大事小事―米島勉日記

日常起きる小さな出来事は,ひょっとして大きな出来事の前兆かも知れません。小さな出来事に目を配ることが大切と思います。

生物多様性の維持なんか幻想だ―京都議定書の愚を繰り返すな

2010年10月18日 23時19分39秒 | 地球環境

 いわゆるCOP10(10th Conference of the Parties)の本会議が始まりました。これまでの数日間はその準備会議で,生物資源由来の薬剤などの産物の利益配分を検討していたはずですが,はやくも暗礁に乗り上げたようです。
 準備会議の成り行きを見ていますと,懸念していたとおりの進行であり,要するにアフリカや東南アジアなどの開発途上国で採取した植物,動物,果ては病原菌などを先進国が持ち帰って薬品その他の有用物質に利用して巨額の富を得ているにも拘わらず,もとの開発途上国には見返りがない,あるいは少ないからもっと寄こせという利益の取り合いです。折り合うはずもありません。永久に平行線を辿るのではないかと懸念されます。
 日本のお人好し,あるいは無知の閣僚あるいはマスコミは,生物多様性の維持のための会議であって将来の地球を救う大事な会議だと,高らかに謳っている,もしくはそのフリをしていますが,会議の実体は上に書いたような開発途上国と先進国の利益配分という,どろどろしたものなのです。
 この構図は見たことがある,と感づかれた方も多いと思いますが,かつて1997年京都において開催された第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)で,議長国日本が主にイギリスなどのヨーロッパ各国の策謀に敗れ,ほとんど一方的に不利な温暖化ガス抑制を押しつけられて京都議定書なるものを成立させてしまった経過と酷似しているのです。
 もともと国際交渉にナイーブな日本は,議長国の面子だけを重んじて議定書成立だけを急ぐあまり,将来に重大な禍根を残す京都議定書を押しつけられてしまったのです。それなのに,NHKをはじめとするマスコミは”Save the future!”と叫んで,京都議定書の成立をはやし立てました。
今回の生物多様性維持会議でも,NHKはそっくり同じセリフ”Save the future!”を叫んで,いかにも地球の守護神のごとく振る舞っています。全く救いようがないマスコミです。
 さいわい温暖化防止の方は,もともと人為的二酸化炭素を主原因と決め付けるIPCCの作為的虚構が,当然のことながら行き詰まり,実現困難なことが昨年開催されたCOP15に至り世界的に明らかになり,IPCC内部のスキャンダルなどもあって(いわゆるClimate scandal),本年12月のCOP16をもって胡散霧消する可能性も濃くなってきました。
 CO2抑制の方は,我が日本の史上最悪の愚かな総理,鳩山由紀夫が総理就任早々の国連総会で胸を張って宣言してしまった,できもしないCO2抑制目標が,日本の生産活動,さらには経済活動の障害になってしまいましたが,COP16をもって終わりにしてくれるかも知れません。
 しかし,生物多様性維持を表向きの主たる目的にした会議の方はまだこれからです。そして,鳩山由紀夫は数ヶ月で退陣しましたが,依然としてその後継菅直人内閣は続いています。愚かなことでは鳩山由紀夫ととんとんです。どんな愚かな人間が日本に不利な議定書を,地球を救うとか勘違いして提案してしまうかも知れません。受け入れてしまうかも知れません。
 これまで1年近い民主党内閣のやりようをみていると,どこそこの国に何百億,どこそこの国に何十億と大盤振る舞いして平然としています。それらの原資はみんな国民の経済活動,国民の税金で蓄積されたものの筈です。今回の生物多様性維持会議でも,低開発国に大盤振る舞いする懸念が十分あります。
 根本的に考えれば,そもそも生物多様性など維持できるものなのでしょうか。
 CO2の時と同じように,今回も自分の顔と名前を売り込もうとしかつめらしい,あるいはこの世の終わりと云わんばかりの顔をして,生物多様性の維持が如何に大切かとマスコミで説きまわったいる連中がいます。しかし,彼らは「本気で」可能だと思っているのでしょうか。
 私は,生物多様性なんて維持できるものではない,と考えています。かつて繁栄した種が,環境の変化で絶滅してしまった例は,過去にもいくらでもありました。人類の活動だけが原因ではありませんでした。
 人類を考えてみましょう。人類の起源はアフリカにあると云われていますが,人類誕生直後しんの人類と現代の人類を比較すれば直ぐに判ります。現代では人種が多様に混淆して,すでにそのルーツを辿ることもできなくなっています。人がホモサピエンスから進化?して,俗にホモモーヴェンスと云われるように移動を繰り返すようになった現在,よほど未開の地ならばともかく人種は混淆してしまっています。そのなかでそれぞれの地域の人種を特定することの意味すら危うくなっています。
 人類という,云うなれば生物社会の最高の位置にある種ばかりでなく,たとえばアメリカ固有の貝が輸送船のバラスト水の中に取り込まれ,日本に移動し,そこに定着して日本在来種に取って代わる,といった混淆もあります。
 本来移動できないはずの植物ですら,貨物に混じってはるか彼方から日本にまで運ばれ,根を下ろして定着してしまいます。原始の時代から,鳥に食べられた果実の種は遠いところまで拡散していました。ただし,動物にしろ植物にしろ,運ばれた先の生存条件が異なればそれなりに順応が生じて,その地の固有種になることはあり得ます。しかし,それには気の遠くなるような時間が必要で,それらをいちいち分類して生物多様性などと云ってしまってよいのでしょうか。
 要するに,種の拡散は当然の現象であり,これに抗することは植物動物,いや細菌さえも不可能です。
 熱力学で創始されたエントロピーの概念は,その後情報理論に拡張され,「乱雑度」の数学的表現と見なされていますが,生物でもエントロピーは増加する一方であり,どこまでが固有種と云えるかどうかもどんどん曖昧になっていきます。コーヒーの中のミルクは,一度拡散してしまえば分離は不可能に近いのです。
 そんな中で,生物多様性などと唱えても,幻想に過ぎないのではないでしょうか。
 むしろ今回,いや今後展開される生物多様性維持の議論は,あくまでも建前であって,本音は冒頭に挙げたような遺伝子資源の分け前争いなのではありませんか。
 一例を挙げれば,エイズウイルス(HIV)はアフリカから始まったとされており,HIVウイルスを発見し,そのウイルスを根絶するための研究を進めて治療薬を開発した国が利益を得たからと云って,極端な話ですが,HIVのウイルスを提供した国が利益を寄こせ,というのもおかしな話ではありませんか。
 じつは今回の会議前にも,たとえば鳥インフルエンザもしくは新型インフルエンザのワクチン製造の元となるウイルスもしくはウイルスを保菌するニワトリを提供した側が(主として開発途上国ですが),ウイルスもしくはそれを保菌するニワトリの提供を渋る,ということが起きていたのです。
 こんな経過を見てくると今回も,生物多様性維持などと云う幻想ときれいごとだけに振り回されて,またまた京都議定書と同じ愚を繰り返すのではないかと心配するのです。
 臓器移植を受けた世界中の患者に欠かせない免疫抑制剤に「タクロリムス」(FK506)という薬剤があります。日本の藤沢薬品(現アステラス製薬)が,筑波山の土壌細菌を採取して薬剤として完成した日本独自の極めて優れた薬剤です。これは日本の土壌から採取された細菌が原料であり,日本の技術で開発された薬剤ですから他国からとやかく云われるべきものではありません。しかし,これがアフリカや東南アジアの密林から採取された土壌から得られた細菌であったとしたら,一筋縄ではいかなくなる,というのが今回の会議なのです。
 たしかにFK506は製薬会社にとってドル箱かも知れません。しかし,その利益を茨城県あるいは筑波学園都市に還元せよ,などと云い出したら収拾がつかなくなるでしょう。
 くれぐれも議長国日本と云うことに惑わされてはなりません。もしかするとこの会議も日本をターゲットにした西欧の製薬会社の陰謀かも知れません。



