東京都は,全国の自治体に先行して国際的な温室効果ガス排出量取引市場に参入することを発表しました。
なんて早まったことを,というのが率直な感想です。石原都知事はこの問題の重大性を認識しているのでしょうか。
IPCCの気候変動予測がすでに大きく外れており,特に人為的由来の二酸化炭素が温暖化の主因であるとすることに多くの批判が寄せられて,IPCCの論理構築が根本的に崩れ去っていることは世界的に認識されていることです。(最新の情報としては,櫻井よしこ:「地球温暖化の詐欺を暴く」月刊文藝春秋09年5月号)
このブログでは,これまでに何度もこの問題を取り上げて,人為的二酸化炭素主因説を批判してきました。
ところが,そんな世界的傾向に逆らうように,東京都は温室効果ガス排出権取引市場に参加することを表明しました。東京都の政策決定を牽引する石原都知事はなぜこの時期にこんな馬鹿馬鹿しい,百害あって一利もない取引市場に参入しようとするのでしょうか。
理由は二つ考えられます。
第一は石原都知事周辺の誰かに騙されているのではないか,ということです。昨年でしたか,石原都知事が「地球温暖化を放置していれば,地球は滅びてしまう」とテレビでコメントしたことを今でもはっきり記憶しています。私は,そのときに「ああ,石原さんは誰かに騙されている」と直感したものです。
なぜかというと,数年前まで私は東京都庁から徒歩で十分ほどの西新宿にオフィスを持っていて,西新宿のオフィス街の夏の暑さを体感していたからです。あの暑さはまともではありません。夏の日差しの中を歩くと,セメント色の歩道表面からの照り返しで,ふらふらと目眩がするほどの暑さになります。ビルの間を吹く風も熱風です。
徒歩10分ほどの東京都庁付近の暑さも同様です。石原都知事が都庁を出入りするときには,おそらく地下の駐車場から車に乗ってしまうのでしょうが,地上に出て車の窓を開ければこの暑さを体感できるはずです。西新宿のオフィス街の暑さを体感すれば,ただごとでない暑さに地球の将来を危機的なものと感じるのは当然かも知れません。
しかし,その西新宿のオフィス街を歩く私は,その暑さが地球温暖化によるものではなく,ビル街に特有のヒートアイランド現象によるものだと理解しました。
あらためてヒートアイランド現象について書く必要もないでしょうが,高層ビルが重なるように林立する東京西新宿のオフィス街は,日本におけるヒートアイランド現象の典型でしょう。
しかし,これはIPCCが主唱するような人為的二酸化炭素によるものではありません。東京湾も考慮に入れた上での,単なるオフィスビル街設計上の問題です。
石原都知事は,夏の西新宿を歩くなりして異常な暑さを体感して,その感想を側近に漏らしたところで,誰かがこれは地球温暖化によるもので,人為的二酸化炭素の排出が原因ですよ,と知恵を付けたのではないでしょうか。それが今回の全国自治体に先駆けた温室効果ガス排出権取引市場参加表明に導いたのではないでしょうか。
第二に考えられるのは,2016年のオリンピック招致を念頭に置いたポーズとしての人為的二酸化炭素排出規制です。
この考え方は理解できないことはありません。シカゴをライバルとして想定すればよく分かります。夏のオリンピック観光に来日する外国人が西新宿の暑さを体感すれば,そしてそれが東京の環境対策遅れと連想されれば,オリンピック開催国として好ましいことではありません。
それは理解できます。しかし,ひとたび温室効果ガス排出量取引市場が設定されてしまうと,それはたかだか1ヶ月足らず開催されるだけのオリンピック期間中だけのことでは済まなくなるのです。大げさにいえば,未来永劫東京都の住民と東京都にオフィスを置く企業の双肩にずしりとかかってくるのです。
しょせん,石原都知事自身が今期をもって引退してしまうのに,深く考えずに残した温室効果ガス排出量取引市場の負担は世代を超えて続くのです。
もし,この第二の考え方が当たっているのでしたら,2016年オリンピックの招致など止めてしまった方がいいでしょう。
ここは,企業,都民,そして日本国民全体が慎重に判断すべきだと考えます。