槍ヶ岳~奥穂高縦走 2日目 (9/12)

2005年09月19日 | mountains
朝起きると、昨日とはうって変わった快晴!
前線が南下したらしい。
朝ごはんを食べ、身支度しているうちに皆出発してしまったらしく、土間に2人の男性のみが準備をしていた。
6:10殺生ヒュッテを出発。
槍ヶ岳ピークが今日ははっきり見える。とんがり頭も近くで見るとけっこうイガイガだ。
膝の具合はちょっと違和感ある程度で痛みはなかった。とりあえず槍ヶ岳山頂を目指す。

槍ヶ岳山頂への登山道は人で大渋滞だった。
殺生ヒュッテで泊まったのはある意味正解で、槍ヶ岳山荘に泊まっていたら確実にこの渋滞にはまっていただろう。
槍ヶ岳山荘にザックをデポし、ピークを目指した。
6:50槍ヶ岳山頂着。
殺生ヒュッテに泊まっていた人達と再会。
写真を撮ってもらいました(ありがとうございました)。
山頂からのパノラマは日本海と太平洋が同時に見え、遠くに富士山、岐阜、名古屋の街と中部地方が一望できた。
一人で山に来ているといろんな人に声をかけられる。
福岡からきた同年ぐらいの女性に「きれいな展望ですね。」などと声をかけられたら、知っている限りの知識を全力で吐き出して話をしてしまう自分が後になり恥ずかしかった。
槍ヶ岳山荘に降り、とりあえず当初の予定通り縦走することにした。膝が痛むようであれば南岳から天狗原経由で下山する予定だ。
山荘でお茶を1L購入し、出発(7:35)
飛騨乗越に高度を下げ、大喰岳までは再び登り。
さすがに3000mを超える縦走はきつそうだ。朝、体が慣れていないのも関係しているのかも。
大喰岳のピークに着く頃中年のカップルに追いつく。
話を聞くとキレットに行こうかとりあえず見に行くらしい。
しばらく一緒に歩いていると中岳の登りで大学生カップルに追いつかれた。
彼らもキレット越えをするという。
膝の状態もいいのでおいらもキレット越えすることにした。
(9:05)中岳ピーク着
(9:53)南岳ピーク着
今日はゆっくりめのいいペースである。
体力はまだまだあるし、天気もいいし、展望は申し分ない。
これぞ山歩きの醍醐味かな。
南岳小屋で大休憩
県境の尾根を歩いているから岐阜県にいるのか長野県にいるのかわからない。
大学生カップルが獅子鼻へキレットを見に行った。おいらは少し昼寝をしていた。
彼らが帰ってくると「キレットは何人も死んでいて危険なところだ。」と通りすがりの登山者に聞いてきたようで顔色が変わっていた。
遅れていたおっちゃんが追いついた。女性のほうは下山したとのこと。
キレットに備えて各々余分な水を捨てたり、荷物を整えたりし、10:35南岳小屋を出発した。
獅子鼻でキレットを眺めると、それなりにきつそうだった。それより北穂高の山頂にある小屋までの登りが凄そうだ。
なぜかおいらが先鋒で行くことに。
しかしこのときの為に赤岳ではわざわざ真教寺尾根の鎖場を登ったり降りたりを繰り返し、不帰キレットを土砂降りの雨の中で走破したので不安はあまり無かった。むしろワクワクしていた。
サイヤ人孫悟空は戦いの時、こんな気分なのかな?
南岳からの下りは特に問題なく降りることが出来た。
底部に降り、上の三人を見ると、おっちゃんと大学生カップルの彼女がかなり苦労しているようだった。
彼らを待っている間にキレット越えのシュミレーションをしていた。
先行している人達はゆっくりゆっくり歩いているようだった。
尾根の両サイドは切れ落ちており滑落=転落=死という等式が成り立つ。
皆が揃い、長谷川ピークに向かった。今からが正念場と言われているのになんだかお腹が空いてきた。
両サイドが切れ落ちてはいるものの木が生い茂っているため真下を覗くことができず、あまり恐怖がなかった。
問題の長谷川ピークの岩をまたぐところまできた。
ツアーのおばちゃんらがガイドさんにロープでくくられながら一生懸命に通過している。
