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枢軸国と英仏のアラブの取り合い

2021-05-24 18:43:54 | WW1&2
書いた時には、わりと思い切ったことを書いたかな、という気がしてたけど、調べてみると、意外とそうでもなかったなと思った。

ハマス vs イスラエル9日目:アーミン・フサイニーを思い出してみる

1941年11月28日:ヒトラー・フサイニー会談



まず、これは、考えていたより重要。ただ、両者はヒトラーが政権を取った時からの付き合いなのでここから始まったわけではない。

そして、私が知らなかっただけで、このサブジェクトは既に相当に調べはついていた。こうなる最大の理由は冷戦が終わったことではなかろうか。ドイツの公文書が開いて、アメリカとソ連が持っていた、今まで見せてくれなかった分が見られるようになったのは冷戦後。ロシアは最近全部出すといって出し始めたが、おそらく西側は都度都度なんだろうと思う。いずれにしても、つまり、冷戦中はかなりいい加減なことを資料なしで書いていた部分が多々ある。

結構詳しいwikiはこれ。「ナチスドイツとアラブ世界との関係」



中途半端に中身が翻訳されている日本語版もあった。

ナチス・アラブ関係


そして、戦略的にみて、ドイツにとってメソポタミア、パレスチナの支援は実際とても重要だったので、イラクからエジプトまで漫勉なく工作をしてプロパガンダをまき散らす価値はあっただろうと、簡単にそう思う。

そして彼らが気が付いたのがこの点。ドイツ国防軍のヴァルリモント大将がこんなことを言ったらしい。

アラブ諸国間における唯一の真の政治的結集点とは、共通してユダヤ民族を憎んでいることだった。一方で「アラブ国家主義運動〔アラブ民族主義運動〕」等といった事柄は、様々なアラブ諸国の利害不一致が原因で、紙の上にしか存在しなかった[23]。 


アラブ民族主義は掛け声はいいけど、実際、シリアもイラクもリーダー層は英仏とさっさと手を結んだ。民衆は欧州ユダヤをやたらに憎むけど、バグダッド・ユダヤという大金持ち集団が長いことイギリスと組んでいる状況そのものに言及するような社会状況ではなかった。だからその意味では皮相なところがある。それはつまり扇動に弱いということ。

ドイツ国防軍がどういう経緯で考えてそう見取ったかはともかく、反ユダヤだと食いつきがいいんだなと手ごたえを感じたのは確かなんでしょう。だから、各地でプロパガンダをしてた。(逆にそれがエリート層、支配層、知識人に疑問を抱かせるとしても)

(しかし実は、ドイツはパレスチナへのユダヤ人の送り出しを1936年あたりまで止めてなかった)

この地域は、英仏と一緒にオスマンを倒した地域だから、その意味では戦争の同僚は英仏の方。実際、問題のアミーン・フサイニーもイギリス軍についてた人。そこが、トルコと異なる。

ベルサイユ会議において、ファイサル・ヴァイツマン合意でシオニストと妥協しかけたファイサル1世も、


いろいろぐだぐだになった後、イギリスの仕立てで(正式には、委任統治終了によって)イラク王になって、その財務大臣はバグダッド・ユダヤの巨大な名家であるサッスーン家の人Sassoon Eskell(イギリスの男爵)だったというところを見ても、金持ち階級が見ていた現実は、決して反英ではないと思う。なんか評判の悪いナチと組んで勝ってもどうなるの?みたいな。



■ 1941年アングロ・イラク戦争

そのファイサル1世によって親英路線で委任統治を終えて独立したイラクは、1940年に反英派がクーデターをかまして親イタリア、親ドイツ路線を取らせようとする。石油を枢軸国側にまわそうとしているわけです。で、この時にも騒動の中で、ユダヤ人憎悪を煽っていたようだ。

イギリスはここは踏ん張るしかないので、インド派遣軍から1個師団連れてきてバスラ上陸。アングロ・イラク戦争と呼ばれるけど、ドイツ軍も欧州から航空支援をしてるし、そもそもこの時のイラクはクーデーターの結果の親枢軸政権なので、実際には、枢軸 vs イギリス。問題のフサイニーもイラク軍のリーダーの1人として参戦してる。1941年4月から5月にかけての展開で、イギリス軍がバグダッドを占領して、そのまま1947年まで居座る。

その後1941年6月にドイツはソ連に侵攻、イギリス軍はシリアで作戦行動を取って、その後、ソ連と共にイランを保障占領。


やっぱりこう、どうしてドイツが1941年6月22日にソ連侵攻を開始するのか、という決断までの理由は謎のままだなと改めて思う。長年多くの人が言った通りのイギリスファクターが本当は問題なんでしょう。(そしてUKはここらへんの資料を開示しない)

ドイツは、ソ連なんか攻めずに、バルカンを南下して中東を中心に行動していたらイギリスに勝てたんじゃないのか、と昔から言われているところでもある。

ソ連に比べたら中東はこの時点では弱兵しかいないと言っても過言ではないし、イギリス軍も本国周辺に比べたらかなり貧弱。ただ、いざという時ガッツのある軍なのは本当なのでイギリスは弱兵には含まれないと言ってみたい。

ほんとに、どういう設計でこうなったんだろうと興味は募る。ひっちゃんヒトラーが、簡単にコーカサスを取れると思ったか、あるいは、もう博打しかなかったという局面とも言える。


■ またやるのか?

