
昨年、裏銀座を走った時に寄った湯俣川で温泉だ、噴湯丘だと遊んでいたが、その先の風景が気になってしまったので今回の遡行のきっかけとなる。
8/30 6:00高瀬ダム~8:10晴嵐荘~8:40噴湯丘~10:35ワリモ沢~11:25赤沢~11:32東硫黄沢~12:00硫黄沢~14:10モミ沢~16:00弥助沢~2150m付近
8/31 6:10ビバーク地~7:50伊藤新道分岐点~8:00三俣山荘~10:30双六小屋~鏡平~14:50ワサビ平~16:10新穂高
七倉山荘からタクシーに乗り高瀬ダムへ。

タクシーの運ちゃんが「晴嵐荘は営業停止になってるよ。」というので街でビールを買い忘れた今回はアルコール抜きを覚悟した。
全て登山者がブナ立尾根へ向かう中、私だけ高瀬ダム沿いのトンネルへ向かう。
昨年反対側からJOGしているので新鮮さはない。晴嵐荘まではやっつけなので無心で歩く修行僧の如し。
登山道やつり橋が流され崩壊しており、アクセントありありで晴嵐荘に到着。

晴嵐荘は細々とやっておりました。水もらいました。
北鎌へ向かう捜索隊の方々と少しお話しした後で湯俣川へ向かう。
渡渉して噴湯丘方面へ。昨年はココまでにしておきましたが今年はその先が本題です。

地形図では『地獄』と記されているだけあってグツグツ煮立ったような温泉があちらこちらで湧いている。
玉子を持ってくるように考えていたのだがそんなに重要視していなかったのかこの場に来るまで忘れていた。
温泉卵は冬の野沢温泉に持ち越しです。
さて一通り地獄を堪能した後、遡行開始です。
本日は体調があまりよくないようで渡渉のたびに左右ふくらはぎが攣る。
大丈夫か?自分。
2年前に遡行した上ノ廊下よりも簡単と見越しての単独行動だったのですが、赤沢から伊藤新道へ行かれる釣り師の方と旅は道連れ状態。
ザックに献花を携えているところを見ると知り合いの方をこの湯俣川で亡くしているのでしょう。案の定一ノ沢で合掌しておられました。
しばらく抜きつ抜かれつしていたが釣り師にしてはやたら足の速い釣り師の方が前方で行き詰っていた。
「渡れない・・・岩には『引き返す勇気を 雨天の時』と書いてある」と残念がっておられたが、私は「右岸から行けそうですよ」とへつって一段上がった後で岩を抱えながら胸で水流を浴びながら渡渉した。
それを見た釣り師の方ははじめ引き返そうとしていたが、同じようにへつり一段上に上がってきた。そこでまた躊躇されていたので、ザイルを投げようかと思ったが、なんとか自分なりのルートで気合の渡渉をして来た。「私の記憶では厳しいのはここまでですよ。」と少し安堵しておられた。

唐谷出合でエネルギー補給後、河原を歩いていく。
釣り師の方が言われるように流れは先ほどのゴルジュよりもずいぶん穏やかになっている左岸にワリモ沢を分け、晴嵐荘から標高約200mをようやく稼ぐことになる。まだまだ長い1日になりそうだ。
赤沢への河原歩きは続く。その河原は谷が深いため一段また一段と高度を増す。その側壁はボロボロで水線を歩きたいのだがそこは大岩が許さない。しんどいわぁ。
ようやく赤沢出合到着。伊藤新道へ行く釣り師の方とはここでお別れ。

赤沢を過ぎると赤い側壁は急に治まってきた。ボロボロは相変わらずだが。
直ぐに東硫黄沢の出合に着く。
再び硫黄の匂いが炸裂だが、綺麗で不思議な風景である。
硫黄成分により白い河原・川底、その上を流れる水は透き通っていて崩壊地獄の中で天国を見た気分である。
徐々に傾斜が出始め、今まで段差のようだった滝もはっきりとしたそれに変わってくる。
硫黄沢に到着。時は正午。
硫黄沢には白い滝が存在するので、滝見物に行く予定であったが雨が降り出した。明日は一日雨予報決定なので今日中に源流域には行っておきたい。
悩んだ結果(大して考えてもないが)、白い滝は硫黄沢手前にあったミニチュア滝で今回はエエかと本物の白い滝をパス。その時間をこれからのお楽しみタイムにあてることにする🎣

