どんぴ帳

チョモランマな内容

はくりんちゅ231

2008-07-08 01:44:23 | 剥離人
 F社の大澤に電話を入れると、大澤も私に話がある様子だった。

「大澤さん、キャット(ロボット)の動力ケーブルの件なんだけど」
「おお、おお、僕もその件で連絡をしようと思ったんですよ」
 やはり考えることは同じ様だ。
「制御盤からキャットまでのケーブルは、ウチにあるのが100メートルでしょ」
「ええ、そしてウチが貸し出すケーブルがさらに100メートル」
「合計200メートルのケーブルの確保は大丈夫だけど、問題は発電機から管内の制御盤まで、約30メートルの動力ケーブルが無いんだよね」
「あれ?今R社さんの制御盤には、何メートルのケーブルが付いていましたっけ?」
「7メートルくらいかなぁ」
「そうでしたっけ?」
「うん、結構短いよ」
「だからさ、動力ケーブルを30メートル分、コネクターを付けて作って欲しいんだけど…」
「ちょっと協成に訊いて見ますよ。それと僕の用事は、協成からの要望なんですけど、ケーブルを全部繋いで試験したいってことなんですよ」
「そうだろうね、じゃあウチからケーブルをそっちに持って行くから、まとめて協成に送らない?」
「そうですね、その方が運賃も安くなりますよね」
「うん、それとさ、直径3.3メートルの鋼管を造ろうと思うんだけど」
「本当ですか!?」
 大澤が素っ頓狂な声を出した。
「だってねぇ、実際に使えない物を現場に持ち込んでも仕方ないじゃんね」
「でも、いくらかかるんですか?」
「まあ、幸いにも渡さんはK社から出向中の身分だし、仕事は系列のK建設の工事だからね、特別に安く鋼管を造ってくれるみたいだよ。確か運賃も込みで六十万だって」
「ろ、六十万円ですか…、もったいないですね、それが終わったら廃棄ですよね」
「うーん、でも仕方ないよね、テストも無しに工事には使えないしね」
 大澤は少し考え込むと、折り返し電話をすると言った。

 四十分後、大澤から電話が入った。
「木田さん、まずは鋼管の件ですけど、協成の下請の会社が、鉄板を加工して擬似鋼管を造ってくれるそうです。それなら十万円で済むそうですけど、どうですか?」
「何ミリの鉄板で造るの?」
「5.5ミリだそうです」
「5.5ミリか…、かなり撓むんじゃない?」
「それはきちんと補強を入れるそうですよ」
「ふーん、じゃあそっちの方が面倒じゃないし、それに安いし、よしっ、それで頼むよ」
「分かりました。鋼管のキャンセルは良いんですか?」
「ああ、まだ発注してないから大丈夫」
「それは良かった。それと動力ケーブルは、コネクターを送れば、製作してくれるそうです。ケーブルは15メートルが二本になりますけど、イイですか?」
「うん、問題ないね、早速コネクターを買ってくるよ。ケーブルと一緒に送れば大丈夫だよね」
「ええ、そうですね。あとは実際のテストですけど…」
「あはは、間に合うのかなぁ?」
「何としても間に合わせますよ」
「頼みますよ、大澤さんが頼みの綱だからね」

 そして工事開始の前日、私と大澤は、K県に向かう飛行機の中に居た。