2021年12月に新型コロナ治療薬の経口薬(飲み薬)「ラゲブリオ®」が日本で認可されました。
これまでは静脈注射(点滴)薬がメインでしたので、入院治療が原則というレベルでしたが、飲み薬の登場で発熱外来の様相が一変しそうです。
さて、新型コロナ感染症の治療薬はその作用と使用される時期から大きく2種類に分けられます;
1.抗ウイルス薬(発症初期に使用)
2.抗炎症薬(こじれたときに使用)
従来は1も2も既存薬(すでに存在していた薬)を流用してきたのですが、
今回初めて新型コロナ用に開発された飲み薬が登場したわけです。
ただし、2022年1月現在、医療機関ならどこでも手に入るわけではなく、登録制になっており、国が流通を管理している状況です。
一方、治療薬として一時期話題になった免疫抗体を直接体に入れるロナプリーブ®はウイルスが変異すると効果が減弱し、オミクロン株には効果が期待できないとされています。
賞味期限(薬は使用期限?)があるのは致し方なく、抗体薬の宿命ですね。
現時点での治療薬をわかりやすくまとめた文章を見つけました;
■ モルヌピラビル承認、軽症COVID-19治療薬の選択肢は?
倉原優(近畿中央呼吸器センター)
この中で、一覧表にしたものがわかりやすいですね。
期待されるラゲブリオ®ですが、小児科医の私にとっては「18歳以上」という対象年齢が残念でなりません。
さらに、日本感染症学会が推奨(2021.12.24)する投与対象は、
① 61歳以上
② 活動性のがん(免疫抑制または高い死亡率を伴わないがんは除く)
③ 慢性腎臓病(CKD)
④ 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
⑤ 肥満(BMI 30kg/m2以上)
⑥ 重篤な心疾患(心不全、冠動脈疾患または心筋症)
⑦ 糖尿病
⑧ ダウン症
⑨ 脳神経疾患(多発性硬化症、ハンチントン病、重症筋無力症など)
⑩ コントロール不良のHIV感染症およびAIDS
⑪ 肝硬変などの重度の肝臓疾患
⑫ 臓器移植、骨髄移植、幹細胞移植後
と公表されており、陽性者に全員処方されるタミフル®のような薬ではなく、ある程度処方対象が限定されそうです。
なお、現時点では無料配布となっています。
ただ、ラゲブリオ®治験データを見ると、1000人以下の投与データしか存在せず、緊急措置的に認可された経緯が読み取れます。
つまり、何万人〜何百万人に投与した際の副作用のデータはなく、広く使われるようになって初めてわかる副作用が出てくる可能性が残っていることを認識すべきです。
他の抗ウイルス薬もこれから話題になるでしょう。
日本ではまだ未承認ですが、パクスロビド®(ニルマトレルビル・リトナビル)は対象年齢が「12歳以上」なので、こちらの承認を期待したいですね。
<参考>
■ 新型コロナウイルス感染症:関連製品の承認状況
(PMDA)
■ コロナ初の経口薬、使用上の注意点・入手法は