いよいよ現場の準備作業はフル回転になり始めていた。
かなり気を揉んでいた『管内ロボット』は、無事にチャーター便のトラックで現場に到着した。
「木田君、これ?」
小磯がトラックの荷台を見て、そして私の顔を見る。
「ええ、これです。750角のマンホールから入るように、バラバラになっていますけどね」
荷台にあるロボットは、二日前に私が見た面影はどこにも無く、たんなる金属部品の集まりにしか見えなかった。
ラフターでロボットのパーツをマンホール付近まで運び、そこからは全部で十三人の作業員が、部品を手で持って、水管橋の対岸側、200メートルまで地道に運ぶ。
「木田さん、台車を借りるよ」
ハルがコンテナから荷物用の台車を持ち出した。ハルはあんまり考えていない様に見えるが、仕事を効率的に行うのは好きな様だ。
東正産業の新谷と、鬼頭化工の真鍋は、水処理ユニットのケーブル及びホース類の接続を行う。もちろん私自身でも出来るのだが、それに関わっていると、他の事が出来なくなるので、この二人に仕事として依頼したのだった。
私は後藤を手元に使うと、TM社が運んで来た発電機と、ノッチタンク二基を荷降ろしして設置し、ポンプ周りや、各種機器のセッティングを開始した。
管内ロボットの組立てが始まると、ハルを頭にした本村組の五人の職人たちは、サクションホースの管内への挿入作業を開始した。
「そーれ!そーれぇい!」
「うははははは!」
「きひひひひひ!」
「わっしょい!わっしょい!わっしょい!」
マンホールから奇声や叫び声が時折聞こえて来る。そして物凄い勢いで、一本80キロ、長さ20メートルのφ125のサクションホースが、マンホールの中に吸い込まれて行く。
「がはははは、木田君、ハルをなんとかしてよ」
小磯がレンチを取りに、マンホールから出て来る。
「あの叫び声は、一体なんですか?」
「ハルが先導して、管内をホースを持って走ってるんだよ」
「走ってる?」
「なんだか知らないけど、長崎の大蛇の祭りのイメージらしいぞ。あの本村組の若い奴らを先導して、狂った様にホースを持って走ってるぞ」
「うははは、どうりで…、だってここから見てても、異常なスピードでホースがマンホールの中に吸い込まれて行くんですよ」
言っている側から、マンホール担当の本村組の職人が、大声で叫んでいる。
「ちょっ、ちょっとストーップ!」
若い職人は、必死でサクションホースの最後尾を抱えて踏ん張っている。
「ちょっと待っててよ!」
ニッカボッカを履いたその職人は、ホースにロープを結びつけると、慌てた様にそれを、マンホールの底に下ろした。
「うはははは!そーれ!そーれぇ!」
「うぉおおおおお!」
「行け行けぇ!」
まるで駅を通過する特急電車の様に、20メートルのサクションホースは、水管橋の奥に消えて行った。
私はマンホールから顔を上げると、笑いながら小磯に言った。
「意外とハルさんって、こういう時には人見知りもしないし、率先して動くんですね」
「がはははは、あいつもやる時はやるんだよ」
私は今まで知らなかった、ハルの一面を見た気がして、少し驚き、頼もしく思ったのだった。
かなり気を揉んでいた『管内ロボット』は、無事にチャーター便のトラックで現場に到着した。
「木田君、これ?」
小磯がトラックの荷台を見て、そして私の顔を見る。
「ええ、これです。750角のマンホールから入るように、バラバラになっていますけどね」
荷台にあるロボットは、二日前に私が見た面影はどこにも無く、たんなる金属部品の集まりにしか見えなかった。
ラフターでロボットのパーツをマンホール付近まで運び、そこからは全部で十三人の作業員が、部品を手で持って、水管橋の対岸側、200メートルまで地道に運ぶ。
「木田さん、台車を借りるよ」
ハルがコンテナから荷物用の台車を持ち出した。ハルはあんまり考えていない様に見えるが、仕事を効率的に行うのは好きな様だ。
東正産業の新谷と、鬼頭化工の真鍋は、水処理ユニットのケーブル及びホース類の接続を行う。もちろん私自身でも出来るのだが、それに関わっていると、他の事が出来なくなるので、この二人に仕事として依頼したのだった。
私は後藤を手元に使うと、TM社が運んで来た発電機と、ノッチタンク二基を荷降ろしして設置し、ポンプ周りや、各種機器のセッティングを開始した。
管内ロボットの組立てが始まると、ハルを頭にした本村組の五人の職人たちは、サクションホースの管内への挿入作業を開始した。
「そーれ!そーれぇい!」
「うははははは!」
「きひひひひひ!」
「わっしょい!わっしょい!わっしょい!」
マンホールから奇声や叫び声が時折聞こえて来る。そして物凄い勢いで、一本80キロ、長さ20メートルのφ125のサクションホースが、マンホールの中に吸い込まれて行く。
「がはははは、木田君、ハルをなんとかしてよ」
小磯がレンチを取りに、マンホールから出て来る。
「あの叫び声は、一体なんですか?」
「ハルが先導して、管内をホースを持って走ってるんだよ」
「走ってる?」
「なんだか知らないけど、長崎の大蛇の祭りのイメージらしいぞ。あの本村組の若い奴らを先導して、狂った様にホースを持って走ってるぞ」
「うははは、どうりで…、だってここから見てても、異常なスピードでホースがマンホールの中に吸い込まれて行くんですよ」
言っている側から、マンホール担当の本村組の職人が、大声で叫んでいる。
「ちょっ、ちょっとストーップ!」
若い職人は、必死でサクションホースの最後尾を抱えて踏ん張っている。
「ちょっと待っててよ!」
ニッカボッカを履いたその職人は、ホースにロープを結びつけると、慌てた様にそれを、マンホールの底に下ろした。
「うはははは!そーれ!そーれぇ!」
「うぉおおおおお!」
「行け行けぇ!」
まるで駅を通過する特急電車の様に、20メートルのサクションホースは、水管橋の奥に消えて行った。
私はマンホールから顔を上げると、笑いながら小磯に言った。
「意外とハルさんって、こういう時には人見知りもしないし、率先して動くんですね」
「がはははは、あいつもやる時はやるんだよ」
私は今まで知らなかった、ハルの一面を見た気がして、少し驚き、頼もしく思ったのだった。