浅田次郎の短編集「鉄道員(ぽっぽや)」からは、表題作を含め、既に幾つもの作品が映像化されて来ましたが、この「オリヲン座からの招待状」もその一つです。
私もずいぶん前に原作を読んでいます。
でも、味わいのある短編だとは思いましたが、この本に載ってる他の作品に比べると、とくに際立った印象は残らなかったというのが正直な感想でした。やはり「鉄道員」と「ラブレター」の印象が強過ぎますね。
でも、この映画の予告や宣伝を見ると、とても丁寧に作られていそうだったので、期待して観に行きました。
現代の東京。
長い別居生活にピリオドを打とうとしている良枝(樋口可南子)と祐次(田口トモロヲ)のもとに、1通の手紙が届く。
かつて、二人が幼少の頃に遊び場としていた映画館「オリヲン座」が、まもなく閉館することを伝える手紙だった。
昭和30年代。
映写技師・豊田松蔵(宇崎竜童)と妻・トヨ(宮沢りえ)が経営する映画館「オリヲン座」。
ある日、一人の青年が観客として途中入場する。
上映が終わったあと、その青年・留吉(加瀬亮)は、ここで働かせて欲しいと松蔵に頼み込む。
留吉は熱心に働き、松蔵から映写技術を学んでいく。
しかしある日、松蔵が倒れる…
(監督:三枝健起 116分)
オリヲン座。レトロな雰囲気が良く出ています。
自分が子供の頃の映画館は確かにあんな感じでした。
これら昭和の雰囲気の再現は申し分ないです。
出ている俳優さんたちも好演していて、この点も申し分ないです。
とくに、トヨを演じた宮沢りえさんが素晴らしい!
たしか、原作ではトヨのことはほんの少ししか書かれていなかったと思うのですが、よくここまで具体的な人物像を(原作の世界観を壊すことなく)作りあげたなぁと関心しました。
留吉とトヨのプラトニックな関係が、じつに丁寧に、情感豊かに描かれています。
また、「ALWAYS 三丁目の夕日」で一平くんを演じている小清水一揮くんが、ここでも昭和の少年を演じているのも目を引きました。
なんだか、昭和の少年といえば〝小清水一揮くん〟というイメージが付いてきそうですね。
現在の、老いた留吉を演じる原田芳雄さんも良い味を出しています。
セットや映像、そして出演者さんたちには不満など全然ありません。
ただ、だからこそ、肝心のストーリーの弱さが残念です。
原作が短編であっても、それを2時間近くの映画にするのだから、もっと時代の変化や、周囲の人々を描いて欲しかったです。
映画界が斜陽へ向かっていく様子や、その中を留吉とトヨがどのように乗り越えて来たかなどを、もう少し具体的に見せて欲しかった。
留吉とトヨのほかに「オリヲン座」に掛け替えのない思いを抱く者として、祐次と良枝だけしか描かれないのも気になります。(私は、この二人にすらあまり感情移入できなかったのですが)
閉館の日、場内にはあんなにも多くの観客が入っています。
その一人ひとりに「オリヲン座」への思い入れがあるはずだから、それらを想像させてくれるエピソードを少しでも見せて欲しかったです。
蚊帳の中の蛍のシーンは美しいですが、似たシーンを既に「火垂るの墓」で観ているので、あまり感動することはありませんでした。
そもそも、留吉が「オリヲン座」にやって来たのは、純粋に映画が好きだったからな筈です。
トヨへの好意は、毎日顔を合わせるうちに結果的に生まれてしまった感情です。
ならば、留吉には、映画に対する熱い情熱をまず見せて欲しかった。
映画への想いを見せないうちにトヨへの想いばかりを見せられると、なんだか本末転倒のような気がします。
例えば…
留吉には映画への熱い想いを語らせ、その姿に、トヨは亡き夫・松蔵と共通するものを見つけ、惹かれていく。
そんな描き方をしても良かったんじゃないかなと思うのですが…。
留吉とトヨを情感豊かに描くことに時間を割いてしまい過ぎ、結果的に、そこから転換して周囲のことに触れるタイミングも逸したまま、最後まで行ってしまった感じがします。
原作の世界観をとても尊重していることはわかります。
ですが2時間の映画なのですから、短編の原作の背景にある世界をもう少し観せて欲しかったです。
原作はこちら
