大事小事―米島勉日記

日常起きる小さな出来事は,ひょっとして大きな出来事の前兆かも知れません。小さな出来事に目を配ることが大切と思います。

エコ幻想が高齢者を熱中症で殺す―「欲しがりません,勝つまでは」世代の悲劇

2010年08月09日 21時42分37秒 | 地球環境

 高温多湿が続く今年の夏(何年ぶりの現象であっても,決して初めてではないのですが)は,熱中症の季節です(熱中症死の多発は初めてでしょう)。
すでに多数の死者が出ており,しかも年齢別としては高齢者,しかも後期高齢者といわれる70歳以上が70%以上に上る,という特性があります。加えて,後期高齢者の熱中症死が室内,それもエアコンも完備している室内で起こっているのです。
 エアコンをつけて居さえすれば決して起こらなかったろうという状況での熱中症死なのです。
 なぜ,こんなことが起こるのか。私なりに分析しました。そして一つの結論に達しました。
 熱中症死を遂げられた人たちの多くは,エアコンがありながらつけていなかった,と云うことに問題があります。
 高齢者は,エアコンについて,とくにいわゆるクーラーとしての使用についてある種の固定観念がある,ということです。第1は,高齢者に特有の「クーラーに対する特異な恐怖心」,第2はいわゆる「勿体ない」の強い良心的呵責です。
 第1の「恐怖心」は,エアコンがほとんど各戸各室に備わっていることが常識になっている現代の人たちには理解できないくらいです。後期高齢者のひとりである私自身は,理系の人間でもあるせいか,この恐怖心はほとんどないのですが,かつてはマスコミや本,雑誌などもクーラーは身体に悪い,とする傾向が強かったのです。もちろん「冷やし過ぎ」の問題なのですが。
 私自身の経験として,子どもがあせもになりやすい体質だったので,当時の先端だったクーラーを子どもの部屋に入れました。ところが,母親が来るたびにクーラーを止めさせるのです。理由は「身体に悪い」でした。そのうちに撤去せよとまで云い出しました。
 仕方なく,母が来るたびにクーラーのコンセントを引き抜き,家具の後ろに隠したものです。その分,母が帰った後であせもの治療に苦労しました。
 母も執拗で,子どもが凍え死ぬ夢を見た,などと電話で云ってきたりして,応対に困ったものでした。おとぎ話のようなこの話は事実です。ブラック・ユーモアではありません。
 もちろん当時のクーラーはコントローラーも大雑把で,エアコンとは呼ばずにクーラーと呼んでいましたが。
 しかし,母の恐怖心は,決して母ひとりの思い込みではなく,当時,かなりの人たちに共通していたものでした。
 ですから,現代の後期高齢者においても,エアコンは就眠時だけ,その後は停止するようにタイマーをセットする,などしている人が少なくないはずです。そして,寝入った後でエアコンがオフになっても,面倒だとか,無意識で,ふたたびオンにすることもなく,汗だくになったまま,最悪の場合に熱中症死に至るのです。
 第2の「勿体ない」の良心の問題は,今日の後期高齢者が,かつての太平洋戦当時に経験した「欲しがりません勝つまでは」の標語と強く結び付いています。
 この標語は,国家規模で強制されたもので,太平洋戦争当時には街のそこここにもポスターとして張られてもいました。当時の小学生(つまり現在の後期高齢者)などにはほとんど固定観念として植え込まれていたものです。潜在意識化していたとも云えます。
 IPCCが主張し始めて,京都議定書として国際条約レベルになってしまった,温室効果ガスの抑制は,今年の猛暑には無関係であることが明らかになっています。猛暑の原因とされている偏西風の蛇行,エルニーニョあるいはその後のラニーニャ現象などは,大気中の人為的二酸化炭素濃度の上昇などでは説明できません。
 そもそも最大の温室効果ガスとされている二酸化炭素が,今年,あるいは最近の世界気象に影響を与えているかも怪しくなってきています。IPCCは,今世紀末の気温上昇,という長い(半長期的?)スパンで,大気中の人為的二酸化炭素濃度の上昇を,ある種のモデルでシミュレーションして議論していたに過ぎません。しかも,現実には人為的二酸化炭素は増えていない,と主張している人たちも存在するのです。
 それなのにNHKを始めとする日本のマスコミは,「エコ,エコ」と日夜叫んでいます。異常とも云える社会現象です。日本のマスコミが異常なのかも知れません。それが証拠に,昨年末に今後の温室効果ガス抑制の世界的方針を協議するはずだったCOP15,あるいは本年12月予定のCOP16は,各国の主張が衝突して,なんら具体的な数字を決定できない見通しになっています。
 にもかかわらず日本では,朝から晩まで「エコ,エコ」とまるでエコを唱えなければ日本,いや地球全体に対して悪を為しているかのようです。
 ですから,第1の前提,つまり幼少年期を「欲しがりません勝つまでは」の環境で育った現今の後期高齢者の中には,エコをしなければそれは国家に対する犯罪とさえ思い詰める人たちがいてもおかしくないのです。
 結局,第1と第2の前提が互いに作用しあって増幅され,後期高齢者はエアコン使用を躊躇し,挙げ句の果てに熱中症死を遂げるのです。
 それでは,日本のマスコミの中でもとりわけ熱狂的にエコを叫ぶNHK自らは,現実問題として日々エコに励んでいるのでしょうか。
 NHKは,「NHK環境白書」を発行していますが,NHK社内のエコ実現度は全くと云ってよいほど進んでいないのです。数年前の同白書を調べてびっくりしました。1日のコピー用紙消費量がなんと36万枚(1日ですよ)で,しかも年々減るどころか増えているのです。電子化などで合理化する気もないようです。後期高齢者がこの数字を知ったらびっくりするでしょう。いや,想像もつかない,と云ったほうが当たっているかも知れません。
 国民に「エコ,エコ」と強制しながら,自分たちは一向にエコでないNHKの欺瞞放送を見て,それを真に受け,自らは罪悪感に苛まれてエアコン使用を控えて熱中症死を遂げる馬鹿馬鹿しさを指摘せずにはいられません。



