かねてからバチャウリなる人物が率いるIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)が主張する温暖化の人為的二酸化炭素主因説には、賛否両論があり、未だにその論争は続いている、と考えてよいでしょう。
数年前には「クライメート・ゲート」なるスキャンダル騒ぎがあり、IPCCの報告書そのものに疑念が持たれたこともありました。最近は、諦めたのか、IPCCの報告書を認めたのか、馬鹿馬鹿しくなったのか分かりませんが、IPCCを巡る議論は少なくなったようでもあります。
しかし、本当にIPCCの報告書を鵜呑みにしてよいのでしょうか。私にはそうは思えません。今世紀末に、地球の平均気温が4℃上がるとか、5℃上がるとか、さらには太平洋の多くの島々が水没するとか脅かされても 素直に信じるわけにはいきません。
所詮は一つのシミュレーションの計算結果に過ぎないのではありませんか。いくら超大型のスーパー・コンピューターを使おうと、モデルはモデルです。
複雑系の研究者メラニー・ミッチェルは、その著書(「ガイドツアー 複雑系の世界」、紀伊國屋書店、2011年第1刷)で警告しています。
「(コンピューター)モデルの製作者は、得られた結果について誤解を招かないように、とりわけモデルの制限事項を明確にしておかねばならない。制限があることが明確になっていないと、結果が文字通りに受け取られて誤解を招いたり、誇大に解釈されたりする可能性が大きいからだ。」
「モデル構築の妙は、目下の問題にとって余分な現実的要素を除去するところにある。だがそのためにモデル構築者にも、その成果を利用しようとする研究者にも危険がつきまとう。モデル構築者は、実際には必要な要素を取りこぼしてしまうかもしれないし、あまりにも精巧な実験装置とあまりにも精密な計算に慣れきった研究者は、可能性を示すことが本来の目的である図式化されたモデルを、文字通りに受け取ってしまう場合がある。」
IPCCのこれまでの報告書にあるのは、未来に渉って確実に起こるべき事象ではないのです。単に、ある条件下で設定された、あるいは「意図的に」設計されたコンピューター・モデルから計算されたものに過ぎないのです。
極端な言い方をすれば、意図的に設計されたモデルに、適当な初期条件、境界条件を放り込めば、今世紀末に大洋の水位を5メートルかさ上げすることも、太平洋の島々を水没させることも、思いのままなのです。
大なり小なり何らかのシステムのシミュレーション・モデルに関わってみれば、容易に理解できることです。
前述のクライメート・ゲート スキャンダルもその類いだったようです。これは、かつてクリントン政権の副大統領だったアル・ゴアとIPCCのバチャウリが仕組んだようです。アル・ゴアの自宅は米国一の電力消費量を誇るそうで、温暖化防止どころではないようです。このことは米国内の一流新聞に記載された記事によりますが、残念ながら紙名は記憶していませんので、あしからず。
シミュレーション技術の中には、航空機のフライト・シミュレーターのように、実際に飛ばさないでも、安全にコック・ピット環境を設定して、事前に飛行状態を再現できる、パイロット養成のためには必須となった装置もあることはあります。
しかし、IPCCが先導しているような地球環境という地上最大とも云えるシミュレーション・モデルそのものが、現実的なものなのかと云う問題には、未だ多くの疑問点があるのです。
例えば、本当に世界の平均気温などと云うものが存在するのでしょうか。全地球表面積を考えると、現在地球の平均気温と称している温度も、いったいどこから割り出しているのでしょうか。むしろ、「ありっこない」と理解すべきではありませんか。陸地でさえ人跡未踏の場所は少なくありませんし、大洋の局地温度をどうやって測定できるというのでしょうか。なるほど、海洋表面ならば衛星から観測できるというかもしれませんが、本当に地球全体を小さなメッシュに分けて、その一つ一つを精密に観測したと云うのでしょうか。まず、ありっこない、と云うべきでしょう。コールド・スポット、ホット・スポットはどう処理しているのでしょう。
無理というのが本音ではありませんか。
ここ数年、日本に住む私たちが経験する気象現象は異常ではありませんか。かつて無い竜巻の多発、大雨、大雪、観測される気象現象のどれをとっても、「異常」という言葉が枕詞につくような有様です。
去年、今年の冬だけでも、観測史上初めての大雪が日本各地を襲いました。しかも、その大雪が予期せぬ地域で起こっています。
気象庁は、偏西風の蛇行が原因だとか解説していますが、現象が起こってから解説しても後知恵です。偏西風がどうして蛇行を繰り返すようになったかの説明ができていません。
それに、重要なのは、「人為的二酸化炭素」がどうして偏西風を蛇行させるのかの説明ができていません。
そもそも二酸化炭素は常温常圧で気体であり、分子運動による拡散により、火山周辺などを除けば、大気中濃度は世界中ほぼ均一と考えてよいでしょう。したがって、大気中の二酸化炭素濃度が変化したとしても、その影響は地表全体において受けるべき変化であって、日本付近だけが受けるものとはなり得ません。従って、変化もいわば「マイルド」であって、変化の速度も世紀単位の年月を必要とするでしょう。ごく短期に生起する気候変動には何らかの推進力が必要で、人為的二酸化炭素の増加などでは説明がつかないでしょう。「こじつければ」ともかくとして。
異常気象は世界各地でも多発しています。
アメリカでは、年々サイクロン発生の規模が大きくなり、また首都ワシントンで昨年、今年と大雪が降って、都市機能が麻痺しました。エジプトでさえ雪が降りました。中国では、洪水、大雪が多大な被害をもたらしています。イギリスでも、洪水が多発しています。エトセトラ、エトセトラ。
それでは、これらの異常気象を惹き起こしたのは何か。
私は、全地球的規模での大気循環のカオス的変化であると考えます。
「確率論的偶然性の世界の現象ではない、決定論的力学系における確率論的現象」です。
決定論的力学系が、ある限られた条件の下で確率論的な振る舞いを起こすことがある、と云うことです。
その典型例としてしばしば引用されるのが「ロジスティック写像」ですが、詳しくはWikipediaなどを参照してください。初期条件の微小変動が、大きな変化を生起する「バタフライ効果」、たとえば「北京で蝶が羽ばたいたら、アメリカでサイクロンが発生する」という例え話もよくされます。
ここでは、カオス現象が「決定論的力学系における確率論的現象」であることのみを強調しておきます。
偏西風の蛇行現象は、まさにカオス現象である、と考えてよいのではありませんか。カオス領域に入ってしまえば、世界的な異常気象は、長く続くのではありませんか。加速される可能性も大きいのです。
冒頭に書いたように、IPCCとは ”Climate Change” つまり「気候変動」に関する国家間パネルなのです。そこには「地球温暖化」”Global Warming” なぞという言葉はないのです。それを温暖化、温暖化と騒いでいるのは、不勉強な日本のマスコミだけかもしれません。
それを、何らかの下心があって温暖化と繰り返している、とも勘ぐられます。
この点だけは、IPCCの呼称選択は賢明だったと云えます。
温暖化が進んだから、大雪が降ったとは、どうにも感覚的になじみません。
いかなるメカニズムで、世界規模の異常気象が多発するようになったか、については今後の議論、研究が俟たれますが、この際単なる人為的二酸化炭素原因説は、捨て去るべきではありませんか。