渋滞のためしばしの休息。
出っ張った石に足を引掛け、ザックを下ろしてお茶を飲んだ。その足の下は何百mも何も無いが見えないので怖くはない。
渋滞が解消して、岩を降りていくと岐阜側でカメラを構えた兄ちゃんが北穂のシャッターチャンスを狙ってあぐらをかいていた。彼の隣も何百mも切れ落ちているのに。
後から続いてきたおっちゃんが最後のところで足がかりが見つからず、岩に両腕でしがみついてもがいていた。
「あと10cm・・・」
と教えたらなんとか降りることができた。気がつかなかったが、ここがネットで見た足がかりがどうしてもつかめなくて苦労したという所なのか?
大学生カップルが遅れていたのでしばらく休憩。追いついた時には彼女のほうが疲労困憊状態。人によっては相当神経衰弱するらしい。おっちゃんもかなりきていた。
A沢のコルに進むがその途中の尾根の方が高度感があるしヤセ尾根のような感じがした。
さて、いよいよ北穂への登りだ!
コレが一般登山道?という斜面を登る。後続のおっちゃんに落石を起こさないように神経を使った。
50mぐらい登っただろうか、下を見ると『まさにガケだね!』。
あれっ?大学生カップルがついてきて無いじゃん。先ほどのA沢のコルで休憩している。
まあ、彼氏が大学の山岳部だからおいらが心配することもないか。おいらだって登山ルーキーイヤーだし。
ずんずん登って行くといつの間にかおっちゃんの姿も見えなくなっていた。
「滑落していないよなぁ」と思いながらも腹が減って早く小屋まで行きたいし、待つような広い場所もない。
途中下に吸い込まれるようなほど切れ落ちた場所に出るが霧で下はどれくらいなのかよくわからない。
岩を抱えるようにして登るところもあったり、しがみついたりして身体を入れ替えるようなところもあった。
中年の方々もここを通るんだよなぁ?!
やっと頭上に山小屋が見えてきた。
「あそこに行けば飯が食えるぅ〜」
そう思っても小屋が見えてからが長い。小屋のテラスからこちらをのほほんと見ているおっさんがなんだかムカついてきた。
小屋が見えてから30分ようやく到着(13:43)
荷物も置かずに食堂へ行ったが、食堂は13:00で終わってしまったと言われて大ショック!この時、北穂高小屋での宿泊を遠慮させていただくことに決定(なんてわがままな・・・)
仕方が無いので山なのにカップヌードルのシーフードと桃缶を買って食べた。
食べ終わった頃、後続のおっちゃんが到着した。メチャメチャ疲労している。
「穂高岳山荘まで行く」と伝えると
「とてもじゃないが私は行けない」とのこと。挨拶をして別れた。
14:07北穂高小屋出発。
14:10北穂高山頂着
霧が濃くなってきた。
早く穂高岳山荘までいかなければ荒れるかもしれない。しかし岩稜線であまり急いでも怪我をするだけだ。キレットの延長のような稜線を確実に歩くことに集中した。
途中、最低コルで外人さんに追い抜かれた。彼のパワーはすさまじく、凄いスピードで消えていった。
涸沢岳の登りはいままで以上にきつく感じた。9時間近く歩いているとさすがに体力が落ちてくるようだ。北穂の登りで腕力もつかったので同様の涸沢岳の登りでは腕もかなり疲れていた。
おまけに今日一日のなかでも気を使わないといけないなと思える箇所が何回か出てきた。
何組かのパーティーを追い抜いたが皆それぞれ足取り重く疲れているように感じた。やはりここはキレット同様に危険箇所なのだ!
15:56涸沢岳ピーク着
16:20穂高岳山荘着
受付で宿泊の手続きをし、部屋に入ると先ほどの外人さんがいた。お互いの到着を称え熱い握手をし、自己紹介をした。山小屋にいるうちは彼と過ごすことになった。
売店へ行き、ビールを買い、テラスで一人で乾杯していると京都に住んでいるというドイツ人の彼が来ていろいろ話をしてくれた。
今日はさすがに神経が磨り減って夕食もあまり進まなかった。

