ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

金剛自動車の代替バスが決まる

2023年11月17日 00時00分00秒 | 社会・経済

 このブログでは何度か金剛自動車のバス路線の話題を取り上げています。金剛自動車が路線バス事業を完全にやめてしまう訳ですので、全廃ということになりますが(会社も解散ということになるのでしょう)、その代替交通手段をどうするのかという問題があり、10月に入ってから富田林市、太子町、河南町および千早赤阪村による地域公共交通活性化協議会が開かれてきました。11月16日、河南町で協議会が開かれ、代替交通手段が決定されました。朝日新聞社が、2023年11月16日19時56分付で「金剛自動車の路線バス廃止後の代替決まる 3分の2の路線で運行継続」(https://www.asahi.com/articles/ASRCJ5WRTRCJOXIE027.html)として報じています。

 金剛自動車のバス路線は15あります。仕方のないことではありますが、全路線が残る訳ではなく、現在休止中である富田林循環線の他、白木加納循環線、聖和台循環線および太子線は廃止されることになります。白木加納循環線は富田林駅(近鉄長野線)発着の路線ですが、聖和台循環線および太子線は上ノ太子駅(近鉄南大阪線)発着の路線です。

 また、上記4市町村の財政負担は多額にのぼります。これについては後に記します。

 上記朝日新聞社記事には、金剛自動車のバス路線のうち、優先的に残すとされた5路線についての対応が書かれています。次のようになっています。

 1.千早線

 (1)富田林駅〜千早赤阪村立中学校前

 南海バスが6時台から20時台までに12便、千早赤阪村が6時台から8時台までと16時台から22時台までに合計7便を運行することとなっています。

 (2)千早赤阪村立中学校前〜金剛登山口

 千早赤阪村が5時台から20時台までに12便を運行することとなっています。

 (3)その他

 記事には書かれていないので廃止されるのでしょう。

 2.さくら坂循環線

 近鉄バスが6時台から19時台までに11循環、河南町が6時台と17時台から21時台までに合計3循環を運行することとなっています。

 3,東條線

 (1)富田林駅〜府立こんごう福祉センター(循環)

 南海バスが6時台から20時台までに12時循環を運行することとなっています。

 (2)富田林駅〜府立こんごう福祉センター〜甘南備〜富田林駅

 近鉄バスが6時台から8時台までと14時台から16時台までに合計4循環を運行することとなっています。

 4.喜志循環線

 近鉄バスが6時台から20時台までに15循環を運行することとなっています。

 5.阪南線

 近鉄バスが6時台から19時台までに上り15便と下り14便を、河南町が17時台から21時台までに5便を運行することとなっています。

 なお、記事では少々わかりにくいのですが、千早赤阪村および河南町が運行することとなっている区間でも南海バスおよび近鉄バスに運行を委託するようです。元々、南海バスおよび近鉄バスは上記4市町村に対して「『自治体コミュニティーバス』方式を条件に可能な範囲で協力する」と回答していました。また、「朝夕のラッシュ時などに『自家用有償旅客運送』方式などで補完のバスを走らせる」とのことです。

 上記5路線以外で残るのは北大伴線、石川線、河内線、白木線、太子中央循環線および畑・平石線です。このうち、「北大伴線と石川線は一体的に運行を継続」することになっており、河内線、白木線、太子中央循環線および畑・平石線については、一部で経由地の変更もなされるようです。

 現行のダイヤとの比較をしなかったのでわかりにくいもしれませんが、減便となる区間があります。上記朝日新聞社記事によれば「バスの転回スペースなどの問題」があるとのことです。

 また、運賃は、しばらくの間は現在のままであるようですが、改定も今後の検討課題となるようです。それは、上記4市町村の財政負担とも関係があります。協議会にオブザーバーとして参加した市町村長が国や大阪府の財政支援を要望しているのですから。

 運行経費などについての上記4市町村の負担額は、2023年度分でおよそ1億5,000万円です。私としては、むしろ2024年度分のほうが気になるところですが、2023年度とするならば、12月21日から2024年3月31日までということでしょうか。

 およそ1億5,000万円は、バスの営業距離に応じて、次のように分割されることとなります。

 富田林市:およそ6,560万円。

 河南町:およそ5,040万円。

 太子町:およそ2,640万円。

 千早赤阪村:およそ770万円。

 これでは「議会でも財政面などでの持続可能性に懸念の声が出ている」としてもおかしくありません。参考までに、それぞれの市町村における2023年度一般会計予算の歳入歳出予算の総額をみておきます。

 富田林市:43,886,000千円=438億8,600万円(市税収入見込みは134億8,264万8,000円)。

 河南町:6,524,318千円=65億2,431万8,000円(町税収入見込みは14億7,599万8,000円)。

 太子町:6,002,962千円=60億296万2,000円(町税収入見込みは13億8,132万円)。

 千早赤阪村:3,682,950千円=36億8,295万円(村税収入見込みは4億5,031万1,000円)。

 今のところはたいしたことがない、と思われるかもしれません。しかし、歳出予算を概観すれば、様々な領域への支出がありますから、それほどの余裕がないと考えてよいでしょう。

 今後、路線バスについて一般会計予算を充てるのか、特別会計を設けることになるのかどうかは不明ですが、おそらく特別会計を設けることはないであろうという予測を前提とし、さらに今後の人口減少を見込むとすると、利用客数などによっては負担額が大きくなることも考えられます。まして、円安のせいで燃料費が高くなっています。

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 これまで、大阪府のバス路線についてブログで記事を書いてきました。公共交通機関に関する法的考察のために、と考えて記してきた訳ですが、私自身、時折であるとは言え都営バス、東急バス、川崎市バスなどの路線バスを利用することがあり、非常に気になるのです。川崎市の地図とバス路線網とを見比べると、バス空白地帯と言いうる所がありますし、利便性が低いとしか表現しようがない路線も少なくありません。高津区には東急バス高津営業所と川崎市バス井田営業所がありますから、一層気になる訳です。

コメント
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