サッカーに特別の興味があるわけではありませんが,NHKは異常に頻繁にW杯関連の放送が多いようですし,他の民放も同様,さらに大新聞もW杯に紙面の多くを割いています。
テレビのチャネルを回せば,いやでもW杯に行き当たってしまう中,南アフリカのサッカー場はすべて熊ん蜂の巣じゃないかと思われるようなブンプンと云う騒音が湧き起こっています。
新聞などによると,アフリカの民族楽器ブブゼラ(Vuvuzela→Wikipedia)を観客が吹き鳴らす音だそうです。
しかしうるさいですね。情報によると,うるさすぎて選手や監督の声もお互いに聴き取れないほどだとか。また,長時間ひっきりなしに鳴らされるので,観客席でも難聴になる,とか。
W杯が終わって,いや日本勢に決着がついて,わざわざ現地に出向いた日本のサポーターとやらが帰国したら,こんどは日本各地のサッカー場で,このブブゼラが吹き鳴らされるのでしょうか。
南アフリカの広大な土地の中で吹き鳴らされるのならばいざ知らず,狭い日本の中で,しかも住宅地に近接したサッカー場で吹き鳴らされたら,周辺住民は堪ったものではないのではありませんか。
そうでなくとも,これまででさえ日本国内のサッカー場周辺の住民からは騒音に関する苦情が出ていたと云います。W杯後にブブゼラの騒音が加わったら,周辺の住民は地獄でしょう。
たまたま見たW杯会場の観客席の場面では,現地の人が耳にしっかりと耳栓をつけてからブブゼラを吹き鳴らし始めるのが,ほんの一瞬でしたが間違いなく見て取れました。
つまり,南アフリカの現地の人でさえ,ブブゼラの騒音が耳に良くないことを承知しているのです。
日本のサッカー場は,ブブゼラの吹鳴を禁止すべきでしょう。吹きたいから吹くんだ,とお調子者が主張するのは目に見えています。しかし,W杯会場の騒音を狭い日本に持ち帰っては堪りません。
もう一つ,と云うより今回のW杯騒ぎに伴う深刻な問題があります。
それは,HIV(ヒト免疫不全ウイルス―エイズ発症につながるウイルス)の持ち帰りです。
そもそもHIVは,アフリカ原産でした。それが世界中に拡散するようになったのは,アフリカの奥地に閉じ込められていたはずのサルや類人猿由来のウイルスが,奥地開発とともに広まってしまった,と云われています。エボラ出血熱と同じです。映画「アウトプレイク」です。
それはともかくとして,南アフリカにおけるHIV蔓延の現状は恐るべきもので,住民の5人に1人はHIV感染者だと云われています。
そして,HIVはヒトの体液を経由して感染します。精液はもちろん,唾液からも感染します。
想像をたくましくすれば,南アフリカで現地人が試しに吹き鳴らしたブブゼラを日本人が購入し,そのまま消毒もせずに唇をつけて吹き鳴らせば,HIVに感染することもあり得るのです。
売春婦との接触はもちろん危険ですが,感染経路はそれだけではありません。
決して南アフリカの人たちだけが悪いわけではありませんが,危険は危険です。
ところが不思議なことに,W杯が始まる前から,このことを積極的に公知させた機関はありませんでした。あったとしても,ごく地味に触れただけで,W杯狂いのNHKでさえ,公知に積極的ではありませんでした。ましてや,民放テレビでは皆無に近く,新聞雑誌もほとんど触れていません。
日本のHIV人口と,エイズ発症人口は,先進諸国の中では絶対数としては少ないのですが,その増加傾向は先進諸国中では最悪に近いのです。東南アジアも含めて,エイズ人口が頭打ちになっている国もあるというのに(タイなど),日本は依然として増加傾向,しかも指数的に増加している,と云えるのです。(→「HIV感染者及びエイズ(AIDS)患者報告数の推移」)
かつて国立の感染症関連施設の研究者を訪れたとき,研究者から「実は中学生の少女が入院しているのですよ」と囁かれたことがあります。いまや治療(多剤併用療法)が適切に行われれば,エイズは死に至る病気では無くなりつつありますが,大変な費用がかかります。南アフリカが,HIVに関しては決して安全な国ではありません。
W杯後の日本のHIV人口に変化が起きることが無いよう祈っております。