ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

漢字をしっかりと書き分ける

2014年01月10日 12時19分44秒 | 受験・学校

 昨日、私が担当している2年生向けのクラス授業で小テストを行い、うちに帰って採点をしていました。何問か、ひらがなで記した部分を漢字に直すという問題、漢字の読み方を(送り仮名も含めて)記すという問題を出したのですが、正答率が低いのです。これは世間一般に言われていることではありますが、やはり、法律学に取り組むのであれば、或る程度の読み書きはできなければなりません。

 理由は簡単です。法律学は言葉の学問であるからです。

 私の大学院時代の師匠が度々おっしゃっていました。

 その上で、漢字などのことについて、気になったことを記しておきます。

 昨日は刑法の未遂犯、共犯についての小テストを行いました。採点していると、私の小学生時代を思い出させるようなことがありました。

 未遂。

 この言葉を書かせると、誤って覚えているのか、それとも手癖なのかわからないような字が続出します。正しく記せば

 未遂

 です。しかし、次のように書かれている答案が何枚もありました。

 末遂

 「遂」という字についても変なものがあったのですが、それは脇においておきます。よく御覧いただくとおわかりになるでしょうが、「未」と「末」とを混同しているのです。

 勿論、全く意味は違います。「未」は、漢文ならば「いまだ~(せ)ず」です。シューベルトの交響曲で最も有名な第7番ロ短調の俗称は「未完成交響曲」または「未完成」ですが、言うまでもなく、第3楽章の最初の数小節までしか書かれておらず、第2楽章までしか演奏されないために「未完成」なのです。これを誤って「末完成」と記せば、散々苦労しつつも結局は完成したことになりますから、第2楽章で打ち切る必要もなくなる訳です。もしかしたら、交響曲第8番ハ長調(通称「ザ・グレート」、ドイツ語でDie Große)を凌駕する曲になっていたかもしれません。

 「未」と「末」との取り違えは、意外に多く見受けられます。私の小学生時代の話というのは、この誤りのことです。実家の近所にマンションが建設されており、その看板に「●●年▲▲月完成」と書かれていたのです。本来は「●●年▲▲月」のに完成すると宣伝したかったのでしょうが、逆効果の看板になっていた訳です。

 取り違えということでは、よく見かけるのが「以外」と「意外」です。サイト、ブログの類では頻出というところでしょう。既に私はこの文章で「意外に」という言葉を使っていますが、「以外に多く見受けられます」と記せば、全く違う意味になるか、無意味な文章になるでしょう。また、「関係者以外立入禁止」とすべきところを「関係者意外立入禁止」と記せば、意味のわからない表示になってしまいます。

 「未」と「末」との区別に戻るならば、どちらの字なのかわからないような答案もありました。上の横棒と下の横棒の長さが同じなのです。「こんな字、あったっけ?」と思いながら、答案に太い赤字で正しい字を書きました。これも採点者の義務でしょう。

 私が小学生であった1970年代後半には、文房具屋に行けば漢字練習帳なるノートが売られていましたし、本屋に行けば小学生向けの漢字の書き取りのためのドリルなどを何種類も見つけることができました。小学校の国語の時間には毎時間のように漢字テストがありましたし、自宅でも嫌になるほど漢字の書き取り練習をやりました。今はこういう勉強をしないのでしょうか。

 また、昨日の小テストでは「陰謀」と答えるべき問題も出したのですが、誤字が頻出しました。「陰」ではなく「隠」になっていたりするのです。「隠居」と勘違いしているのか、などと考えてしまいました。

 もう一つ、以前から気になっていることを記しておきます。昨日の小テストに限られない話で、正しく漢字を覚えるには障害になりうることです。

 多くの答案、レポートなどを読んでいると、書かれている字が小さいのです。答案用紙の行の太さのためなのかもしれませんが、それにしても小さすぎます。虫眼鏡が必要ではないかと思われるような大きさの字にも時々出会います。字をごまかして書こうとする意図があるのかもしれませんが、その意図は完全に外れています。読みたくても読めないから、採点の対象から外したくなるのです(勿論、外しませんが)。もう少し、大きな字で書いて欲しいものです。

 また、鉛筆やシャープペンシルで書かれた答案やレポートであると、字が小さいだけでなく、薄いというものもあります(濃いと小さな字は書きづらいのです)。同じHBでも鉛筆とシャープペンシルでは濃さが違いますし、私が高校時代から今に至るまで愛用している補助軸(製図用のもの。2ミリほどの芯を入れて使う)でも三菱鉛筆のHBとステッドラー(やファーバー・カステル)のHBでは濃さが違いますので、一概には言えません。しかし、HBかBを使って欲しいという思いはあります。私も愛用していたステッドラーのFならよいのですが、どう見てもH、2Hというような硬い芯を使っているとしか思えない答案やレポートがあるのです。蛍光灯をつけている部屋で読んでいると字が光を反射してしまい、読みにくくなります。

 逆に、字が濃すぎるという場合もあります。おそらく4B、EBというような芯が使われているのでしょう。消しゴムを使うと周囲が黒くなっていたりします。そればかりか、他の紙まで少しばかり黒くなってしまいます。

 以上のようなことに悩まされたので、ここ何年か、レポートについては黒インクのボールペンか万年筆を使うように指示しています。社会人になってから、自分のためであれば鉛筆でもシャープペンシルでもよいとして、書類云々ということになればボールペンや万年筆ということになるからです(製図、デッサンなど、特殊な仕事は除きます)。「学生のうちから使い慣れておきなさい」という訳です。

 最近は、パソコン、スマートフォンなどを使って「書く」ことが多くなっています。かく記す私もそうで、原稿や書類をパソコンで「書いて」います。しかし、ボールペンや鉛筆などを使って書く機会も少なくありません。また、機械を使って「書く」にも、字を知らなければ話になりません。

 書くことにも練習が必要です。正確に書く練習をしてください。大学生であっても、いや、そうであるからこそ、漢字の書き取り練習は必要である、ということです。


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