敷鉄板を敷き終わると、工場に残っている小磯とハルが荷出しした、大量のサクションホースがやって来た。
「キーちゃん、凄い量だね」
佐野が、丸山運輸のトラックの荷台で満載になっているホースを見て笑う。
「いや、もう一車あるんですけど…」
「一体何本持って来たんだい」
「何があるか分からないんで、全部です」
ラフタークレーンがサクションホースを吊り上げると、次々と土手に降ろして行く。
土手の上は、たちましオレンジ色のアナコンダに占領されてしまった。
「社長、次は水処理ユニットね」
また丸山社長の携帯に連絡を入れる。
今度は10トントラック二車で、黄緑色の水処理ユニットが入って来た。
「キーちゃん、これ…、番木が無いとフォークの爪も入らないし、吊ピー(正確には『吊ピース』、クレーン作業用のフック穴の空いている金具。溶接して使用する)も無いし、これのどこが可搬式なの?」
佐野は水処理ユニットにナイロンスリング(荷役用のナイロンベルト)を掛けて、首を捻っている。
「おう、渋井君、レバーブロック(フック二つにチェーンが付いていて、レバーでチェーンの長さを調節する荷役用具)を出しな」
田代が渋井にレバーブロックを持って来させる。
「いやぁ、実はこの水処理ユニット、僕がこの仕事を始めた時には、すでに製作に入っていたんで、実質、ほとんど関与していないんですよ。僕が決めたのは、水処理ユニットの『色』だけです」
「色?色ねぇ、だれがこの仕様を決定したの?」
佐野と田代が、レバーブロックで吊荷のバランスを取る。
「渡さんと、東正産業って会社ですよ」
「ふーん、中途半端な作りだね」
「ええ、僕が最初から咬んでいたら、絶対にこんな形にはしませんでしたね」
佐野と田代が吊荷のバランスを補正すると、ようやくラフターが六分割された水処理ユニットの一つを、吊り上げた。
私はダッシュで土手を走ると、並べた敷鉄板の前で、ラフターのオペに指示を出す。
「もっと、もっとー!」
握りこぶしに親指を突き出し、親(クレーンのブーム)を倒す様に指示する。
「はいよっ!」
玉掛け技能講習では、『手を開いて停止』だとか習った気もするが、実質現場では一度手の平を開いて握った方が、なぜか良く伝わる。
「はい、スラー」
小指を突き出して、クイクイと下に動かし、子(フック)を下げる様に合図を出す。
「はい、ストップ」
地上五十センチ程で一度停止させ、再度位置を確認する。僅かに奥に入れたいので、再び親指で合図を出す。そしてもう一度子を下ろし、地上五センチで再度停止させる。
後藤とナイロンスリングを両手で押さえ、きっちりと位置を決める。
「こんなもんかな?後藤さん、大体真っ直ぐですよね」
「ええ、大丈夫です」
再度手で合図を送ると、吊荷がゆっくりと接地し、一つ目が完了する。
この手順を踏んで作業をしていくと、水処理ユニットを設置しただけで、今日の作業は終了となったのだった。
「キーちゃん、凄い量だね」
佐野が、丸山運輸のトラックの荷台で満載になっているホースを見て笑う。
「いや、もう一車あるんですけど…」
「一体何本持って来たんだい」
「何があるか分からないんで、全部です」
ラフタークレーンがサクションホースを吊り上げると、次々と土手に降ろして行く。
土手の上は、たちましオレンジ色のアナコンダに占領されてしまった。
「社長、次は水処理ユニットね」
また丸山社長の携帯に連絡を入れる。
今度は10トントラック二車で、黄緑色の水処理ユニットが入って来た。
「キーちゃん、これ…、番木が無いとフォークの爪も入らないし、吊ピー(正確には『吊ピース』、クレーン作業用のフック穴の空いている金具。溶接して使用する)も無いし、これのどこが可搬式なの?」
佐野は水処理ユニットにナイロンスリング(荷役用のナイロンベルト)を掛けて、首を捻っている。
「おう、渋井君、レバーブロック(フック二つにチェーンが付いていて、レバーでチェーンの長さを調節する荷役用具)を出しな」
田代が渋井にレバーブロックを持って来させる。
「いやぁ、実はこの水処理ユニット、僕がこの仕事を始めた時には、すでに製作に入っていたんで、実質、ほとんど関与していないんですよ。僕が決めたのは、水処理ユニットの『色』だけです」
「色?色ねぇ、だれがこの仕様を決定したの?」
佐野と田代が、レバーブロックで吊荷のバランスを取る。
「渡さんと、東正産業って会社ですよ」
「ふーん、中途半端な作りだね」
「ええ、僕が最初から咬んでいたら、絶対にこんな形にはしませんでしたね」
佐野と田代が吊荷のバランスを補正すると、ようやくラフターが六分割された水処理ユニットの一つを、吊り上げた。
私はダッシュで土手を走ると、並べた敷鉄板の前で、ラフターのオペに指示を出す。
「もっと、もっとー!」
握りこぶしに親指を突き出し、親(クレーンのブーム)を倒す様に指示する。
「はいよっ!」
玉掛け技能講習では、『手を開いて停止』だとか習った気もするが、実質現場では一度手の平を開いて握った方が、なぜか良く伝わる。
「はい、スラー」
小指を突き出して、クイクイと下に動かし、子(フック)を下げる様に合図を出す。
「はい、ストップ」
地上五十センチ程で一度停止させ、再度位置を確認する。僅かに奥に入れたいので、再び親指で合図を出す。そしてもう一度子を下ろし、地上五センチで再度停止させる。
後藤とナイロンスリングを両手で押さえ、きっちりと位置を決める。
「こんなもんかな?後藤さん、大体真っ直ぐですよね」
「ええ、大丈夫です」
再度手で合図を送ると、吊荷がゆっくりと接地し、一つ目が完了する。
この手順を踏んで作業をしていくと、水処理ユニットを設置しただけで、今日の作業は終了となったのだった。