今年になってからの3週間は、なかなか動乱の期間でした。
カザフスタン暴動がCSTOの断固たる登場によっておさまったというのは、今後を強く示唆してるね。もう、カラー革命はさせない、イスラム過激派を使った工作も頭うちにしてくれる、というロシア世界からの通告。
ここでわかるのは、今日、西側の戦力というのは、カラー革命につられる話半端で金に釣られる面々と、イスラムを騙る傭兵しかいないんだな、というあたり。面白いわ、ほんと。
で、現在何がかかっているのかというと、昨年12月17日にロシアが出した、NATO東方拡大はしない、概ね1997年以前の秩序に戻せという提案に対して、アメリカ政府が何と答えるかという問題なわけです。
ここらへんで書いた通り。
東方拡大問題:「ほんとはずっと戦争してました」
で、これを正面から受け止めたくないネオコン・ナチリベ連合軍が、ウクライナで戦争が、ウクライナで戦争がと騒いで、事の本質じゃなくて、徹底抗戦の構えを各国を巻き込んで作ろうとしているわけです。
だがしかし、ロシア政府がそんなことに態度を軟化させることはもちろんなく、俺らは返事を待っているという姿勢を堅持してTASS他のロシアのメディアにもそれが載る。
だが、見たくない人たちが、ウクライナが~と騒ぐ、という繰り返しをこの1カ月やってる。
結果的に、レーガン政権の時の経済アドバイザーだったり、冷戦期の対ソ戦略の一員としていろんな仕事をしてきたポール・クレーグ・ロバーツが今日書いている通りの状況が現在ただ今ですね。
人類は、米国政府の全能性に対する妄想的信念を生き延びることはできるのか?
Can Humanity Survive Washington’s Delusional Belief in its Omnipotence?
そうすると、核戦争だわ、みたいに思う人たちは話が古くて、もっと様々な局面でも、人類的危機をもたらし得るのが現在の局面なわけです。
というのは、米国政府に居座ったCIA、ペンタゴン、国務省、財務省にまたがるネオコン・ナチリベ集団は、軍事的に、経済的にロシア対して自分たちは強い立場にあって、ロシアは脅すと屈する、または、弱体化していくと信じて疑っていない。この妄想こそすべてのガンで、この妄想の故に何度でも同じことをしている。
軍事の話はもちろんだが、現在喫緊のテーマになっている経済制裁でも、大ごとになる。
これまで、USとEUはもう数えきれないほどロシアに制裁をかけているので、もはやロシア政府とか企業などで簡単に制裁できる人はどれほど残っているのだろう、という恰好になっていて、その上をいくとなると、ロシアの大統領他の重要人物、ロシアの銀行、ロシアのエネルギー企業そのもの、みたいなものに制裁をかけることになり、事実アメリカの外交担当者たちおよびその息のかかった元気な政治家さんたちはそう主張している。
これをやるとどうなるかというと、要するに、単なるアメリカ法だが、脅されるから多くの国が従い、多くの国がロシアと経済的にも付き合えなくなる。
ところで、ロシアは欧米から重要産品を買っていないが、欧米はロシアから重要産品を買っている。
つまり、でかい制裁をロシアに課したら欧米側の方に痛みが生じる。これのどこが「制裁」なんだと、たびたび言われてきたけど、ついに殆ど最終局面みたいなところに来ている。
また、ヨーロッパだけでなく、ロシアは石油、天然ガス、石炭その他の鉱物資源、そして食料を輸出している国。ここで、ワシントンの妄想派が、ロシアとの付き合いを切れ、といって、誰がそこを埋めてくれるのか?
