三菱重工長崎造船所で働きじん肺にり患した元労働者13人と元労働者の遺族10人の計23人が4月7日、長崎地方裁判所に三菱重工㈱の責任を求める損害賠償請求訴訟を起こしました。
春の嵐が吹き荒れるあいにくの天気でしたが、原告団・弁護団・支援の人たち56人が長崎地方裁判所前に集結し、門前集会を行いました。まず、原告団の尾崎団長が「天気の悪い中、たくさんのみなさんに来ていただきありがとうございます。じん肺を根絶するまで闘いますので、ご支援をお願いします」とあいさつしました。引き続き、横山巌弁護団長が「第1陣、第2陣、下関じん肺に続く闘いです。第3陣の原告は全員が三菱長崎造船所で働いた下請け、孫請けの労働者です。本工と同じように下請けの人たちも救済する仕組みを三菱重工に要求しましょう」と訴えました。
長崎地裁民事部に訴状を提出した後、会場をアマランスに移し提訴報告会を行いました。提訴報告会では、熊谷悟郎弁護士が「アスベストじん肺の深刻な被害」について詳細に語りました。熊谷氏は「第1陣訴訟や第2陣訴訟で解決した人の中に、その後中皮腫や肺がんにかかる人が出ている。アスベスト被害は大変恐ろしい」と述べました。
じん肺・アスベスト根絶三菱長船の会の藤原春光会長、西日本石炭じん肺長崎請求団の山口等団長がそれぞれ連帯のあいさつを述べました。
報告会では提訴に当たっての「声明」を龍原告団事務局長が読み上げました。最後に、濱口原告団副団長がお礼のあいさつを行いました。
2016年4月7日
声 明
三菱長船じん肺第3陣訴訟原告団・弁護団
三菱長崎造船じん肺患者会
全日本建設交運一般労働組合長崎県本部
1 本日、三菱長崎造船じん肺・アスベスト第3陣訴訟を、長崎地方裁判所に提起しました。原告は、三菱長崎造船所の構内で働いた下請け・孫請け会社に雇用されていた労働者本人(被害患者)15人(男性12人、女性3人)と内2名の遺族原告10人の計23人で、被告は三菱重工業株式会社です。
2 本件は、三菱長崎造船所の下請け・孫請け企業で雇用され、三菱長崎造船所で就労してきた労働者本人及び死亡した元労働者とその遺族である原告らが、三菱長崎造船所に対して、長年にわたり、安全配慮義務を怠ったまま劣悪な環境で労働者らを働かせた結果、じん肺及び合併症に罹患させ又はじん肺死に至らせたとして、損害賠償請求を行うものです。
3 今回の第3陣訴訟は、1998(平成10)年12月の原告86名の第1陣提訴(以後11名が追加提訴)、2003(平成15)年8月の原告67人の第2陣提訴に引き続くものです。第1陣訴訟は本工労働者の裁判でしたが、じん肺裁判では異例の現役労働者も含むもので、提訴から3年足らずで原告側の要求を認めた和解によって解決し、現場の粉じん対策などを改善させるという大きな役割を果たしました。
第2陣訴訟は、本工・下請け・孫請け労働者が同時に起こした裁判でしたが、区別のない救済を造船として初めて勝ち取りました。さらに、第1陣、第2陣訴訟は、三菱重工のじん肺・アスベスト企業補償制度を充実させ、多くの本工労働者が裁判を起こすことなく適用を受け、補償額は数十億円に達しています。
さらに、同じ三菱重工を被告として提起した「下関造船じん肺・アスベスト訴訟」は、会社がCT写真の画像にじん肺の影が写っていないなどと主張し行政決定されたじん肺を否定してきましたが、第2審でその主張が見事に断罪され昨年11月2日、最高裁で完全勝利が確定しました。今回の第3陣訴訟は、これら先人たちの血の滲むような努力と大きなたたかいの成果の上に起こした裁判です。
4 原告団、弁護団、原告らが所属する患者会や組合は、多くの支援者と共に、「あやまれ、つぐなえ、なくせじん肺」のスローガンのもと、被告が真摯な謝罪をし、賠償をし、二度とじん肺被害を出さないと固く約束し、下請け・孫請け労働者のじん肺救済制度確立まで一致団結してたたかいます。
以 上