ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

いよいよ、久留里線の一部区間の廃線も視野に?

2023年03月09日 07時00分00秒 | 社会・経済

 以前から鉄道ファンなどの間で話題となっていましたが、JR東日本の久留里線について、JR東日本が沿線自治体との協議を検討するようであるという速報が入りました。千葉日報社が2023年3月8日16時27分付で「【速報】久留里線、バス転換など視野 JRが協議検討、年間収入100万円の区間も」として報じています(https://www.chibanippo.co.jp/news/national/1035841)。

 南関東地方は鉄道廃線と無縁と思われがちですが、千葉県は違います。1980年代の国鉄改革および国鉄分割民営化の流れにおいて赤字国鉄ローカル線の廃止(東北地方の一部を除いて第三セクター化またはバス転換)が行われましたが、南関東地方の国鉄の路線で特定地方交通線に指定されたのは千葉県内の木原線のみです。しかも木原線は第1次特定地方交通線でした。結局、第三セクター化され、いすみ鉄道いすみ線となりました。

 今回の中心である久留里線は、木原線と関係があります。木原線の木は内房線の木更津駅、原は外房線の大原駅を意味するからです。

 久留里線は、元々、千葉県営鉄道の一路線でした。木更津駅から久留里駅までの区間が開業したのは1912年のことです。その後、国に無償譲渡されます。理由は大正11年4月11日法律第37号(鉄道敷設法)にありました。同法の別表には第48号として「千葉県木更津ヨリ久留里、大多喜ヲ経テ大原ニ至ル鉄道」が掲げられています。つまり、元来、久留里線と木原線は一つの鉄道路線となるはずであったのでした。しかし、木原線は大原駅から上総中野駅まで、久留里線は木更津駅から上総亀山駅までが開業したものの、上総中野駅から上総亀山駅までの間は開業しないままに終わったのです(建設もされなかったのではないでしょうか)。木原線のほうは上総中野駅で小湊鉄道線と接続するので、形は変わったものの房総半島横断の形を一応はとることができました。しかし、久留里線のほうはそうならなかったことになります。

 久留里線は、1960年代の赤字ローカル83線に入ることもなければ特定地方交通線に指定されることもなかったのですが、閑散路線であることに変わりはありません。しかも、JR東日本が不採算路線としてあげた36路線72区間(千葉県では4路線5区間)の中に入っています。久留里線の2020年度における1日平均乗客数は、木更津駅から久留里駅までの区間で1023人、久留里駅から上総亀山駅までの区間で61人にすぎません〔この部分については日本経済新聞社が2022年7月28日19時49分付で報じた「久留里線など千葉4区間が不採算 JR東日本が路線別収支」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC286HA0Y2A720C2000000/)によります〕。上記千葉日報社記事では、2021年度における久留里線の久留里駅から上総亀山駅までの区間の営業費用が2億8100万円であったのに対し、収入が100万円であったことが記されています。営業係数が28100であるということになる訳で、これは、度々取り上げられるJR西日本芸備線の東城駅から備後落合駅までの区間よりも悪いということになるかもしれません。ちなみに、1978年にバス代行となった国鉄士幌線の糠平駅から十勝三股駅までの区間の営業係数(1977年度か1978年度)は22500でした。ここまで営業係数が悪い路線・区間は他にあるのでしょうか。

 JR東日本が久留里駅から上総亀山駅までの区間について音をあげても致し方ありません。

 JR東日本千葉支社は、今日(2023年3月9日)に記者会見を開いて不採算路線の状況を説明するようです。明確に廃止という言葉が出されるかどうかはわかりませんが、沿線自治体との協議ということであれば、当然、廃止が視野に入ることでしょう。木更津駅から久留里駅までの区間も、決して数字がよい訳ではないので、何らかの提案がなされる可能性があります。


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