小麦の輸出を止めたら直ちに食糧危機になる国がいくつかあると思うし、重要産品の輸出国が貿易対象から外れたら、それらの製品は供給不足になるから値上がりする。つまり、そもそもインフレ基調の世界にあって、ワシントンの妄想派の行動は、世界中の数多くの経済に悪影響を及ぼすことになる。
(だから、実のところさりげなく、これは無理、という記事が出てくる。アメリカ政権内部で抗争が行われていることが外部から観測されることになる)
個別具体的には、思えば、インフレに悩むトルコ経済にはさらなる打撃が待ち受けるでしょう。ロシアからのエネルギーが入って、ロシアで建設業者が働き、ロシアのツーリストが来るというトルコ経済にとってロシアとの安定な関係はとても重要。
という状態なので、ポール・クレーグ・ロバーツの言っている意味は、究極的には軍事だが、そうならなくても手ひどい結果が待ってる。私たちはあの狂人集団をやり過ごすことができるのか?って感じの水際にあるわけね。
■ 正気になるしかないが・・・
という中で、彼らネオコン・ナチリベ集合体にとって、昨日、ドイツの外相がモスクワを訪問するというタイミングは重要だった。これを阻止したかったわけね。(もっと前には、ドイツの首相が行くはずだったのでは?ここはよく見てなかったので私は不明)
しかし、いかに緑の党のベアボックが強硬派だったとしても、ドイツという国民国家を代表する存在としてふるまうのなら、EU外交部とかNATOのような誰の代表者なのか不明なエンティティーとは異なり無責任なことはできないだろう、と思われていて、実際、ドイツ外相はとりあえず正気路線を取る構えを見せた模様。
【モスクワ=桑本太】ロシアのラブロフ外相とドイツのベーアボック外相は18日、モスクワで会談した。ロシアが提案した欧州安全保障について、ベーアボック氏はロシアと対話する用意があると会談後に述べ、ロシアと米欧の主張が対立する緊張関係の緩和に取り組む考えを示唆した。
欧州安保、「対話の用意」 ロシア・ドイツ外相会談
ベーアボック外相は、モスクワの前にキエフを訪問していた。何を話したのかは不明。
モスクワでは無名戦士の墓に詣でてから会談に臨んでいた。これはいつからスタンダードになったのか知らないけど、多分、初の訪露の際にはやる、みたいな恰好になってるのかしら。
だがしかし、多分、なんとかしてまたズルして、エネルギーも取りたいが、戦争もしたい、としようとするのがドイツでしょう。ドイツには誠実カルチャーはない。
そこから、ロシアはアメリカとの単独の交渉に入って、出来事をパブリックにして、書面の証人をパブリックにしよう、という作戦なんじゃないかと愚考する。それでも騙してくるにせよ、できる限り覆されないようにするために。
NATO東方拡大:ゴルバチョフはマジで約束されていた
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/d0cfccb89b11e661aadd28da80887fb7
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/d0cfccb89b11e661aadd28da80887fb7
で、この話で西側が馬鹿みたいにもがくもんだから、むしろ7年前よりずっと多くの人がこの話を知るようになったという、アメにとってもドイツにとっても全然よろしくない結果がついている。馬鹿だね、ほんと、でもあるし、嘘って高くつくという話でもある。
その他、フランスも、ロシアと話し合うのは重要という姿勢を一貫してもってる。フランスは、右派からも左派からもNATOから出たらいいんじゃないかとか、EUを出よう、という考えが持ち上がり続けているので、政治的にも、マクロンは反ロシアは取りずらい。(反EU=反ドイツなので、そうならロシアとは良好に、という理屈)
どうなることか。
■ プーチン、アリエフと電話会談
他方で、昨日はプーチンが、アゼルバイジャンのアリエフ大統領と電話会談して、ウクライナとカザフスタンの現状について話した。アリエフからのお電話だったらしい。
Telephone conversation with President of Azerbaijan Ilham Aliyev
ウクライナ、アゼルバイジャン、カザフスタン、ベラルーシは全部ソ連の構成部分だったところ。
ここで、カザフスタン騒動の結果としてナザルバエフが没落し、政府関係者他多数の人が拘束され取り調べを受けている。ルカシェンコも同じ穴のムジナだったわたけだが、ロシアとの連合国家OK路線に転じた。
アゼルバイジャン、カザフスタンがベラルーシ並みに転じることはないとはいえ、状況から、どのようにしてソ連邦崩壊後の資産切り売りとオリガルヒの誕生が起こったかについての総括が始まったりしたらどうなんだろう・・・などと思ってしまう。
アリエフもナザルバエフと同様のオリガルヒ一族なんだけど、それは現在の大統領であるイルハム・アリエフのお父ちゃんであるヘイダル・アリエフの時代のこと。イルハムはお父ちゃんと同じ西側重視路線を生きてはいるものの、ロシアと同様5月9日を重要視するなど、他の諸国とは異なる色合いも強い。
西側の時間かせぎページェントにも付き合うが、地上の仕事の方が重要だ、といったところか。
■ オマケ
イランのライースィー(ライシ) 大統領が、20日モスクワを訪問して、モスクワ下院で演説するようだ。
Iranian President says his visit to Moscow may become turning point in Russia-Iran ties
■ オマケ2
ソ連崩壊と資源切り売り、オリガルヒの誕生の話が見直される時が来るとしたら、その時の西側の問題も見直されないとならないだろうなぁ・・・。まぁ無視するんだろうけど。
ベルリンの壁の崩壊:ナチ・リベ勃興の日
お久しぶりです。
ヨシフ・コブゾンのお話、知りませんでした。一体、ゲルマンの人たちは何をしたいのでしょうかと、嘆いても始まりませんが溜息がでます。
あと、2014年の制裁騒ぎの時リンゴ農家さんたちがデモしていたというのをちらっとですが覚えています。こちらも、人々の交流を壊してまで何をしたいのだろうかといったところです。
ここ数年のサマリーと現状、間延びするであろう将来が一読でわかるエントリーですね。
「エネルギーも取りたいが、戦争もしたい」という股裂きに耐えられるんでしょうか。一般国民から
「楽したい、享楽的に生きたい」とブーイング浴びるんじゃないでしょうか?