとしても、+3%の上げ幅に過ぎず、ワシントンミューチュアルも、同じように+2%だ。

びくびくもののアメリカ市場-戦後最大の困難

2008-07-16 07:56:51 | Weblog
このところのアメリカ市場では、信じられない出来事がついに起こり始めた。GSE(Government Sponsored Entity)政府が支援する機関といわれる、住宅金融公社ファニーメ、フレディマックの経営不安が指摘され、株価は急落。いわば市場が、ぞーっとするような状況に陥った。

このところの主な市場数値を見てみると:

6月のNYダウの下げ幅10.2%は、1896年、1930年以来の下げ幅
ファニーメの株価:昨年8月70.57ドル→現在7.07ドル
シティグループの株価:昨年7月52.97ドル→現在14.56ドル
バンクオブアメリカの配当利回り:現在なんと13.8%!(経営陣は減配を否定)
大手住宅金融機関ワシントンミューチュアルの株価:昨年7月43.48ドル→現在3.61ドル
大手証券リーマンブラザーズの株価:昨年7月76.99ドル→現在13.22ドル

かなり厳しい。まだ先は見えないという中で、信用の収縮が急速に起こっている。さらに住宅価格の値下がりは続いており、今週発表の金融機関決算での巨額損失計上の見通しが、市場を暗くしているわけだ。原油はやや下がったとはいえインフレ懸念は強く、いまのところいいところなしという状況だ。あまりうろたえずに、成り行きを見ることにするかというところが妥当なスタンスだろう。

竹島問題は、国際司法裁判所での審判が必要だ。

2008-07-15 12:00:21 | Weblog
政府は、竹島の記述を新指導要領の解説書に明記した。これは日本として取るべき正しい行動だ。洞爺湖サミットでの日韓首脳会談でも、この旨福田総理が明言したとのことだが、評価したい。

韓国は、日本が領有権について何か行動を起こすと、やけに感情的に反発するが、いかがなものだろうか。そのこと自体が、なにか後ろめたさを感じている証拠ではないかと勘ぐりたくなる。


過去には、韓国による日本漁民への銃撃があり、死傷者も出たとのことだが、かなり強引だ。50年以上前だが、日本は、国際司法裁判所への付託を提案したが、これも拒否。日本の領有が認められる可能性が高く、付託は不利と考えているからだろう。

現在韓国が、実効支配する形をつくり、軍隊まで駐屯し、漁民施設まで作っているとのことだが、その意図が見え見えだ。日本は、島根県が『竹島の日』を制定したが、今回の新指導要領解説書への明記を含め、もっと領有権をアピールする具体的な行動が必要だろう。たとえば、日本単独で国際司法裁判所に提訴することも、選択肢の一つだ。

非常に残念-大分の教員採用汚職

2008-07-14 11:16:39 | Weblog
大分の教員採用試験は、今年度採用が、537人受験し、合格者数は31人と、競争率は約17倍だったという。全国平均でも10倍だそうだ。正直なところ、こんなに高いとは知らなかったが、それだからこそ、正直に受けている受験者の人たちがかわいそうだ。

この事件はたちが悪い。まず、これからわれわれの将来を担う子どもたちを教えるという大切な役割を持つ教師が、金で決まるというのだからおそろしい。いま教師の質が大いに問われているところだが、そもそも評価する土台が揺らいでいるのだから、不安になる。他でもやっているのではないかと。

100万円単位の金が動くのだから、大変なことだ。一説には、金券ショップに換金に来て、その額のあまりの多さに、店が不審に思い警察に通報して、事件が露見したという。このようなことが起きる体質には、小生は、社会保険庁とおなじ根があるように思う。それは、労働組合との癒着だ。社会保険庁は自治労、教職員は日教組という、二つの組合だが、組合自体のチェック機能が働かず、長年積み重ねてきたその影響力が教育委員会に負の形で及んでいると見ている。

一番被害を被るのは、これからを担う子どもたちだ。グローバルな競争を生き抜いていかなくてはならない中、あまりにも硬直的かつ前時代的に遅れた体質のまま、教育現場がこのような状態では、先行きが心配になるのは、私だけではないだろう。

GEがついに創業事業も売却へ。

2008-07-11 08:01:31 | Weblog
GEが、電球を発明した創業者エジソンを起源とする照明部門を含む家電事業を売却する方針を固めた。5月当初は、白物家電のみの売却の方針だったが、これをさらに創業事業まで拡大した形だ。

GEの株価は、昨年10月の40ドルから今では27ドル台の安値圏。4月には今期利益見通しを下方修正し、急落。最高経営責任者ジェフリー・イメルトに、前CEOジャック・ウェルチからも苦言が出ていた。実のところ、トップがイメルトになり、もう7年ほどにもなるが、株価は一度もその前の高値を更新することはない。アメリカを代表する企業でもあり、たくさんのアメリカ国民が持っているため、その影響は非常に大きい。

イメルトも、株主の圧力や厳しい視線を感じているのだろう。家電部門が赤字ということではない。営業利益率は7.5%と、他部門の20%を越える水準からは低いが、日本の家電産業の営業利益率からは、はるかに高い。わが日本の家電では、営業利益率目標を5%にするところもあるくらいだ。それでも、創業事業を売却する姿勢は、株主から厳しい監視を受け、経営にまい進する経営の姿が見えてくる。

そういえば、IBMも、何年か前に事業売却をしている。ひとつは、日立にハードディスクストレージ事業を、パソコン部門は中国レノボに売却した。このように売って何か残るのかと心配したが、ソフト部門が成長し、現在の株価は、株安の中で、堅調だ。会社の名前は変わらずとも、中身はどんどん変わり、成長を続ける柔構造経営が、時代をまたがり生き抜く名門企業に見えてくる。


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いまアメリカが揺れている...。

2008-07-10 11:17:58 | Weblog
米国はいまサブプライム問題処理の真っ只中だ。政府による対策は出尽くし感があり、その中で、金融機関の巨額償却への疑心暗鬼から、市場はおっかなびっくりという状況だ。市場の振れが大きいのが、その証拠だ。米国発の動向が世界を揺り動かしている状況で、嵐が吹いているといってよい。

こういう状況を見ていると、如何に人間がまだ学ぶべきことが多いかを如実に語っていると思えてくる。あるコメントで、『世界は市場経済になり数百年しか経過していないから、まだ経験的データが十分にそろっていないため、人類が起こりうることを予想するのに十分なときを経過していない。そうなるにはこれから数千年は必要だろう。』といっていたのを覚えている。過去の過ちを繰り返さないということは、教訓として学べることだが、まだ歴史的に起こったことがないことは、人間にはあらかじめ想定することはむずかしいということだ。

人類は、まだまだ市場というものに対し経験不足であり、市場自体が、まだ発展途上で未成熟の状況と捉えておいたほうがいいのではないかと思う。