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ドラマ『刑事一代~平塚八兵衛』と死刑囚の遺言

2009-06-22 19:17:55 | ニュース

刑事一代―平塚八兵衛の昭和事件史 (新潮文庫)

佐々木 嘉信
新潮社
テレ朝の開局50周年記念ドラマスペシャル
『刑事一代~平塚八兵衛』2夜とも見ました。

ああいう緻密さ・粘り強さ・組織に迎合しない信念の強さを兼ね備えた刑事が1人いるといないのとで1国の警察力は大きく違ってしまうかとまで思わされる,渡辺謙さん渾身の演技と豪華出演陣が魅せた迫力のドラマでした。

それにしても,『東京大空襲』を昨年ドラマ化したTBSといい(あれも旧日本軍やアメリカ軍を非難する内容ということで局のスタンスに矛盾はないのかもしれませんが),今回のテレ朝といい,節目の年の記念ドラマになると思い切るというか,日本を肯定する世界を描きますね。
それこそ人権には人一倍うるさいテレ朝様が,あれだけ暴力や恫喝で容疑者を落とす八兵衛をそのままヒーローとして扱い,受刑者死亡後も冤罪の訴えが続いている帝銀事件は完全にクロとして扱い,直接登場はしませんが人権団体を悪者(邪魔もの)扱いですものね。

で,ドラマの中では帝銀事件・銀座そごう警備員殺害強盗事件・三億円事件などが
取り上げられたわけですが,印象深かったのが
1夜と2夜にまたがったドラマのメイン,
吉展ちゃん誘拐事件の容疑者・小原保のエピソードで
死刑執行に際して保が八兵衛に伝言を残したところです。
「真人間となって死んでいきます。ナスの漬物おいしゅうございました」
Wikipediaなどでは「生まれかわったときには真人間となって生まれてきます」とあり
そういう言葉が遺せた時点で既に真人間といえるだろうという
ドラマの演出なんでしょうが,それはさておき,
先日新聞で,アメリカの死刑執行は被害者遺族などの立会が認められる
公開で,死に赴く際の死刑囚の言葉も公表されている旨が伝えられていたのを思い出したんですよ。

Last words on Death Row - CNN.com
 ※CourtTVNews.comによる1986~2007年に執行された死刑囚の最期の言葉。

犯罪者や異端者は自らの手でリンチして処刑していたアメリカの精神性と違って
人の死はなるべく日常から遠ざけよう,死刑やのような穢れの行為は見えないところで誰かにやっておいてもらおうとしてきた日本では死刑の公開というのはなじまないでしょうが,死刑の執行というのは国による殺人なのですから究極的に透明性が求められる事柄なのではないでしょうか。

私が思うのは,死刑廃止・存続の論争で,論拠になるデータがなければ話にならないと思うのです。まず第一に,今現に行われている制度に問題があるのかどうかを検証するべきで,死刑を求刑されて遺族の歎願書によって死刑を回避した被告の再犯率はどうか,1年後,10年後に遺族への賠償義務を果たしている率はどのくらいなのか(さんざん遺族に泣きを入れて,一筆貰って判決が出たとたんに音信不通になる犯罪者が多いといいますが…),そして,否認のまま死刑判決を受け,執行のその日にも無実を訴える死刑囚はいないのか…。

上記リンクでも,遺族に心から侘びる者あり,
神にすべてをゆだねる者がいるかと思えば
ひいきのNFLチームへのエールだけ遺して刑場の露となる者あり。
そこには確かに命をもった人間が存在したことを思い知らされます。
「誰か(俺の裁判の)検事を殺してくれ」という恨みも気が滅入る言葉でありますが
「17年間,検察は間違った人間を追及してきた。いつか彼は
 そのことを知るだろう。私は私の死に対する復讐を誰にもしてもらおうと思わない。
 だがあなたたちには人々を殺すことをやめてほしいと願う。神のお恵みを」

なんて言葉を遺して死んだ人間がいたと知ったら…
(Thomas Martin Thompson, 1998年7月14日執行 →罪状

 ※英語ではattorneyという語は弁護士も検事も指す言葉で,
  原文にあるthe Attorney Generalも検事総長,法務長官,司法長官を
  指すそうです。文脈からここでは「検察」と訳しました。



戦後日本で執行された死刑囚は約640人,
そして現在日本国内で待機中の死刑囚は100人以上いるといいますが
死刑存続による抑止効果,死刑だからこそ更生が成される可能性
逆にあってはならない冤罪の検証,国際的に主流を占めつつある
死刑廃止論の精神など,何も考えずに現状維持を選ぶ道もあるわけですが
私たちは常に考えていかなかればならない事じゃないかなと
思う次第です。

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