建交労長崎県本部

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石綿肺労災不支給取消訴訟第7回裁判

2012年01月26日 11時17分17秒 | 活動報告
 石綿じん肺で亡くなった人の遺族が労災請求をしましたが労基署から不支給にされたため、不支給の取消を求めて宮崎地裁で裁判をおこなっています。死亡した労働者は、1948年から16年間、薬品工場で苛性ソーダ製造に従事し、石綿ばく露を受け、2006年8月10日主治医診断病名「じん肺」で死亡しました。労働者が働いた同工場では中皮腫や肺ガンによる死亡者が出ています。しかし、労基署は、労働者の死因は血管炎による「間質性肺炎」として労災を認めませんでした。審査請求、再審査請求でも棄却されたため、遺族は2010年4月15日、宮崎地方裁判所に不支給取消訴訟を起こしたのです。
2012年1月25日におこなわれた第7回裁判で、原告側は、準備書面と証拠証明書で、死亡労働者がの死因が石綿肺のすべての特徴を示していたことと石綿ばく露の実態を詳細に陳述しました。
 第1(病像は石綿肺の特徴を全て満たしている) ① 胸部エックス線写真で下肺野を中心に3型の不整形陰影が認められる。 ② 胸膜プラークについて右背部の胸郭に沿って二重の線状陰影が認められる。 ③ 國夫さんに持続性の両側肺底部の吸気性捻髪音が聴取されたことは、被告も認めている。 ④ 拘束型換気障害を主とする肺機能異常であったことは、診療記録から間違いない。 ⑤ 「顕微鏡的血管炎」と診断した国側の医師は、石綿曝露の事実を知らないまま下した診断名であり信用できない。⑥ 急性増悪を顕微鏡的血管炎の特徴のように被告は主張するが、石綿肺も急性増悪することもあり被告の主張は無意味。⑦ 被告は、石綿曝露者のわずか5%の肺生検に石綿肺以外の疾患が判断された著述を引用し、石綿肺に間質性肺炎が発生するとは限らないという主張をしているが、裏を返せば95%の石綿曝露者に間質性肺疾患があるということになる
 第2に(石綿曝露作業の重大な新事実が明らかにされた) 死亡労働者が石綿肺であることを裏付ける最も重要な石綿曝露作業について、原告側弁護団は決定的な証拠を提出しました。3人の元同僚らから詳細な石綿曝露作業を聴取できたことです。3人の証言をもとに明らかになった作業は、石綿ばく露に曝される過酷な作業です。
(作業現場) 死亡労働者が働いていた薬品工場の構造は、電解槽が設置された2階部分とその下の塩素ガスを集めるための土管が設置されていた部分からなっていました。電解槽は、工場2階部分に33台並び、列の長さは80メートルから100メートルほどで4列になっており、下の階には土管が縦横に張り巡らされていました。1本3メートルくらいの土管が何本も継ぎ足されており、いくつもの継ぎ目がありました。
(作業実態) 死亡労働者の作業は、電解槽の蓋と蓋の間の隙間の目詰め作業と土管の補修作業が主な作業でした。目地剤に石綿布と石綿リボンを使っていました。石綿布を切り裂く役割をリーダーだった死亡労働者がやっていたことや新しい目地剤だけでなく、古くなった目地剤を取り除く時にも相当な粉じん曝露があったと元同僚らは証言しています。
 一台の電解槽の作業頻度は、月に1度程度だが33台あるので、ほとんど毎日作業をしていました。土管の補修は塩素ガスが継ぎ目から漏れるので、頻繁に電解槽の床下部分に入り補修していました。土管の補修は時間がかかるので、床下に入るとなかなか出てこなかったということです。石綿布は、畳1枚ほどあり、死亡労働者はこれを小刀で切り目を入れ、それぞれに応じて使用していました。
(同じ配管修理作業者が石綿じん肺で労災認定になった)
 さらに、決定的な証拠として、死亡労働者と同じ職場で同じ配管修理作業に従事した人が石綿による健康被害で労災認定されていることが、平成23年11月30日付の地元新聞で報道されていたのです。原告側は、労基署が所有している労災認定に関するすべての書類を出すよう裁判所に求めました。これに対し、裁判所は原告の主張を認め被告に提出するよう指示しました。
(ヒアリングは虚偽の疑い) もう一つ、国側の主張した工場の担当者が平成23年8月16日に実施したとされる元同僚らに対しておこなったとされるヒアリングが、実際はおこなわれていなかったのではないかという事実も出てきました。

※裁判はいよいよ佳境を迎えます。次回の裁判は5月25日です。


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