小児アレルギー科医の視線

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周りに“ワクチン否定派”がいると子どもの予防接種が遅れがちに?

2017年09月08日 07時13分31秒 | 予防接種
 ワクチンを否定する情報はインパクトがあるので広まりやすく記憶に残りやすい傾向があると感じています。
 週刊誌でも、大物政治家や大物タレントのスキャンダルが掲載されると飛ぶように売れますよね。でももし、人を褒める記事ばかりだったら、たぶん売りあげは落ち込むことでしょう。
 人間なんてそんなもの。

 しかし予防接種は子どものいのちを病気から守るものですから、病期の重症度・合併症の頻度と、ワクチンの効果・副反応を正しく知り、正しく判断していただきたいものです。

 紹介する論文の中に、
「子どもの予防接種について親を教育するためには、妊娠中の関わりが重要であり、出生後まで待つべきではない」
 という文言があります。私は半分同意し半分首をひねりました。
 「出生後まで待つべきでない」ことには賛成です。
 しかし、「妊娠中の関わりが重要」では遅いと思うのです。
 おそらく妊娠中の関わりとすると、母親だけの教育になりがちで父親は蚊帳の外です。
 義務教育レベルでの感染症の知識とそれを予防するワクチンの役割を知る必要があると考えます。
 土台の基礎知識がしっかりしていれば、ワクチン反対派・否定派の扇動を耳にしても振り回されるリスクが減ると思われます。

■ 周りに“ワクチン否定派”がいると子どもの予防接種が遅れがちに?
HealthDay News:2017/09/08
 妊娠中に家族や友人から小児期のワクチン接種に関する否定的な情報を入手した女性は、子どもに予防接種をスケジュール通りに受けさせない可能性が高まることが、オークランド大学(ニュージーランド)のCameron Grant氏らの研究で分かった。なお、否定的な情報に触れたことによる影響は、その後に肯定的な情報に触れても消えないという。
 今回の研究では、2009~2010年にニュージーランドで生まれた子どもの母親約6,000人のデータを解析した。対象者は妊娠39週(中央値)の時点で、妊娠中に触れた小児期の予防接種に関する情報に関する質問票に回答した。子どもの出生後の実際のワクチン接種状況は、同国の予防接種レジストリからデータを入手した。
 その結果、妊婦の56%は予防接種に関する情報を全く入手していなかった。30%は肯定的な情報のみ、4%は否定的な情報のみを入手しており、10%は肯定的な情報と否定的な情報の両方を入手していた。情報源は「医療従事者」が3分の1を占め、「家族や友人」「メディア」はいずれも14%だった。
 医療従事者から予防接種を推奨する情報のみを入手したという女性が最も多く、否定的な情報は主に家族や友人、メディアから入手していた。ただ、「否定的な情報を入手したと答えた女性の6人に1人が情報源として医療従事者を挙げていることは気がかり」とGrant氏は話している。
 妊娠中に情報を全く入手しなかった母親は、71%が子どもにスケジュール通りに予防接種を受けさせていた。一方、否定的な情報のみを入手した場合、スケジュール通りに予防接種を受けさせる可能性は57%に低下し、肯定的な情報と否定的な情報の両方を入手した場合でも61%に留まった。なお、肯定的な情報のみを入手した場合は73%と、情報を入手しなかった場合と同程度だった。
 Grant氏は「子どもの予防接種について親を教育するためには、妊娠中の関わりが重要であり、出生後まで待つべきではない。妊婦のケアに関わる医療従事者は、子どもの出生後の予防接種に対する親の意思決定を左右する重要な役割を担っている。これは小児の予防接種率を向上させられるかどうかにもつながる問題だ」と述べている。


<原著論文>
Veerasingam P, et al. Pediatrics. 2017 Aug 18.
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