2 コメント

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記載された記事を読んで (鈴鹿市の者です)
2010-09-12 08:40:23
はじめまして,
携帯電話のiモードで,貴方
様の記事を拝読しました。
『私が,思っている事が
書いてある』と思いま
した!
実際,私(44歳)この夏,
今現在も[エコの為,エア
コンを未使用]です。
だけど,幾ら一般人が,
[節電]しても,[最大の
エネルギー浪費者はマスコミ]で
すよね!
返信する
冷暖房装置 (Niel)
2010-10-08 14:58:00
こんにちは 

久しぶりに拝見しました。
お元気な御様子で何よりに存じます。

今年は、避暑地と言って良い山奥に住んでいる私たち家族も今年の夏は過酷でありました。 (笑
エアコン設置の相談をしたら設計士に笑い飛ばされ1台も入れていませんが、せめて寝室だけでも暖房兼用のエアコンを入れるべきだったかなど・・・1月ほど悩んだくらいです。

結局、夜は家中の天窓やを開けて寝室の窓も寝て居りました。 幸いに泥棒さんは来そうも無い場所ですし、時々キツネやタヌキが庭を徘徊するくらいのど田舎ですから可能ですが、特に都会にお住まいのお年寄りは大変でしょうね。
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体力が落ちて居るお年寄りには特に今年の夏は辛かったでしょうし、一種の社会問題かも知れません。

個人的にニュースなどを見て感じたことが幾つかありました。

一つは、家の作りが断熱ばかりのエコに走り過ぎていて昔のような自然エコとはかけ離れている方向ではないか?
具体的には書いた天窓と内部の容積、暖気も冷気も適宜に維持しながら天井裏で外気との温度交換や換気をしている昔の日本家屋に比べ、今の標準住宅は断熱材で密閉し、通気ファンを使って換気すると言うエコとは逆行。 (苦笑

もっとも、昔風の作りを目指すと単価は1.5倍以上になるという現実もありそうです。

これから家を考える方々には、最低でもメッシュや防犯格子付きの「天窓」を考慮された方が良いように思います。
特に一般には南北の方向の天窓が歩かないかで室内の昼間も含めた暑さは大分変わるようですし、多少で良いから天井高さを上げておけば気積が増えて外の温暖変化も多少吸収してくれるように思います。

次いで、室内の材料も大事だと思います。
ベニヤやボードにビニールクロスはシックハウスの原因でもあり、これが24h換気の必要性と聞いていますが、捕虫ビンの中に住んでいるようなもので、これも長期に持続するようですから健康にも良くないでしょう。 特に高温になれば厳しいと思います。
室内の仕上げを漆喰や自然木材にするだけでも蓄熱効果も温度調節も有利になると思います。 典型的なのはログハウスでしょうが、板張りでも結構効くような気がします。
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老人家庭の改造は厳しいかもしれないが、こういう指導を行政として行なうか老人家庭には多少の補助を用意するのも、クーラーに抵抗があるご老人への助けにもなるし省エネとも両立するような気がします。
天窓は無理でも軒下からのダクトと天井開口だけでもある程度の通気で部屋の過昇温は防ぐことが可能のように思えます。

ただ、深夜でも30度を超えるような環境ではこれでは間に合わないかも知れません。
やはりクーラー程度でも必用になると思いますが、一番健康に悪いのは風だと思います。
若い方でもこれで寝冷えをしたり、作業中に腰が痛くなるなど訴える場合もあるようです。

三番目は、エアコンメーカーが風が強くなく広い開口からゆっくり吹き出す構造に合わせた安い製品を出してくれるのも一つの考えと思います。
建築改造も必用でしょうが、給気ダクト+開放ダクトは事務所などでは普通ですし上手に使えば26℃程度までならそれほどの電気も食わないし、一部で使われている貯水や井戸水を使うエアコンもこれなら作れそうに思います。

人の快適性と健康/省エネと環境のバランスは、一律の考え方ではなく、時代の事情と技術に合わせて、都度工夫してゆくということも行政の責任では無いかと考えています。 建築の規準や認可を行なっていることからです。

ふざけた話しになりそうですが、特にお一人の老人や体が悪い方への、緊急宿泊設備くらい考えても良いような気もしますが・・・観光施設を作るより、普段は市民のスポーツ施設、災害や酷暑の折には内部仕切りをした仮眠所、みたいな工夫は出来ないかな? などと

長文で失礼しました。
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