小児アレルギー科医の視線

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“ with コロナ時代” の医師の働き方〜“濃厚接触者”でも働ける、いや働かされる?

2022年01月13日 06時52分29秒 | 新型コロナ
従来、医師あるいは医療従事者が濃厚接触者と判定されると、
14日間の自宅待機が指示されました。

しかし感染者が増えてくると、医療従事者がどんどん“自宅待機”となり、
医療が維持できなくなる事態が発生してきました。

そこで政府は、医療者の制限緩和に踏み切りました。
ここ数日、相次いで医師の働き方に影響する政府の方針が発表されました。

一つは「自宅待機の医師でも(電話やオンラインの)診療可能」。

これは以前から気になってきたことです。
もし自分が濃厚接触者となり自宅待機になった場合、
無症状なら当然元気ですから、診療できないのは私にとっても患者さん側にとっても不幸です。
電話診療くらいできないものか・・・と考えていたので、
今回の発表は頷けるものです。

もう一つは「濃厚接触者でも毎日検査により陰性確認できれば勤務可能」です。

実は2021年8月に日本政府からの通知がありましたが、まだ一般化しているとは言いがたい状況です。
「自宅待機(外出はダメ)だけど、医療機関勤務は可能」という、ちょっと無理のある内容。
苦肉の策ですが、これは検証が必要になりそうですね。

外国でも制限緩和が進んでいます。
従来は「濃厚接触者は14日後に検査陰性なら隔離解除」だったものが、
イギリスでは「濃厚接触者は5日後に検査陰性なら隔離解除」
アメリカでは「濃厚接触者は7日後に検査陰性なら隔離解除」
と短縮してきています。

しかし、「検査陰性を条件に隔離なし」まで進んでいる国はまだ耳にしたことがありませんので。


<参考>

自宅待機中の医師による電話・オンライン診療は「可能」と明示
 厚生労働省は2022年1月7日付で、医師が自宅または宿泊療養施設などで療養・待機を行いながら電話・オンライン診療を行うことが「条件付きで可能」と明示する事務連絡を発出した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のオミクロン株の流行拡大を受けた措置。感染や感染疑い、または濃厚接触者となり、ほぼ無症状にもかかわらず自宅などで待機を強いられる医師が増えている中、懸念される医師不足に対応する。
 COVID-19流行下で特例的に認められている「電話・オンライン診療」を行う医師の所在については、現行の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」で、「医師は、必ずしも医療機関においてオンライン診療を行う必要はない」と記載している。その上で、オンライン診療を行う医師が「最低限遵守する事項」(表1)をまとめている。

表1 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」における医師の所在に関する記述(抜粋)

(1) 医師の所在

1. 考え方
 医師は、必ずしも医療機関においてオンライン診療を行う必要はないが、騒音のある状況等、患者の心身の状態に関する情報を得るのに不適切な場所でオンライン診療を行うべきではない。
 また、診療の質を確保する観点から、医療機関に居る場合と同等程度に患者の心身の状態に関する情報を得られる体制を確保しておくべきである。
 また、オンライン診療は患者の心身の状態に関する情報の伝達を行うものであり、当該情報を保護する観点から、公衆の場でオンライン診療を行うべきではない。
 なお、患者の急病急変時に適切に対応するためには、患者に対して直接の対面診療を速やかに提供できる体制を整えておく必要がある。また、責任の所在を明らかにするためにも、医師は医療機関に所属しているべきである。

