濁泥水の岡目八目

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日本の肉食禁止は「穀物生産」に全ての労力を注ぐためで、家畜を食べさせていれば飢饉の惨禍も少しは和らいだのにと思う

2023-01-12 14:15:00 | 歴史談話


 日本では家畜の肉を食べるのを止めさせた。これは同じく米や穀物が主要作物である中国、朝鮮、東南アジアとは異なることである。その理由によく仏教の教教えが挙げられるが、これらの国だって仏教が栄えていた。もっと現実的な理由があると思う。一つには日本列島は細長く地形が複雑で、至る所で漁労が出来るということである。しかも日本近海は世界の五大漁場に数えられるほど魚介類が豊富に取れた。海彦山彦の物語で分かるように太古の昔から日本人は海の幸で暮らしていたのだろう。だから動物性タンパク質は海から手に入れられた。たとえば中国だとそうはいかない。昔の中国人の大多数は海を見ずに生涯を終えたはずである。だから動物性タンパク質は羊豚や犬鶏などで補わなければならない。牛や馬は農耕運搬に使われたが、死ねばその肉も食べただろう。中国南部では養魚場で鯉などの淡水魚が飼われて食べられていたという。日本人は食べるために家畜を飼う必要がなかった。信州などの海から離れた地域ではハチの子やザザ虫などまで食べていたから、動物性タンパク質がどれほど必要だったかと分かる。 天武四年(675年)の触れでは牛、馬、犬、鶏、猿を殺して食べるのを禁止している。牛馬は農耕のためで犬は防犯、鶏は時計がわり(そして卵を産ますため)と想像できるが猿は分からない。この禁令では鹿猪や熊などの野生動物は含まれていない。それで生活している猟師などが多くいてそんな命令は不可能だったからだろう。ただ猿は例外だった。私はその理由が理解できるドキュメンタリーを昔見たことがある。それは南米のジャングルで暮らす人々の村を訪ねた番組だった。彼らは森で捕えた猿を丸焼きにしたものを保存食として家に吊るしていたのだが、それがなんと人間の赤ん坊そっくりに見えたのだ。今でもその気味の悪さははっきり覚えている。猿は知能が高いし人間に似すぎているから殺すなと命令したのだろう。知能が高くてもクジラやイルカみたいに「魚」と判断すれば平気で食べられるけどね。淀川のマッコウクジラなんて昔の日本人ならおかげで大勢の人々が「腹いっぱい食える!」と大喜びしたんじゃないの。世の中変わるものだね。
 家畜を殺すのを禁止させたのは、米作りなどの穀物生産に人々の労力を全てつぎ込まさせるためだという説を読んだことがある。家畜を食べることができれば、生活に余裕ができてあまりあくせく働かないですむ。欧米人が日本人をワーカーホリックとか言うのも彼らから見てその働きぶりが異常なのだろう。その理由がひたすら穀物生産(特に米作り)の向上を追い求める権力者たちの意思だったろうというのである。穀物生産の増加が自分達の富の増加をもたらすのだから当然だろう。しかしそれが可能になったのは豊富な海洋資源を利用できたからである。「生類憐みの令」を出した徳川綱吉も江戸の魚市場は閉鎖させてない。やろうとしたら「上様ご乱心!」とされて消えていただろう。日本人は米と魚で生ききてきたのであって、それこそ酒と肴だよね。



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