朝鮮学校への補助金廃止問題について伺う。
1995年に始まり昨年まで18年間にわたって、山口朝鮮学園に対して行われてきた県独自の「私立外国人学校特別補助金」制度が、今年度から予算見送りされた。
この間の県議会質疑や交渉で明らかになった予算見送り理由は、①朝鮮学校を高校無償化の対象外にしている国の意向、②補助金支給に対する他県の動向、③朝鮮民主主義人民共和国の様々な行動に対する国内外の受けとめ、の3点で、県はこれらを総合的に勘案して「県民の理解が得られない」と言うものだ。
■日本国憲法と国際人権規範に背くもの
こうした考えはいずれも、「教育機会の平等と母国語による民族教育を受ける権利」を保障した子どもの権利条約を乱暴に踏みにじるものであり、日本も批准している国連の人種差別撤廃条約が禁止する「子どもの教育に人種差別を持ち込む」ことではないか。
自らの人権問題への不理解と欠如を「県民の理解が得られない」などと、県民に責任を転嫁することは、県民を愚弄するものに他ならない。
かつて日本は、侵略戦争と植民地支配によって朝鮮・韓国の人達から「名前と言語という人間の尊厳に関わる民族的アイデンティティー」を奪った痛苦の歴史を負っており、戦後の日本はその反省から出発し、国際社会に復帰したのではないか。
朝鮮半島と直接向きあう山口県の責任はあらためて問われており、山本知事が行った補助金予算見送りの政治判断は、この点からも重大な誤りだ。
関連して、在日朝鮮・韓国人を標的にした「ヘイトスピーチ」(人種・民族・国籍・宗教・思想などに対して憎悪を煽る表現)について伺う。
京都地裁は十月七日、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)による聞くに耐えない罵詈雑言と妄言、いわゆる「ヘイトスピーチ」を「人種差別」と断罪する画期的な判決を下した。
この在特会は、開戦記念日にあたる十二月八日、下関駅前の釜山門前の広場でヘイトスピーチをやると宣言している。
司法が「人種差別」と断罪したヘイトスピーチに対し、県はどのような認識をお持ちか。見解を求める。
●他県の動向…実態はどうか
また、他県の動向などと言い訳しているが、朝鮮学校がある二七都道府県のうち今年度補助金を予算見送りしたのはわずかに四県であり、十八道府県は支給を継続している。
東京都は石原知事時代に執行を見送ったが、都下の二十三特別区はすべてが支給を継続している
「過ちがないことではなく、過ちを改めることを重んじよ」との、吉田松陰の名言・教えもあるではないか。
ただちに朝鮮学校への補助金支給を復活させるべきと考えるが、お尋ねする。
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◯各部長・藤部知事職務代理の答弁要旨
来年度の補助金については、朝鮮学校への支援に関する国や他県の動向など、朝鮮学校を巡る情勢については、現時点では変化がないものと考えている。… 池内総務部長
様々なご意見がこの議場にあったことは、きちんと受けとめていく。ただ、この件に関しては、高校無償化の国の取扱や他県の状況、あるいは朝鮮民主主義人民共和国と日本との関係など総合的に判断し、この点は現在も変わっていないということだ…
再々質問に対する藤部知事職務代理者の答弁
ヘイトスピーチは、人々に嫌悪感を与えるのみならず差別意識にもつながりかねないものだ。県としては、「山口県人権推進指針」に基づき国籍や民族の異なる人々が互いの文化の違いを認め合い、地域社会の構成員として共に生きていく「多文化共生の地域づくり」を進めており、こうした観点からも「大変残念な行為」だと思っている。…
藤井総合政策部長
【再質問、再々質問】
部長答弁が二月時点と変わらず、まともに答えないことから、「政治判断した知事の不在によるものか」などのやりとりで、一時議事がストップしました。が、ここでは在特会問題での再質問を中心に掲載します。
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●品性疑う…差別排外主義
「在特会」によるヘイトスピーチについて藤井部長の答弁は、「大変残念な行為」というものだが、その内容を端的に示すものがある。
先ほど紹介した在特会による下関の集会のタイトルは…「さよならトンスラー」、副題は「除鮮で明るい市民社会の実現を」というものだ。
「トンスラー」とは排泄物で作った酒という意味で、「除鮮」とは放射能の除洗ではなく、朝鮮の「鮮」の字だ。つまり朝鮮人を人ではなく、排泄物や放射能として扱っている。これが果たして人間として許される言辞だと思えるか。
●欧米では…ナチは犯罪
在特会が主張する内容は、ドイツやイタリアなど欧米では絶対に許されず法的にも規制されている「民族排外主義」の典型であり、その矛先は、北朝鮮や韓国だけでなく中国など、北東アジアの人達全体に向けられている。
ヘイトスピーチの意味する所は、同じ社会に生きる構成員に対して「二級市民」すなわち人間の尊厳を否定し「人間以下の存在」とする「人種差別・排外主義」そのものだ。
●補助金廃止は…差別意識を助長
そして問題は、山口県の補助金廃止が、こうした究極の人権侵害・民族差別排外主義を助長させる土壌をつくっていることだ。
ところが県の認識は、二月県議会以降まったく変わらず、今議会不在の山本知事の不当な政治判断のまま思考停止状態になっている。
しかし、ことは北も南も関係ない子どもの教育の問題であり、日本も批准している国際人権問題であり、日本国憲法十四条・二六条にも違反する問題ではないか。知事職務代理者たる藤部副知事に答弁を求める。