2. 最低限遵守する事項
i オンライン診療を行う医師は、医療機関に所属し、その所属を明らかにしていること。
ii 患者の急病急変時に適切に対応するため、患者が速やかにアクセスできる医療機関において直接の対面診療を行える体制を整えておくこと。
iii 医師は、騒音により音声が聞き取れない、ネットワークが不安定であり動画が途切れる等、オンライン診療を行うに当たり適切な判断を害する場所でオンライン診療を行ってはならない。
iv オンライン診療を行う際は、診療録等、過去の患者の状態を把握しながら診療すること等により、医療機関に居る場合と同等程度に患者の心身の状態に関する情報を得られる体制を整えなければならない。ただし、緊急やむを得ない場合には、この限りでない。
v 第三者に患者の心身の状態に関する情報の伝わることのないよう、医師は物理的に外部から隔離される空間においてオンライン診療を行わなければならない。

 一方、平時の診療報酬における「オンライン診療料」では、算定の留意事項として「オンライン診療は、当該保険医療機関内において行う」という一文が設けられている。COVID-19流行下で行う電話・オンライン診療での扱いはこれまで明確に示されていなかったが、今回の事務連絡で、表1の「最低限遵守する事項」を守っていれば、電話・オンライン診療を医師の自宅や宿泊療養施設など、所属医療機関以外で行っても診療報酬を算定できると明示した。

□ 関連文書
自宅療養又は宿泊療養中等の医師によるオンライン診療等について(周知)
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その64)


日本医師会長“医療従事者確保のため濃厚接触者も勤務可能に”
 新型コロナの感染が急拡大する中、日本医師会の中川会長は、医療従事者を確保するため、濃厚接触者になった場合でも当日の検査で陰性になるなどの条件を満たせば、勤務できるようにすべきだという考えを示しました。
 オミクロン株の感染が拡大している沖縄県では、新型コロナウイルスに感染したり、濃厚接触者になって宿泊施設などでの14日間の待機を求められたりして、勤務できない医療従事者が増え、医療提供体制がひっ迫する事態が懸念されています。
 こうした状況を受け、日本医師会の中川会長は記者会見で「今後、全国的に同じような状況になる可能性が高い。医療提供体制のひっ迫を生じさせない、社会機能をいたずらに停滞させないように、濃厚接触者の扱いは柔軟に変化させるべきだ」と述べました。
 そのうえで中川会長は、去年8月に厚生労働省が出した通知では、医療従事者は濃厚接触者になっても、

▽2回のワクチン接種を済ませていること
▽症状がないこと
▽当日、業務を開始する前に検査を行い陰性であること

の条件を満たせば、勤務が可能になっているとして
自治体はこの通知に沿って運用すべきだという考えを示しました。


 濃厚接触医師ら、検査で勤務可 自宅療養1.6万施設対応
後藤茂之厚生労働相は12日、医療従事者の新型コロナウイルス感染や濃厚接触が相次いでいることを踏まえ、毎日の検査で陰性を確認することで濃厚接触者は勤務が可能だと示した。沖縄県では医師や看護師らの自宅待機で医療逼迫の懸念が出ていた。2021年8月に厚労省が自治体に通知していたが、改めて周知した。


