黒い瞳のジプシー生活

生来のさすらい者と思われた私もまさかの定住。。。

疑心暗鬼が生んだ悲劇

2017-03-19 23:49:36 | 思索系
大河ドラマ「おんな城主 直虎」。このたびの話題は、
疑心暗鬼に陥っている今川家の陰謀に井伊直親が
はまり、その結果直親と家康との内通がバレて、
直親は今川家に殺されるとわかりつつも「自分の責任
だから」と言って軽装備で釈明しに行く――といった
内容。時代は、直親が殺される時点で1562年3月または
12月。直親27歳、家康20歳、今川氏真25歳である。
個人的には「いいひと」路線が続いていた小野但馬守が
どのような経緯によって直親を死なせる事になるのか
注目していたのだが、直親とともに今川家にハメられた
結果、やむを得ず直親を葬り去る流れになったようだ。
それにしても、釈明しに行けば殺されると最初から
分かっているのであれば、例えば(家康に助けを求める
のではなくて、逆に)家康のもとへ出奔するなど、
いくらでもやりようがあっただろうに、どういう訳か
バカ正直に出向いて殺されに行くようである。
また、結果的には直親を裏切るかたちとなってしまった
小野但馬守は、それでもノコノコと井伊家に戻るので
あろうか。果たして、そんなふうにして「いいひと」
路線にも終止符が打たれていくのであろうか――。
少なくとも、入れ歯の寿桂尼さまからは今川の目付
としての役割を期待されている訳だから、彼としては
どんなに気まずくてもそのまま駿府に居付いてしまう
わけにはいかないはずである。だが、かといって、
これでもなお彼が「いいひと」であり続ける限りは
とても何食わぬ顔で戻ってこれるものでもあるまい。
よほど面の皮を厚くしなければ、彼は井伊家に戻って
これないように思われるのである。

ちなみに、このドラマでは小野但馬守は未だに独身
であることになっているが、これも私としては奇妙に
思える。彼は7年後に処刑されることになるのだが、
その一か月後には彼の息子二人も斬罪に処せられて
いるからだ。だいたい、現代でもあるまいにどうして
弟・玄蕃が妻を娶っていて兄が独身なのだろうか。


さて、『この一冊でよくわかる! 女城主・井伊直虎』や
『歴史REAL おんな城主 井伊直虎の生涯』では、
どのような経緯で直親が殺されることなったと
説明しているのであろうか。まず、同書によれば
そもそも直親には父祖たちがなめた辛酸や築山殿との
繋がりに由来する潜在的な反今川・親家康の心があり、
そうであるがため、直親も今川家の足元が揺らいで
くると、実際に家康と内通するようになっていった。
しかし、父親と同様に今川家に忠誠を誓ってきた小野
但馬守は、そんな直親の心変りが目障りになってきた
ので、今川氏真に直親の謀反を訴えた。この事態に
新野左馬助が気が付いて弁明し、また直親自身も
釈明したので、氏真も一旦は兵を引いて直親誅殺を
思いとどまった。だが相変わらず直親謀反の噂は
消えないし、氏真としては何といっても自分の家の
凋落が著しくて疑心暗鬼に陥っていたから、なかなか
直親に対する不信感がぬぐえない。年若い直親は
申し開きをすれば何とかなるだろうと信じこみ、
「殺されるから止めとけ」という家来の諫めを聞かず
駿府に向かったが、氏真の方は結局「疑わしきは
罰するが最善」という結論に至り、朝比奈泰朝という
家来を使って直親を殺させた――ということである。
つまり同書によれば、直親には今川家によって父親を
殺された過去もあるわけで、直虎による築山殿の
命乞いなど無くても、その過去だけで充分、氏真に
疑われやすい立場にあったし、実際に今川家から
離反するようになってもおかしくない男であった。
また、二冊の本が説明するところの今川家は、一度は
直親誅殺を思いとどまるぐらいであるし、ドラマと
違って最初から直親を罠にハメようと仕掛けてきた
わけではなかった。だからこそ直親は氏真の思惑に
気づくことができず、死出の旅路になるとは知らずに
駿府へ旅立ち、また直親の家来たちもそこまで強く
止めることもできず、直親が殺される結果となって
しまったと解釈できる。――やはり、ドラマほどに
今川家の悪意が明白であれば、バカ正直に死出の旅に
向かう姿は奇妙に思えるのだ。


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