で、今後どうなるのかしらないですけど、パレスチナの話は、WW IIではなくて、1とベルサイユ条約体制の問題といった方が適切でしょう。これで世界を作ってる気になっていた人たちが、この無作法、無理やりを通したことがその後の様々な問題につながる。批判するならこの枠組みに入れるのが一番実りがあると思う。

そして、こっちもどうなるのかわかないけど、イスラム諸国を含む国際社会が、再びユダヤ人を移動させようという気は現状なさそうだと言えるんじゃないでしょうか。

現在のイスラエルには既に多数の、イスラム諸国にいたユダヤ人も含まれている。イスラエル叩きの急先鋒のイランから出てきた人たちも含まれている。あの体制でユダヤ人が生きにくいと思っても不思議はないでしょう。ちなみに、イランでユダヤ人に課されていた制限がなくなったのはパフラヴィー朝(1925~1979年)になってからだそうなので、ユダヤ人差別はヨーロッパの産物というのもちょっと違うと思う。(別の集団扱いするのがほぼどこでも標準だったと言っていいのではなかろうか。)

しばしば聞かれる、シオニストが悪いんだ、という言の含意は、ドイツ系とかヨーロッパ系が来るからいかんのだ、オリエントのユダヤはOKだ、なのかもしれないけど、で、どうやってつまみ出すの? 2世、3世の人たちをどう区別するの? コーカサスのユダヤはどっちなの? あと、ユダヤ人の「アーリヤー」を一時期の「シオニズム」で代表させるのは良くないと思う。


とはいえ、パレスチナの人たちの言い分ももちろんわかる。だけど、現状、この20年間は特に、イランとかトルコといった、当初のプレーヤー、つまり、アラブじゃない人たちが、イスラム過激派擁護のためにこの問題を使ってるという事情には、よく注意すべきだと思う。


流してみるに、へんに拘って話を後戻りできないようにしたのは、イスラム側と言えるのではなかろうか。

つまり、2000年以降、イランのアフメドネジャデ大統領が、ホロコーストはなかった論を張って、この大騒ぎをドイツに持ち込んでみたり、他にも反イスラエルのついでに反シオニスト、反ユダヤをカップリングしてしまう人たちがあふれる中で、イスラエルは嘘をついている云々の説が幅を利かしてしまって、イスラム世界では既に邪悪なイスラエルは滅びるのだ、みたいな刷り込みが後戻りできない感じになってると思う。

多くの善良な人たちは、パレスチナに自由をというのを共存プランと思って聞いてると思うんだけど、この運動、Free Palestineが含意するのは、パレスチナを更地にしろということですよ。つまり、イスラエルを解体せよになって、紙一重で、ユダヤ人を追い出せになっちゃってる。本気でやってるの?って感じ。


■ オマケ

英仏米がアラブを持ち上げるために適当な線引きをしたことが問題なのは言うまでもないけど、トリッキーだったのはソ連。本人たちの意図以上に混乱をもたらしたと言えるんじゃなかろうか。ここも整理しないと。


■ オマケ2

日本の朝日他の報道が異常だとは前から知ってるけど、これはスゴイ。

ハマスがガザで支持される訳 「盾」にされた市民だけど 

イスラエル占領下の東エルサレムでパレスチナ人が退去を求められたことなどを機に、4月中旬からエルサレムなどで抗議デモが拡大。そうした人々の声を代弁するように、真っ先に動いたのがハマスだった。

 「パレスチナの人々と聖地を守る」(ハニヤ政治局長)として5月10日、ロケット弾攻撃に踏み切った


10日間で4000発以上のロケット弾による飽和攻撃でイスラエル市民の破壊を決断をした、と。

朝日は完全にハマスの広報になってる。シリアでの一戦におけるガーディアンとかBBCみたいだ。あの時も、ジハード主義者の言い分を垂れ流していたものだった。ともあれ、西側の主流メディアの多くはイスラム過激派の味方だということはわかった。



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1 コメント

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ナチスはシオニストとも協力して居た! (ローレライ)
2021-05-26 15:19:09
ヨアヒムプリンツのようにナチスと協力してユダヤ人のパレスチナ移送を進めたシオニストもいるのでナチス利用はアラブの専売特許では無い!
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