明日へのヒント by シキシマ博士

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「自虐の詩」 幸せになりてぇすか?

2007年11月21日 01時37分33秒 | 明日のための映画
前作「包帯クラブ」の感動もまだ冷めやらぬ、堤幸彦監督の新作「自虐の詩」。
またしても私好みの映画でした!
原作は、業田良家さんのベストセラー漫画。

じつは私自身、業田さんには恩があります。
小学館のビッグコミックオリジナルに、もう10年以上続いている「川柳虎の皮」という人気ページがあります。
読者の投稿した川柳を、業田さんが点数と寸評を付けて掲載してくれるページです。
何を隠そう、10年くらい前、私の投稿作品が一度だけ掲載されたことがあるんです。
その時のお題は〝読書〟でした。
自分には川柳を詠む才能も習慣も無いのですが、その時だけ直感的に閃いたので投稿してみたのです。
そしたら載ってしまった。嬉しかったですね。
ちょっと恥ずかしいですが、ここに載せてみます。
『本棚を 水島新司に 乗っ取られ』

さて…、私のことを晒すのはここまでにして、本題の映画「自虐の詩」の話です。

大阪・通天閣近くのアパートでは、今日もいつもの音が響き渡る。
少しでも気に入らないことがある度に、イサオ(阿部寛)がちゃぶ台をひっくり返すのだ。
仕事もせず酒とギャンブルに明け暮れるイサオであったが、それでも内縁の妻・幸江(中谷美紀)は献身的に尽くす。
幸江は幼い頃から不幸続きで、かつて一時期、自暴自棄になっていた。
そんな彼女を救ったのがイサオだった…。
(監督:堤幸彦 115分)



私的には、少し前まで中谷美紀さんという女優さんにはあまり注目していなかったんですが、最近、急速に関心度が高まって来ています。
今回も、地味で華やかさのない幸江というキャラを、愛すべきヒロインとして見せてくれます。
原作は漫画だし、かなり誇張された演出で展開する話なのに、こんなにも引き込まれ共感できるのは、やはり中谷美紀さんの上手さなんだと思います。
乱暴で無口・無表情のイサオを、憎めないキャラとして演じた阿部ちゃんも流石です。

映画は、幸江の〝中学生の頃〟〝上京した頃〟〝現在〟の三つの時代を描いていて、その時々で幸江の生き方・考え方は少し変化しているように見えます。
イサオにいたっては、幸江と出会った頃と現在とではだいぶ変わったようにも見えます。
何より、幸江とイサオの立場が、出会った頃と現在とでは逆転してしまっているように見えます。
この変化の説明がなされていないことを指摘する声があるようです。
必要な部分だけ描いて、その間の部分はいさぎよく省くという描き方は、原作の4コマ漫画らしさが出ていて私は良かったと思うのですが、これを是とするか非とするかが評価の分かれ目になる気はしますね。

私は、本当は二人とも、昔も今も変わってなんかいないと思うんですよ。
たとえばイサオの乱暴ぶりにしても、よく見ればけっして幸江に向けられることはありません。
ちゃぶ台返しなど、物に当たっているだけです。
これは自己表現の下手なイサオの、自分自身への苛立ちにすぎず、幸江に対する気持ちは一貫していると思うのです。(結果的に、幸江に後片付けをさせているのだからダメなんですが)
その他、置かれた状況の変化で表面上は変わって見えても、根底にあるものは一貫していると思います。
そんなふうに、変化する表面上のことに惑わされない、普遍的なものに気づく時、我々も幸江とともに幸せの意味を実感できるのだと思います。

物心ついた頃から自分は不幸だと思い込んでいた幸江。
美人の同級生を羨ましがったり、粗末な弁当に引け目を感じたり…。
いつも満たされないと思い込んでいたから、既に手にしている大切な宝物の価値に気づけない。
そんな幸江に、熊本さんは「幸せになりてぇすか?」と問います。
〝熊本さん〟
彼女という親友がいることがどれほど幸せなことか。
幸江がそのことに本当に気づくのはずっと後になりますが、それに気づけたことで、幸江は何があってももう、けっして揺るがない価値感を得ることが出来たのだと思います。

そんな気持ちであらためて周囲を見渡せば、イサオも、あさひ屋のマスター(遠藤憲一)も、隣のおばちゃん(カルーセル麻紀)も、(夢に思い描く理想とは違う形態だけれど)それなりに自分のことを常に気に掛けてくれていることに気づきます。
それを不幸とは言えないですよね、もう。
 * 中学時代の幸江(岡珠希)と熊本さん(丸岡知恵)のエピソードがものすごく良いですね。何度も泣きました。

幸江の最後のモノローグがまた良いですね!
「幸・不幸はもういい。どっちにも価値がある。」
「人生には意味がある」
そう。そんな風にいつも言える人間でありたいと、私も思っています!



この機会に、他の堤幸彦監督作品も観てみましょう!
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