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性病検査

2006-02-02 14:01:09 | ゲイ事情
いきなりショッキングなタイトルだけど、今日、久々に検査を受けてきました。あれってものすごく心的ストレスが溜まるプロセス。特に今回は二転三転したのでドッと疲れが出た。


Jimmyと付き合い始めてちょうど3ヶ月が過ぎ、僕から検査を受けようって先週末の別れ際、持ちかけた。3ヶ月っていうのは、HIVに感染してから抗体(anti-body)が体内に出来るまでかかると言われている期間。HIVテストはその抗体の有無を手がかりに判定する。

ウェブサイトで事前に費用を調べてみたところ、25ドルとある。現金が財布にあることを確認して、僕は待ち合わせ時間の5時半より15分も早めにクリニックに到着した。Jimmyもそれから遅れること20分くらいに到着。だけど、受付は6時からなので二人で待合室で待つことに。受付開始まで30分もあるというのに、6、7人はいただろうか。英語が分からないようなヒスパニック系の人から、黒いスーツに黒い帽子という少し不思議ないでたちの白人男性、そして時間がしばらく経つにつれて今風のカッコいい大学生っぽい人たちが3、4人、別々に入ってきた。

そして6時を待たずして受付開始。Jimmyが僕より先に並んで、「6番」と書き込まれた問診表を受け取り、僕は7番を受け取った。一度来たことのあるクリニックだったけど、前のときと質問の内容が変わっていて、かなり詳しい個人情報を記入しないといけなくなっていた。氏名、年齢、住所、電話番号はもちろんのこと、年収まで記入しないといけない。それに、その質問表とは別に、同じように氏名、住所、生年月日などを記入する用紙もついていた。僕はこっちの用紙には記入したけど、年収まで質問している方はブランクにしておいた。

そして先に受付に行って問診表を提出し、支払いを終えたJimmyが、「次、君の番だよ」と呼びにきてくれた。そそくさと僕は自分の問診表を提出し、ポケットの財布に手を伸ばして待っていた。すると受付の白人男性が、「ここに氏名、住所等が記入されてないんですけど」と嫌味っぽく言ってきた。

「あ、それって必ず記入しないといけないんですか?voluntary questionsだと思ったんですけど」とかわしてみせる僕。

「mandatoryです。記入してください」

と付き返されてしまった。しぶしぶ書き込む僕。名前は偽名で、年収も、少なめに記入しておいた。

「25ドルは払ってないですよね」と聞いてくる受付の人。

「まだです」と言ってちゃんと5ドル紙幣も用意しておいた僕は、耳をそろえてぴったり25ドルを現金で支払った。すると、

「あなたの年収に合わせて見積もりを出しますね」と続ける受付の人。え?見積もり?なんのことやら分からず、その場に立ち尽くして待つこと数秒。

「あなたの年収から、90ドルになります。90ドル払ってください」

状況が理解できず、頭のなかが蒼白。90ドルっていう大金(僕にとっては!)がどこから沸いてきたのか理解不能。嫌~な雰囲気が流れるなか、受付でうろたえる僕。「もうこんな状況に立たされるんだったら、これからセックスなんてしません、だから神様、許してくださいっっっ」といつもは神様なんて信じない身なのに、困難に立たされたときだけ神頼みになってしまうのって、僕だけじゃなく人間の本質ですよね、きっと。

とっさに僕は、

「さっき25ドル払いましたよ。ウェッブには、25ドルを支払うようにって書いてありましたけど」と切り返してみた。

「25ドルは、この受付処理費用で、検査には別途費用がかかります。これまで数年、このクリニックはすべて無料でサービスを提供してきましたけど、年収に応じて料金を請求するようになったんです」

そんなのウェッブに全然載ってなかったじゃん!やられたって感じ。その前に、90ドルもの現金をこの日、持ってきてない。それに合計115ドルも払いたくない。HIV検査だけだったら無料で提供してくれる公共系の施設がこのあたりにいくつもあるのを知っているし。でも、先に検査に進んでいるJimmyに相談を、と思い、どもりながら、

「あ、あの、す、すいませんけど、ちょっと時間をもらえますか。す、すぐ帰ってきます。少し考えたいので」

小走りにマフラーをたなびかせながらその場を去る。だけどJimmyを探し回るけど見当たらない。どこ~な~の~と心の中で叫びながらJimmyを探すけれど影も形もみあたらず。すでに検査用の個室に入ってしまっている模様。しかもそれがどの部屋なのか分からない。仕方なく、受付エリアに戻って呆然としながら数分をつぶす。その間、受付の数人が僕についてこそこそ話しているのが聞こえてくる

「彼、そこに立ったままだけど?」

「あ、彼、まだ『考えて』るんじゃない」←僕の対応をした人。

なんか、僕の対応をした受付の人ってすごく嫌味。実は、この人、僕がこのクリニックに前回初めてきたときにも嫌な体験をさせられていて僕はよく覚えていた。

ようやくJimmyを見つけ、歩み寄る。

「25ドルの他に、90ドル払えって言われたんだけど、払えないよ」

「現金もってない?ないんだったら貸してあげるけど」

「90ドルって高すぎじゃない?」

「僕の給料レベルでは140ドルだったよ。僕は払ったけど」と何食わぬ顔で言うJimmy。

「Oh my god...140ドル?べらぼうじゃん。HIVだけだったら無料で受けられるところあるじゃん。僕は90ドルなんて払えないよ。今日は検査受けられない。キャンセルしてくる」