浅田次郎さんの小説の映画化作品から、代表的なものを
私もずいぶん前に原作を読んでいます。
でも、味わいのある短編だとは思いましたが、この本に載ってる他の作品に比べると、とくに際立った印象は残らなかったというのが正直な感想でした。やはり「鉄道員」と「ラブレター」の印象が強過ぎますね。
でも、この映画の予告や宣伝を見ると、とても丁寧に作られていそうだったので、期待して観に行きました。
現代の東京。
長い別居生活にピリオドを打とうとしている良枝(樋口可南子)と祐次(田口トモロヲ)のもとに、1通の手紙が届く。
かつて、二人が幼少の頃に遊び場としていた映画館「オリヲン座」が、まもなく閉館することを伝える手紙だった。
昭和30年代。
映写技師・豊田松蔵(宇崎竜童)と妻・トヨ(宮沢りえ)が経営する映画館「オリヲン座」。
ある日、一人の青年が観客として途中入場する。
上映が終わったあと、その青年・留吉(加瀬亮)は、ここで働かせて欲しいと松蔵に頼み込む。
留吉は熱心に働き、松蔵から映写技術を学んでいく。
しかしある日、松蔵が倒れる…
(監督:三枝健起 116分)
オリヲン座。レトロな雰囲気が良く出ています。
自分が子供の頃の映画館は確かにあんな感じでした。
これら昭和の雰囲気の再現は申し分ないです。
出ている俳優さんたちも好演していて、この点も申し分ないです。
とくに、トヨを演じた宮沢りえさんが素晴らしい!
たしか、原作ではトヨのことはほんの少ししか書かれていなかったと思うのですが、よくここまで具体的な人物像を(原作の世界観を壊すことなく)作りあげたなぁと関心しました。
留吉とトヨのプラトニックな関係が、じつに丁寧に、情感豊かに描かれています。
また、「ALWAYS 三丁目の夕日」で一平くんを演じている小清水一揮くんが、ここでも昭和の少年を演じているのも目を引きました。
なんだか、昭和の少年といえば〝小清水一揮くん〟というイメージが付いてきそうですね。
現在の、老いた留吉を演じる原田芳雄さんも良い味を出しています。
セットや映像、そして出演者さんたちには不満など全然ありません。
ただ、だからこそ、肝心のストーリーの弱さが残念です。
原作が短編であっても、それを2時間近くの映画にするのだから、もっと時代の変化や、周囲の人々を描いて欲しかったです。
映画界が斜陽へ向かっていく様子や、その中を留吉とトヨがどのように乗り越えて来たかなどを、もう少し具体的に見せて欲しかった。
留吉とトヨのほかに「オリヲン座」に掛け替えのない思いを抱く者として、祐次と良枝だけしか描かれないのも気になります。(私は、この二人にすらあまり感情移入できなかったのですが)
閉館の日、場内にはあんなにも多くの観客が入っています。
その一人ひとりに「オリヲン座」への思い入れがあるはずだから、それらを想像させてくれるエピソードを少しでも見せて欲しかったです。
蚊帳の中の蛍のシーンは美しいですが、似たシーンを既に「火垂るの墓」で観ているので、あまり感動することはありませんでした。
そもそも、留吉が「オリヲン座」にやって来たのは、純粋に映画が好きだったからな筈です。
トヨへの好意は、毎日顔を合わせるうちに結果的に生まれてしまった感情です。
ならば、留吉には、映画に対する熱い情熱をまず見せて欲しかった。
映画への想いを見せないうちにトヨへの想いばかりを見せられると、なんだか本末転倒のような気がします。
例えば…
留吉には映画への熱い想いを語らせ、その姿に、トヨは亡き夫・松蔵と共通するものを見つけ、惹かれていく。
そんな描き方をしても良かったんじゃないかなと思うのですが…。
留吉とトヨを情感豊かに描くことに時間を割いてしまい過ぎ、結果的に、そこから転換して周囲のことに触れるタイミングも逸したまま、最後まで行ってしまった感じがします。
原作の世界観をとても尊重していることはわかります。
ですが2時間の映画なのですから、短編の原作の背景にある世界をもう少し観せて欲しかったです。
原作はこちら
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