大事小事―米島勉日記

日常起きる小さな出来事は,ひょっとして大きな出来事の前兆かも知れません。小さな出来事に目を配ることが大切と思います。

ほとんどサギ同然-グルコサミン飲んで階段駆け下り駆け上れるもんか

2013年10月05日 17時33分42秒 | 健康食品


もう20年以上前のことと記憶していますが、その頃にも健康食品ブームがありました。その頃まで流行していたのは高麗人参、ローヤルゼリーと云った、古典的とも云える商品が主流でしたが、突然出現したのがキチン、キトサンと云う「クスリ」でした。
それが何に効くのかははっきりしませんでしたが、ともかく健康にいいと云うだけで、ブームになったのです。
当時は、健康食品もまだ黎明期とでも云いますか、種類も少なく、流通量も決して多くはありませんでしたが、そういった状況としては、まさにブームと云える状況がキチン、キトサンに発生したのです。
はっきりしていたのは、キチン、キトサンの原料でした。エビ、カニの甲羅でした。
廃物に過ぎなかったカニやエビの甲羅が、キチン、キトサンブームのお陰で品薄となり、業者が競って手に入れようとしたのです。なかには知恵者がいて、エビ、カニの甲羅と同じゴキブリの外殻を使えばいいじゃないかと、本気で考えたのです。しかし、いくらなんでもゴキブリではイメージが悪すぎると、この話は実現はしなかったようです。
このブームは、3年もしないうちに急速にしぼんで、いまではキチン、キトサンという言葉さえ忘れ去られてしまいました。
ところが、エビ、カニの甲羅と云って気がつきませんか。
目下健康食品として大ブレーク中の「グルコサミン」の原料がエビ、カニの甲羅であることは、グルコサミン製剤を宣伝販売している各社がはっきりと謳っています。グルコサミンとキチン、キトサンは同根なのです。
医薬品どころか健康食品とも無縁だったはずのフィルムのトップメーカーまでもが、ぬけぬけとグルコサミン製剤を宣伝・販売しているのです。
彼らのCF(コマーシャル・フィルム)には、決まってリュック背負った年配者がスタスタと歩く姿です。(不思議に、みんな画面の右から左に歩いていますね。類型的も極まれり、と云ったところでしょうか。) 中には勇ましいCFもあって、旅館の仲居風の女性が、階段を駆け下りたり、駆け上がったりしています。
出演している素人らしい人たちは一様に、(グルコサミン製剤を)飲み始めてから歩くのが快適になりました、楽しいです、もう欠かせません、とおっしゃいます。
ここで大事なことをご注意申し上げます。
「健康食品では、特定の医学的効果を明瞭に謳ってはいけません。」
これは薬事法で固く禁じられています。私自身、ある樹木の葉を健康食品(健康茶)として商品化する試み(農業大学教授を中心とした試み)をお手伝いしたことがあり、厚生労働省の担当部課とも接触した経験があり、熟知しています。
世上、不心得者の後は絶たず、がんに効くとか称して、何の効果もない粉を売りつける者が毎年のように検挙されています。
それでは、グルコサミン製剤を飲めばスタスタ歩けるようになるのでしょうか。
グルコサミン製剤を製造・販売している業者の中には、グルコサミンが有効とする臨床試験報告があるとか、云っている向きもありますが、臨床試験報告なるものには真偽が不確かなものも多く、最近も世界的に有名な医薬品メーカーが、日本の大学研究者も巻き込んでのスキャンダルを起こし、問題になっているくらいで、まともな第三者機関による追試も行われない臨床試験報告も多いのです。
グルコサミン飲めば本当にスタスタ歩けるのであれば、医薬品として売ればいいではありませんか。それをしないで何の訴追も受けない健康食品に甘んじているのは、その方が気楽で都合がよいのではありませんか。
ですから、年配者が楽しそうにスタスタ歩いているCFであっても、もともとスタスタ歩ける人を使ったCFかもしれないのです。まるでサギ同然ですね。
かつてのキチン、キトサンブームがそうであったように、ここ1、2年の中に、グルコサミン・ブームも火が消えたようにこの世から無くなるものと確信しています。
繰り返しますが、こんなものが「まともに」流通してはいけないのです。
健康食品の7割程度は全くのイメージ商品だ、と云う識者もいますが、その通りでしょう。化粧品と同じで、「貴女はこれを使えばきれいになる、きれいになる」と暗示をかけられると、その気になるのと同類です。なまじ本当に白くなる商品を売り出したら白斑になった有名化粧品メーカーは訴えられています。
健康食品も、効かないものをいかにも効くように暗示をかけて売っていた方が、売る方は気楽かもしれません。何しろ「特定の医学的効果を謳ったら訴追されるのが健康食品なのです」から。
スタスタと歩けるように見せかけるのは、罪ではありませんか。
CFに参加している素人さんたちはどう考えているのでしょうか。罪悪感は全くないのでしょうか。「一生飲み続けます」なんて云わないことです。