K水管橋の塗料密着強度試験から一週間、それはいきなりだった。
「仕事や!仕事やでぇ!」
電話の向こうの渡は、若干興奮気味だ。
「どこの仕事ですか?TG工業ですか?」
「何を言うとるんや、M資源公団の仕事に決まっとるやないか!」
「…だって、やらないって言ったじゃないですか」
「急遽やることになったんや」
「急遽って…」
私はいきなりの展開に面食らっていた。
「我々はいつから着工なんですか?」
「そらお前、去年打ち合わせた通り、二月下旬からや」
「一ヵ月しかないんですけど…」
「そうや、そうなんや!なんとしても間に合わせるでぇ!」
別段、渡が何か作業をする訳ではない。考えるのは私であり、やるのは私と小磯とハルだ。
「そうや、ロボット、ロボットはどないなっとるんや!?」
渡は今更の様に、管内ロボットの心配を始めた。
「ど、どないなっとるって、そんな物、工事をやらないんだから、ストップしたままですよ」
「そらぁお前、工事に間に合わんのやないんか!?」
「ギリギリですけど間に合うと思いますよ。部品調達と製作、仮組に約三週間、試運転と微調整で恐らく一週間、かなり際どいと思いますけどね」
「設計は?設計期間が抜けとるんやないか!?」
さすがに渡も馬鹿では無い。
「ああ、それは終わってます」
「終わっとる!?」
「ええ、終わってます。去年、私が勝手に設計までは完了させるように、F社と協成に指示を出しましたから」
渡は一瞬沈黙した。
「…ホンマか?」
「ええ、すでに僕の手元に図面一式、揃ってます」
「さっすがやのおぅ!」
「…そういう評価ですか?」
「そらお前、工事に間に合うんやろ、何の問題があるんや」
「まあ、勝手に進めたってことで」
「設計費はいくらの約束やったんや?」
「七十万円です」
「なんや、七十万か。どうせ工事をやる事になったんやから、そんなもんどうでもええやないか」
これが渡の『行け行けドンドン!』な性格だった。
「まあ、常務がよろしければ」
「かまへん。それよりも午後は大丈夫か?K建設の鴻野さんが至急現場に来るようにと言っとるんや」
「もちろん大丈夫です」
「よっしゃ、昼前に本社に迎えに来てくれるか?昼飯を食べながら打ち合わせや!で、その後に現場や」
「ええ、了解です」
私は電話を切ると工場の中に入り、工場の壁に防音用グラスウールをはめ込んでいるいる、小磯とハルに声を掛けた。
「水管橋の工事、やりますよ!」
「はぁ?やるの?やらないんじゃないの?」
「そうだよ、やらないって言ったじゃん」
グラスウール用のナイフを放り投げると、小磯とハルが防塵マスクを外した。
「M資源公団の気が変わったらしいです」
「がはははは、みんないい加減だなぁ」
「やるとか、やらないとか、面倒臭い人たちだねぇ」
ハルが眉間に皺を寄せる。
「あははは、ハルさん、これ以上変わる事は無いですから、工事の準備を始めましょう」
「あれ?木田君、じゃあロボットは?」
「もちろん造りますよ」
「がははははは!じゃあ首にならないんだ!?」
「なんか僕が首になることを期待してた?」
「がはははは!ちょっと」
私は苦笑いをして、小磯に言った。
「今から本社と現場に行きますんで、キャットの『Type-J』を倉庫から出しておいてもらえます?制御盤とタンブルボックス、それからコントローラーも。K県の協成に送りますからね」
「はいよ!」
すでに私の頭の中は、水管橋の工事の事で一杯になっていた。
「仕事や!仕事やでぇ!」
電話の向こうの渡は、若干興奮気味だ。
「どこの仕事ですか?TG工業ですか?」
「何を言うとるんや、M資源公団の仕事に決まっとるやないか!」
「…だって、やらないって言ったじゃないですか」
「急遽やることになったんや」
「急遽って…」
私はいきなりの展開に面食らっていた。
「我々はいつから着工なんですか?」
「そらお前、去年打ち合わせた通り、二月下旬からや」
「一ヵ月しかないんですけど…」
「そうや、そうなんや!なんとしても間に合わせるでぇ!」
別段、渡が何か作業をする訳ではない。考えるのは私であり、やるのは私と小磯とハルだ。
「そうや、ロボット、ロボットはどないなっとるんや!?」
渡は今更の様に、管内ロボットの心配を始めた。
「ど、どないなっとるって、そんな物、工事をやらないんだから、ストップしたままですよ」
「そらぁお前、工事に間に合わんのやないんか!?」
「ギリギリですけど間に合うと思いますよ。部品調達と製作、仮組に約三週間、試運転と微調整で恐らく一週間、かなり際どいと思いますけどね」
「設計は?設計期間が抜けとるんやないか!?」
さすがに渡も馬鹿では無い。
「ああ、それは終わってます」
「終わっとる!?」
「ええ、終わってます。去年、私が勝手に設計までは完了させるように、F社と協成に指示を出しましたから」
渡は一瞬沈黙した。
「…ホンマか?」
「ええ、すでに僕の手元に図面一式、揃ってます」
「さっすがやのおぅ!」
「…そういう評価ですか?」
「そらお前、工事に間に合うんやろ、何の問題があるんや」
「まあ、勝手に進めたってことで」
「設計費はいくらの約束やったんや?」
「七十万円です」
「なんや、七十万か。どうせ工事をやる事になったんやから、そんなもんどうでもええやないか」
これが渡の『行け行けドンドン!』な性格だった。
「まあ、常務がよろしければ」
「かまへん。それよりも午後は大丈夫か?K建設の鴻野さんが至急現場に来るようにと言っとるんや」
「もちろん大丈夫です」
「よっしゃ、昼前に本社に迎えに来てくれるか?昼飯を食べながら打ち合わせや!で、その後に現場や」
「ええ、了解です」
私は電話を切ると工場の中に入り、工場の壁に防音用グラスウールをはめ込んでいるいる、小磯とハルに声を掛けた。
「水管橋の工事、やりますよ!」
「はぁ?やるの?やらないんじゃないの?」
「そうだよ、やらないって言ったじゃん」
グラスウール用のナイフを放り投げると、小磯とハルが防塵マスクを外した。
「M資源公団の気が変わったらしいです」
「がはははは、みんないい加減だなぁ」
「やるとか、やらないとか、面倒臭い人たちだねぇ」
ハルが眉間に皺を寄せる。
「あははは、ハルさん、これ以上変わる事は無いですから、工事の準備を始めましょう」
「あれ?木田君、じゃあロボットは?」
「もちろん造りますよ」
「がははははは!じゃあ首にならないんだ!?」
「なんか僕が首になることを期待してた?」
「がはははは!ちょっと」
私は苦笑いをして、小磯に言った。
「今から本社と現場に行きますんで、キャットの『Type-J』を倉庫から出しておいてもらえます?制御盤とタンブルボックス、それからコントローラーも。K県の協成に送りますからね」
「はいよ!」
すでに私の頭の中は、水管橋の工事の事で一杯になっていた。