民主党・野田総理は,その政権の末期に原子力関連の諸機関を整理統合したものとして原子力規制委員会なる機関を設立し,原子力関連の政策を一元化しようとしました。その中には,原発の立地条件の根幹に関わる,いわゆる活断層問題が含まれています。ある原発の下に活断層があれば,その原発は廃炉にしなければならないのです。これは,原発の安全上当然と云えば当然と云える立地条件ではあります。
しかし,いつごろまで遡って活断層だと云い切れるのかに大きな問題があります。
これまでは,過去15万年までとされてきたのに,新たに設立された原子力規制委員会は,なんと40万年前まで遡れと云い出したのです。
40万年前という数字にさほどの根拠があるとは思えません。結局は,それだけ古い時代まで調査しておけば良かろう,原子力規制委員会のメンバーは免責される,という姑息な責任逃れとしか思えません。
それならば,いっそのこと有史以来活動がなかったとしたらどうだと茶化したくなります。
恐らく,40万年前まで遡ったら,日本国中活断層だらけということになってしまうのではありませんか。行き着く先は,原発ゼロです。
これが民主党最期の首相・野田佳彦氏が秘めた底意なのでしょう。
一昨年の大地震に伴う津波の被害を受けた東電福島原発の放射能汚染が広範囲に及んだことに驚いた人たちの恐怖感に阿る(おもねる)ポビュリズムに迎合した民主党・野田政権が,2030年代原発ゼロにとびついたものと見られます。
新たに政権を担った自民党・安倍総理は,早々と既存原発の再稼働ばかりでなく,新設も厭わないと明言しています。
これは,高度にIT化した産業に支えられた日本が,今後もその活力を維持して行くためには不可欠な決断と云って良いでしょう。
しかし,安倍総理がどんなに原発再開を唱えてみても,原子力規制委員会が活断層ありと宣えば,多くの国民はその原発は危険だ,廃炉にしてしまえ,と反対するでしょう。いかな安倍総理でも,そうした声を無視することは出来ないでしょう。結局現存する原発の大半は,廃炉にされてしまうことになりかねません。野田前総理の30年代原発ゼロが実現してしまうのです。
ここで注目しなければならないのは,それほど重要な,日本の原発の行く末に対して,ひいては日本の国家としての存在のキャスティング・ボートを握るはずの原子力規制委でありながら,構成員に対する国会の承認を得たのは,安倍内閣に変わって数ヶ月を経た今年3月だったことです。つまり,民主党・野田前総理が仕掛けた時限爆弾とも云える規制委は,仕掛け人たる野田前総理のいわば私的機関に過ぎなかったのです。
従って,今後規制委の存在に対して批判の声が高まっても,それは「安倍総理が主導して成立したものだ」と責任転嫁されかねないのです。
読売新聞は,最近になってようやく原子力規制委の胡散臭さに気が付いたのか,社説その他で批判がましい論説を展開し始めたようです。
しかし,どこまで規制委の存在を批判できるものかどうか。
世の中には,未だに原発コワイコワイ病に取り憑かれた人たちがいます。
技術立国を目指しているはずの日本の将来に,原発は要らないとデモっている人たちが,昨日も国会前や全国にいました。
たった5名程度の規制委のメンバーに日本の将来を左右させるべきではないでしょう。