コロナ感染者と濃厚接触した医療従事者、「無症状」「毎日の陰性確認」などの要件満たせばコロナ対応業務に従事可―厚労省
 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい医療提供体制が逼迫する地域では、
▼ワクチン接種済
▼無症状
▼毎日のPCR検査等での陰性確認
―などの一定の要件を満たせば「コロナ感染症患者と濃厚接触した医療従事者」でも、一定のコロナ対策業務に就くことを認める(不要不急の外出と扱わない)―。
 厚生労働省は8月13日に事務連絡「新型コロナウイルス感染症対策に従事する医療関係者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応について」を示し、こうした考えを明らかにしています(厚労省のサイトはこちら)。
 ワクチン接種済で、無症状かつ毎日のPCR検査での陰性確認などが要件
新型コロナウイルス感染症の猛威は衰えるところを知りません。4度目の緊急事態宣言は範囲も期間も拡大されており、「感染防止策の徹底」と「医療提供体制の確保」が継続した最重要施策となることは述べるまでもありません。
後者の医療提供体制の確保に関しては、各医療機関等の努力で
▼重症患者や中等症患者などを受け入れる病床の確保
▼重症患者や中等症患者などに適切に対応するための手厚い人員確保
―が進められています。しかし、東京都などでは、感染力が非常に強いデルタ株(いわゆるインド型の変異株)の猛威に追い付けず、すでに「コロナウイルス感染を確認したものの、受け入れ医療機関が見つからず(ベッドが空いておらず)、入院できない」という医療提供体制の逼迫が生じています。
 このため政府は、重症化リスク(高齢、基礎疾患保有など)のない軽症者のみならず、中等症の患者についても、健康管理体制を確保したうえで宿泊・自宅療養を求めていく方向に舵を切りつつあり、感染急拡大時には、例えば次のような対応をとることも可能である旨を示しています。「重症患者が入院できない」事態を回避することが最大の狙いです(関連記事はこちらこちら)。
◆入院医療
▽「重症患者」や「特に重症化リスクの高い者」に重点化することも可能である
▽自宅・宿泊療養者の「症状悪化」に備えて空床を確保する
◆宿泊・自宅療養
▽入院患者以外は「自宅療養を基本」とする
▽自宅療養者への健康観察を更に強化し(パルスオキシメーターの配布や往診・オンライン診療等の医療支援体制の確保)、症状悪化の際は速やかに入院できる体制を確保する(入院への移行時の搬送手段の整備なども整える)
▽家庭内感染の恐れや自宅療養ができない事情などがある場合に宿泊療養を活用する
▽健康管理体制(往診やオンライン診療など)を強化した宿泊療養施設を増強する
▽HER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム)を改善し、スマートフォンでも健康管理・IVR(自動音声応答システム)を活用した自動電話等の機能を活用した健康管理を推進する

 ところで、前者の感染拡大防止に関連して、いわゆる「濃厚接触者」に関しては、感染症法に基づいて「不要不急の外出はできる限り控え、やむを得ず移動する際にも、公共交通機関の利用を避ける」ことが求められています。
 しかし、医療提供体制が逼迫する地域では、「感染拡大防止策」を徹底したうえで、この規定を柔軟化し、「1人でも多くの医療従事者に、コロナ感染症対応などにあたってもらう」ことが重要と政府は判断。次のような要件・注意事項を満たした場合には、極めて例外的な取扱いとして「コロナ感染症対策に従事する医療従事者について、家庭内感染等により濃厚接触者となった場合でも、『コロナ感染症対策に従事することは不要不急の外出に当たらない』として外出自粛要請を行う」ことが認められます。
 各地域において、感染状況、医療提供体制の逼迫状況を踏まえて上記のような対応をとるべきか否か、選択することになります。なお「コロナ感染症対策に従事する医療従事者『以外』の関係者」における考え方は、別途示される見込みです。

【要件】
▽コロナ感染症対策に従事する医療従事者である
▽コロナワクチンを2回接種済みで、2回目の接種から14日間経過した後に、コロナ感染症患者と濃厚接触があり、濃厚接触者と認定された者である
▽無症状であり、毎日、業務前に核酸検出検査(PCR検査)または抗原定量検査(やむを得ない場合は、 抗原定性検査キット)により検査を行い陰性が確認されている
▽濃厚接触者である当該医療従事者の業務を所属の管理者が了解している

【注意事項】
▽当該医療従事者が感染源にならないよう、業務内容を確認し、基本的な感染対策を継続する(マスクの着用、手指衛生等に加え、処置時における標準予防策の徹底)
▽引き続き「不要不急の外出」はできる限り控え、通勤時の公共交通機関の利用をできる限り避ける
▽家庭内に感染者が療養している場合は、当該者との濃厚接触を避ける対策を講じる
▽当該医療機関の管理者は、当該濃厚接触者を含む関係する医療従事者の健康観察を行い、当該濃厚接触者を感染経路とするコロナ感染症患者が発生していないかの把握を行う

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