1 コメント

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謀略への免疫 (グリーン・スー)
2010-10-19 17:54:49
言われる通りの気がします。
日本だけがターゲットかどうかはまだ分かりませんが、お人好しだからという期待は持たれているでしょう。

話しが飛びますが、いわゆるペットの世界で話しをしてみると「トンデモナイ勘違い」と「それを利用する悪徳」がペットの世界を席巻しているように感じて、嫌気が指しています。

純血種と雑種という議論ですが、「どっちも雑種じゃんか!」と言ったら叩かれました。 (笑い

まあ少し譲歩しても「固定化種」と「非固定化種」かと思いますが、通用しない。
「血統書付き純血種」も反吐が出るし、「雑種と呼ばれるのは嫌だからミックス」だそうです。 (爆笑

せめてクロスかハイブリッドなら我慢しますが(外国人も Mongrel じゃ通じないし)、犬の世界に限っても1000以上(不確か)に分化しているし自然に淘汰されてしまった良い犬種も有ると思っています。
=======

日本人などハイブリッドの典型だと思いますし、それが良い所でもあると思います。

犬と一緒にしてはいけないかも知れませんが、固定種と呼ばれる犬種でさえクロスを繰り返しながら人為的にも生存能力や社会適合性の改善をしている中で、やむを得ず淘汰すべきものも有ると思います。

人には淘汰は許されないと思いますが、同様に動物の世界も自然の成り行きを見守る範囲に留めて欲しいものです。

異常気象が続けば、里に出て来る野生の動物、特に熊は可哀相だが始末をしないといけないことも認めるべきと思います。

熊を保護する為のテリトリーを作り、それを観光にするような愚へ日本は加担して欲しくないです。
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