今日は5月1日、いわゆるメーデー。
メーデーについて私が知っていたのは、
1886年5月1日、アメリカのシカゴで8時間労働の実現を求めて労働者が集まったが何か事件になった(ヘイマーケット事件)、どうやらそれを記念しているらしいがよくわからない、世界中に広がった経緯もわからない、現在の米では5月1日は休日ではない。
日本では休日ではないが通常連休中なので労働者は休んでることが多いみたいだ。その連休の中で、労働団体が集まりましたというニュースを毎年見る。
ヨーロッパ各国は基本的に祝日である国が多いようだ。旅行に行ってどこもかしこも休みで難儀したことがあった。
といったことでしかなかったが、今日、ふとwikiを見ると、ちょっと感じが違った。
まず、5月1日が祝日か否かは、こんな分布だった。
赤 5月1日が祝日
黄 5月1日は別の祝日
緑 5月1日は祝日でないが他の日に労働者の祝日がある
灰 労働者の祝日なし
つまり、私は、たまたま、日本とアメリカという、大きな国としては例外的に5月1日が休みでない国が母国&結構知ってる国だったのだな、といったところ。
黄色は、イギリス、ポーランド、カザフスタンあたりのよう。でも、wikiを読むと、どこもメーデーの意味は保持されているっぽい。
この分布図って、何かこう、考えるなという方が無理って感じがする。
つまり、世界中で一斉に休日になんかされたら、世界中の労働者が団結するようなことが起こるじゃないか、そうはさせじとUKとUS、子分の日本とポーランドあたりが外している、といかった事情に見えてしまう。(本当かどうかはともかく)
今日の今日までまったく考えたこともなかった。いやしかし、ほんと、知りませんでした。
■ ヘイマーケット事件
後にメーデーとなる日をもたらしたのは、上述の通り、シカゴの労働者の集会で、それがヘイマーケット事件。
事件の成り行きはこんな感じ(wikiの日本語版)
- 5月1日:8時間労働制を求める労働者のストライキとデモが発生。
- 5月3日:ストライキを行っていた労働者4名が警官により射殺される。
- 5月4日:シカゴ市内のヘイマーケット広場で抗議集会が開かれる。解散を求める警察側との間で爆発物を使用した衝突が発生。警察側7名、労働者側4名の死者を出す。
で、射殺された人と無期懲役を言い渡された「アナーキスト」と称される人たちは6年後無罪を言い渡される。
すぐ射殺したがるアメリカにありがちな展開だなといった感じもする。
集会をやっているところに、武装警官が入って事態を悪化させて、集会そのものをワヤにする、というのは、思えばウクライナのマイダン広場の事件を思い出させるものもある。弾圧側、乗っ取り側の伝家の宝刀ってやつなのだろうか。
そして、この事件をきっかけにアメリカでは、労働者がuniteする、つまり組合を作ることに弾圧が加えられていった模様。
■ ドイツ
で、ドイツ語版のメーデーの項目を見たら、まず真っ先にこの「ヘイマーケット事件」が出ていた。スペイン語、ロシア語etc.も、この日の起源はこの事件ですという立て方で説明している。
ドイツ語版を追うと、事件後、1889年に第二インターナショナルが設立され、ここで5月1日をヘイマーケット暴動の犠牲者を悼む日、労働運動の闘争の日と宣言されたことが、この日の意味が世界に広がるある種の「はずみ」だったのかなと見える。
さらに、時は下って1919年、ワイマール共和国でこの追悼の日を祝日にしようという試みがあったが、なかなか成功しない。ストレートにヘイマーケットを反映するようなものに抵抗があった模様で、もめていって、結局、ナチになってから、全国労働者の日、みたいな感じで制定されていった模様。
(ナチ体制が、ドイツ民族全体の社会、といった右か左かわからないことを言い出すのは、だいたいいつも、左の要求を吸収して換骨奪胎しているからだと思う。)
結局、5月1日がドイツの祝日となったのは、WWII敗戦後連合国が統治している時代。
といった成り行きでドイツ連邦では今日も5月1日は祝日。
他方、オーストリアでは、1890年から5月1日にデモ(ラリー)が開催されていて、プロイセン主体の上ドイツとは異なる展開が下ドイツではあったことを知った。ここはまた別途書こう。
■ オマケ
今日はまとめる時間がないんだけど、この間の、レオ13世の回勅の話と重ねていくと、もっとずっと時系列として整合性を持って描けるのではないのか、など思った。
■ オマケ2
日本の場合、欧州(ロシアを含む)+米とは異なるフェーズで受容されているように思う。それは第一にはいわゆる近代化のフェーズがあってないからなのだろう。
だから、欧州(ロシアを含む)+米のグループと同じ意味付けでは語れないものが多いように思う。なかなか理解が難しい。
それにしても、どうしてこういう嘘をつくかなぁと笑えない一幕もあった模様。占領下って怖い。
1954年の場合、労働運動から反米運動への展開を恐れた米民政府はカール・マルクスの実際の誕生日は5月5日であるにもかかわらず、「5月1日はマルクスの誕生日であるため、非共産主義者はメーデーに参加しないように」という声明を出し、開催阻止に向けて圧力をかけた[19]。
■ オマケ3
動乱の果てのロシアの外務省さんから。まったく本項の趣旨と関係ないけど、5月1日の図案がかわいい。好き。
Dearest friends! Congratulations to all on holiday of Spring🌺 and Labor, celebrated on May 1st! #Crimea🇷🇺 pic.twitter.com/HfsmHFZCgZ
— Russia's MFA in Crimea🇷🇺 (@PMSimferopol) May 1, 2021
勤労感謝って、一体誰が誰の勤労に対して感謝するのだろう。まさか、天皇が臣民の労働に感謝する(笑)?感謝っていうのは、誰かが何かをしてもらった時にするものであって、お互いの労働に感謝しあうっていうのは無理がある。メーデーっていうのは、労働者の権利を高らかに謳う日であるとすれば、勤労感謝の日は、意味が全く違う。一年の収穫に感謝する日を、無理やり労働にこじつけた?
アメリカのLabor Dayは9月。これも、意図的に5月1日をはずしたのでしょうね。
大変興味深いブログ、ありがとうございます。
確かに。日本でこのルーツについて大手メディアとかそこらの雑誌etc.で見た覚えがない。
いくら考えてもない。
考えてみればおかしな事情がここにあると、改めて思いました。みなさん、ありがとう!
コメントありがとうございます。私も、で、代替の日って勤労感謝の日のことなの?と思いつつ、そのまま考えずに書いてしまいました。
ご指摘、感謝いたします。また、改めて、どうしてこんなへんな恰好になっているのかについて考えてみようという気になりました。ありがとう!
1.日本では9月第1月曜日には労働者の祝日らしいことはなにもやっていない。
2.4月29日に集会をやってるところがあるが、昭和天皇の誕生日から始まる連休の初日にスライドしただけで、4月29日を労働者の祝日と思っている日本人は一人もいない。
3.さらにおまけで11月23日の勤労感謝の日。この日を労働者の祝日と思っている日本人はひとりもいない。つまり、日本は灰色の国にカテゴライズするべきでしょう。いったい誰がいつに日本に他の労働者の日があると思っているのか、それ知りたいですね。どちらかというと「大韓民国」と同じ。