槍ヶ岳~奥穂高縦走 1日目(9/11)

2005年09月19日 | mountains
前日から沢渡に潜み、夜明けと同時に行動し始めた。
あいにくの天気である。
5:30の上高地行きの始発バスに乗るためにザックを整理していると、
「バスの料金でいいからタクシー使って。」
とタクシー運転手のおっちゃんが声をかけてきた。
観光客のおばちゃん2名と相乗りして上高地バスターミナルへ。(しかしこの観光客2名はこんな朝早くからなにが目的なんだろう?)

今回も単独行であるので(単独行じゃなくても)上高地で登山届けを記入、今回は『大キレット』を通るので山岳保険に入り、軽い準備運動をしてから出発(6:20)。
明神、徳沢、横尾と梓川沿いに登っ・・・・・・だらだらと歩いて行く。
途中、膝が悪いから今日は槍沢までという男性や名古屋から単独行で北穂を目指す女性などと話をしながら歩いている時期もあったが、それぞれ目的地が違うため、基本的には曇り空で景色は悪く退屈なハイキングだった。
(9:45)横尾を出発してからしばらく歩いていると右膝がピキっと音をたてる感じがして急に痛くなってきた。
「しまったぁ、なだらか斜面過ぎてペースが上がってしまったのかも。」
以前から膝が悪くて登り始めから数時間はコースタイムより1.5倍の時間をかけて登っていたが、今日に限ってはほぼコースタイムどおり(休憩時間を除く)。
「今から本当の登山が始まるのに・・・」
今からペースを落としても遅いと思ったがゆっくり歩いた。
(10:55)槍沢ロッジ着。
ザックの重さを少しでも軽くしておきたかったのでここで昼食。
今日の天気ならそんなに水分を取らなくてもいいだろうと余分な水を捨てた。
(11:15)槍沢ロッジ出発。
ババ平に来る頃には雨が激しくなってきた。
「今回は槍ヶ岳だけで引き返そう・・・」
前穂高までの縦走も気分が萎えてしまって、弱気になってしまった。
今日中に槍ヶ岳山荘に行っておきたかったが無理なのが自分でもわかる。しかし、槍沢ロッジから次の山小屋までの距離が長い。ヒュッテ大槍か殺生ヒュッテまでは行かなければ。
雨は止む気配もなくあたりに音をたてて降っていた。登山道は川になり少ない土砂が流れ始めていた。
先行している人は見えても、自分より後続の人は全く見当たらない。
膝の痛みもさることながら心細くなって早く山小屋に到着したかった。高度計は2200mを示している。山小屋まではまだまだ時間がかかりそうだ。目標となる槍ヶ岳も見えず、山小屋も見えず、あと何時間登ればいいのか見当もつかなかった(おいらの弱さだねぇ)。
ある地点を過ぎると急にガレ場に出て、斜面が穏やかになった。ふと上を見るとオレンジ色の山小屋が目に飛び込んできた。
「やった!山小屋だ!!」
見えてからが長かったが、なんとか殺生ヒュッテに辿り着いた(15:20)。
玄関で今から槍ヶ岳山荘に行く人がけっこういたが、おいらにはそんな気力は無く、とにかく今日これ以上膝を痛めたら下山すら出来なくなると思い、ここで泊まることにした。
雨でビチャビチャになった合羽やザックカバー、スパッツを干し、乾燥室で汗で濡れた衣類を干し、一段落ついてから、ストーブにあたって冷えた身体を温めた。
膝は相変わらず痛かったので明日の具合しだいでは下山を迫られたが、その予定は流動的だった。
16:30になり夕食の時間が迫ってきた頃、なだれ込むように次々と宿泊の登山者が7人ほどやってきた。
皆さん上高地からやってきたらしい。
本来、上高地から来るとこの時間になるのが普通のようだ。
知らない人達とビールで乾杯し、夕食をたらふく食べたら眠たくなってしまって寝てしまった。