Jimmyの顔が困惑気味に曇ってるけど、一応、「OK、わかった」と言ってくれた。

そして受付へ。さっきの人に、「すいません。90ドルっていう金額は僕に払える額じゃないので、キャンセルしてもらえますか」

「はい。わかりました」と意外にもすんなり応える受付の人。

「もうあなたのエントリーはキャンセルするよう処理にまわしてありますから」

なーんだ。僕が戻ってくるまえに既にキャンセルしてたんじゃん。

すると、受付の人、なにやらまだ書類の手配をしている。僕はキャンセルしてくださいって言ったのに。

「この番号があなたのIDになります。本名はもう使いませんから、今後はこの番号で呼ばれます。最初に、左手の検査室に入ってください」

「あ、あの。90ドル払えないんですけど」

「ええ、さきほどの受付はキャンセルしました。あなたは一度ここを立ち去って、また別の人として来院してきてるんです。そして今回、あなたの検査費用は免除されています」

一瞬、ポカンとなり、僕の頭脳が現状を一気に処理。状況をようやく飲み込めた僕は、

「Thank you so much」と言って受付を後にした。嫌味な受付の人だったけど、払えない人は追い返すんじゃなくて無料(25ドルは払ったけど)で検査を受けさせる、つまり、お金を徴収するよりも、ちゃんと性病検査を受けたい人には受けさせて、感染の有無を確認させることを優先するという方針がプロトコルとなっている模様。


Jimmyが待つ席に戻り、90ドルが免除されたことを告げほっと一息・・・つくまもなく、僕は口内の粘膜を採取して15分以内に検査結果がわかるというHIVテストを受けた。そして立て続けに血液検査、尿検査、喉の粘膜採取の検査。それが終わる頃には最初のHIV検査結果が出ていた。(以前、来たときは、尿検査の代わりに、尿道(urithra)に綿棒を突っ込まれて粘膜を採取するっていう荒技の検査があて僕は悲鳴を上げてました。それがなくなったのはとても嬉しい。でも、喉の奥に綿棒2本を突っ込まれてグリグリやられたときは、さすがに涙が出ました)



HIVの検査結果は、個室に入ってカウンセラーから1対1で聞くことになっている。手に僕のファイルを持っている30代後半風の白人男性が僕の担当。実はこのクリニックのマネジャーだと自己紹介してくれた。この人もゲイなのは確実。

個室に入ると、椅子に座ってくださいといわれた。

「コンドームをつけないでセックスするっていうのは、死ぬかもしれないリスクがあるっていうのを、もうあなたの年齢だったら理解してますね?」

なんか説教くさい言い方、と思いながら、「はい」と応えた。

「ここに検査を受けに来たことはありますか?」

「はい」

「その割にはあなたのファイルは薄いですね」←偽名を使ったから、前のファイルと統合されずに新しいファイルになってる。

「あ、かなり前のことなんで」と言ってみる。でもおそらく、偽名でテストを受けていることはバレバレ。

「あなたみたいに若い人だと、HIVにさらされてから4~6週間で抗体ができます。高齢者や病気で弱っている人だと、抗体ができるのに6ヶ月かかる場合もあります。今回、検査を受けようと思った理由は何ですか?」

「今、ボーイフレンドと付き合っているんですが、ちょうど3ヶ月たったので、お互いに検査を受けようということになって来ました」

「彼はネガティブですか?」

「ボーイフレンドも、今日、一緒に検査を受けに来てるんです。でもまだ彼の検査結果については聞いていません」

「あーそうなんですね。彼の番号は何番ですか?」

「僕より一つ前の順番だったので、もう検査結果を聞いて待合室で僕を待っています。検査結果の告知だけで済んでいるっていうことは、ネガティブだったっていうことだと思うんですけど」

「あ、そうだね。僕はここのマネジャーだから、いつも結果がポジティブの人は僕が告知とカウンセリングをすることになってるから。ところで、君の検査結果はネガティブだったよ」

「そうですか。ありがとうございます」

「ネガティブ同士だったらHIV感染はありえないけど、男は浮気をするものだっていうのを忘れないで。そして浮気してもそれを隠したりウソをついたりするものだってことも。男は所詮ブタだから」

「はい。それは重々、分かってます。それは僕と彼がこれから話し合っていくことだと思ってますから」


検査室を出てJimmyと合流し、足早に僕たちはクリニックを後にした。Jimmyの車へ向かう道すがら、

「お互いネガティブでよかったね」と、すっかり心的に疲れきったけれど、結果よければすべてよしと、僕は笑顔を作ってJimmyに話しかけた。そして僕は続けて、

「だけど、僕のカウンセラーだった人が、『男は浮気をするものだから、やっぱりセーフ・セックスが一番』っていうのをアドバイスしてくれたよ」と言ってみた。

「Jimmyは僕のことを信じてる?僕はJimmyのことを信じてもいい?」

「それは君の意思判断だよ。君が自分で考えてそれは判断すること・・・だけど、僕を信じていいよ。僕も君の事を信じてるから」

Jimmyの前置きが気に入らなかった。そんな判断の主体がどうのこうのいって責任逃れみたいなことを言う前に、「You can trust me.」って言って欲しかった。最後には言ってくれたけど、なんかその前置きの後だと信頼度が2割落ち。

だけど、この問題、つまり互いにどこまで信頼するかは、これからも僕たちの間で定期的に議論して意識あわせしていかないといけないことなんだなぁって思った。そして、『男は浮気をするものだから』というカウンセラーの言葉は、この日、僕の脳裏に深く刻み込まれた。

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