硫黄沢を過ぎると硫黄成分もなくなり今までの川の雰囲気とはガラリと変わった。ラバーソールで来ているので同時にヌル地獄の始まりです。
1950を過ぎると再び傾斜は無くなり見所もなく退屈な川歩きとなる。
遠くに三俣蓮華岳の稜線が見えるようになるが直線で5kmぐらいか?走れば25分やな。
だらだらと釣りしながら歩いているとモミ沢出合に到着。まだ14時。
白い滝に行けたなぁと後悔しながら弥助沢へ向かう。このままのスピードでは16時頃には三俣山荘に着いてしまうのでのんびり遡行。
沢泊はしたいので優良物件を探しながら進む。弥助平2150mにちょっと狭いけどなかなかの優良物件発見。
砂地マットレス、増水50㎝ぐらいまで可。水場3秒、焚火場5秒。
早速タープを張って乾いた衣類に着替えて食糧調達。さあファイヤーするぞと意気込んだところで雨!
イワナくん、命拾いしたな。
乾燥食材をかっ込み一応腹いっぱいになったらやることもないのでもう寝る。遠くで稲光がみえる。
こんな事なら三俣山荘まで行っておけばよかったと思うが後の祭り、雨さえ降らなければ沢泊のほうが圧倒的に楽しいので仕方がない。
雷や雨音で寝ては起きてを繰り返していたが、0時頃から雨の雰囲気が変わった。
稲光は上・横・斜め下でひかり、雨も河原にいるのにシャワークライミング状態。沢の増水も30㎝増し。稜線まで1.5kmぐらいの源流で50㎝の増水はなかなかないだろうと思って安心して寝ていたが、その後もジワジワ増水しとうとう50㎝ぐらいまで増えた。
床下浸水し始めたのでさすがにシェルターをたたんでパッキングし、濡れた沢の衣類を着て、タープ以外は直ぐに持ち出せるように準備した。脱出までには至らなかったが、一晩寒い思いをした。

4時頃、雨はまだ降っていたが稲光は治まった。朝飯食べてタープ・ザイルも片づけ出発。
ガスで稜線が見えなかったので、地形図を持ちながらの遡行。それでも伊藤新道の分岐にピッタリ出た。
三俣山荘に移動し、休憩。
「昨日赤沢でお見かけしました。小屋も雷で揺れてたよ。」と小屋の人に言われて軽く挨拶。
天気図を見せてもらうが2日目の午後も雷雨の可能性がありそう。午前中行動で水晶小屋、野口五郎小屋まで行ければ3日目に高瀬ダムに降りられそうだが、稜線で雷は嫌だなぁ。竹村新道が使えれば良いが、増水時渡渉できなくて晴嵐荘で詰まるかもしれない。
3日目の天気がある程度保証されていればそれもOKだが、翌日も天気悪そう。一番安全なのは新穂高への下山。
泣く泣く新穂高へ下山を決めました。2日後の仕事を休むわけにはいかない。最近保守的になってしまったけど、仕事あっての山遊びなので仕方ない。
双六小屋に向かう巻道も風雨が強くてなかなかの寒さで厳しかった。こんなに遠かったかな?と思いながらようやく双六小屋に到着。
小屋で五目ラーメンを食べて休憩。全ての荷物が水吸って重いのだ。エネルギーを補給しなければ。
小屋の人に「橋が大雨で渡れないかもしれないから、鏡平で確認してください。」と言われ不安を煽られたが、確認も億劫だったのでそのまま鏡平をパス。登山道はもはや沢になっていたが特に問題なく通過。
案の定わさび平に向かう途中で雷雨となり、未明から激しく降り続いている雨で左俣谷は荒れ狂っておりました。
わさび平でビールに手を出し、残りの林道をダラダラ下って新穂高にやっと到着。この雨の中を登ってくる人もちらほらおられるが好きなんですね。
白い滝も観に行かなければいけないので、また遡行します。