明日へのヒント by シキシマ博士

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「鉄コン筋クリート」 自分の心の足りないネジを

2007年01月06日 01時38分21秒 | 明日のための映画
原作となる松本大洋さんの漫画「鉄コン筋クリート」は、ビッグコミック・スピリッツ連載時に何度か目にしており、その独特の世界観にはとても魅力を感じました。
いつか改めて、初めから読みたいと思いつつ、未だに果たせずにいました。
その作品に色が付き、動画となる。これは非常に興味をそそられる話です。
期待感いっぱいで観に行きました。
で、実際に観た感想は…、

さまざまな大人の欲望・陰謀・思惑が渦巻く街『宝町』
そこに住む親を知らないふたりの少年・クロ(声・二宮和也)とシロ(声・蒼井優)は、何ものにも支配されず、かつあげやかっぱらいなどの非合法な手段によって日々を過ごしている。
そこへある日、昔馴染みのやくざ・ネズミが戻ってくる。
この町並みを壊し、再開発の名のもとに『宝町』を牛耳ろうとする計画が動き始めているのだ。
それを知ったクロは、〝俺の町〟を守るための戦いを開始する…
(監督:マイケル・アリアス 111分)


原作の雰囲気を壊さないという意味で、とてもイメージどおりの作品でした。
蒼井優ちゃんが担当したシロの声も素晴らしかった。
けれど正直…、
どういうふうに記事を書いていいやら、困ってしまう作品でもありました。

表面的に言えばヤクザとコドモの抗争なわけですが、肝心なのはそういった見えている部分ではなく、もっと内面的で観念的なことです。
それを上手く言葉にできるかどうか…、感じたことを少しだけ記してみます。

町並みの映像は目を見張るほどに緻密に書き込まれていますが、それにも関わらず、そこから具体的に人々の暮らしぶりが浮かび上がってくることは決してありません。
これは、クロが〝俺の町〟と称しながらも、その実、自分の内面ばかりを見ていてその町を虚ろにしか見ていないことに似ています。

それとは逆に、シロが空想する世界や実際に書く絵のほうが、具体的に書き込まれていないのに実感があります。
これはシロの意識が常に、自分の外にある理想へと開かれていることと関係があると思います。
この、ふたつの意識の描き分けがとても面白かった。

そしてクライマックス。
クロの意識下を映像化した表現には思わず息を飲みます。
闇の世界の誘いに飲み込まれそうになるクロ。
そのクロを、再び日の差す世界へ連れ戻してくれるシロ。
この表現だけでこの映画を観た甲斐は充分にありました。

ほかにも抽象的な表現で多くのことが語られているのだと思うのですが、それは二度、三度と繰り返して観ないと、私には理解できそうもありません。

それでも印象的に心に響いたのはシロのこのセリフです。
「クロの足りないネジ、みんなシロが持ってる」

人にはきっと、自分の心の内だけ探しても決して見つけられない、生まれながらに足りない物がある。
だからそれを得るために、自分の外へ目を向ける。
クロは自分がシロを守っていると思っていたのに、実は自分が持っていないものによって、クロのほうがシロに守られていたのかも知れない。
ずっと自分の内面ばかり見つめてきたクロが、それに気づいた時、すべては変わるのだと思います。

この映画を見て、私もガラにも無く考えてしまいました。
自分という人間は、果たしてクロなのかシロなのか。
自分が持ってる心のネジが、いつか誰かのために役立つこともあるのかな?
その日がいつ来ても、すぐに差し出せる人間でありたい。
…などと、今回は抽象的な言葉で締めさせていただきます。

鉄コン筋クリート (通常版)

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