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中華街ランチ探偵団「酔華」

中華料理店の密集する横浜中華街。最近はなかなかランチに行けないのだが、少しずつ更新していきます。

横浜中華街とっておきのランチ 1日20食限定 ~華勝楼~

2008年11月09日 | 中華街(大通り)

 長いこと中華街で昼めしを食べている探偵団であるが、大通りに面した大店には滅多に入ったことがない。たま~に夜の宴会で使うことはあっても、老舗有名店でサービスランチとか、ラーメン、焼きそばなんてあるはずがないと思うから、たいていは素通りしていたのである。

 だが、ある時、これでは探偵団の名がすたると思い直し、店頭に置いてあるメニューブックを読書するようになった。と同時に、インフォメーション担当の方にお話を伺ったりして、我々のような下々の者でも食べられる一品があることを知った。

 そして食べてきたのが、萬珍樓の焼きそばであり、聘珍樓のお粥華正樓新館のチャーハンだった。
 しかし、昼時に入ったことのない店がまだ2軒ある。「華正樓本館」と「華勝楼」だ。この両店、どちらも“かしょうろう”と読めることから、よく混同されているが、「華正楼」は「かせいろう」。「華勝楼」は「かしょうろう」と読む。
 しかも、かつて「華勝楼」のあった場所に、現在は「華正楼新館」が建っているので、話が余計にややこしくなるのだ。

 昼時にまだ入ったことのない両店。そのうち、「華正樓本館」はどうも“個室&コース料理”または“宴会”しか用意されていない様子。「華勝楼」は1日20食限定のランチがあることは確認済み。ただし料金は1700円である。

 ところで、最近はセットとかミニコースなどといって、1000円前後の中華料理が昼時にも出ている。
 何をもってランチと言うかは、いろいろと意見の分かれるところであるが、わが探偵団としては、“1年じゅうメニューが変わらず、昼から夜まで提供しているセットやミニコース”などは中華街ランチには含めない。
 探偵団が認めるランチというのは、時間限定(たいていの場合は11:30~14:00)で提供される《料理+ライス+スープ+漬物+α》の組み合わせだ。
 そういう意味では「華勝楼」のランチは、中華街で最も値段の高い部類に属していると思う。

 ということで食べてきました、「華勝楼」の1日20食限定ランチ!

(注:写真右側に写っている灰色の細長いものはカメラの紐)
 この店の前を通過するときに、いつも眺めていたドア。
 大きなガラスのはめ込まれた観音開きのドア。
 ガラス越しに見える紺色の制服を着たレトロでシックな従業員。
 
 そのドアを開ける日が、とうとうやってきたのだ。(夜の宴会では2回ほど使ったことがあるけど、昼間入るのは初めて)
 ステップに近づくと、すかさずドアがオープン!
 でも、ここは自動ドアではない。紺色制服の女性が手で開けてくれたのだった。宮廷料理で有名なお店だけのことはある。大切なお客様を心をこめて迎え入れるため、あえて自動ドアは採用していないのだ。

 内部はピカピカに磨き上げられてる。塵ひとつない。このままヘッドスライディングしたら、裏口まで滑っていけそうなほどツルツル。綺麗で清潔な感じがする。
 まるで学校の教室が並んでいるような造り。すべて個室だそうだ。もちろん個室料金頂戴なんて無粋なことは言わない。
 この日案内されたのは「雪の間」。


 案内されると、そこは8畳ほどのスペースで、ゆったりとくつろげる空間だった。もちろん他人のタバコを気にする必要もない。


 中央には円卓。イスが4席。部屋の隅にあと4脚イスが置いてあったので、8人までは対応できる円卓なのだろう。
 ここまでアテンドしてくれた女性が扉を閉めて戻っていった。これを独り占めにする。
 そして、ここから室内の観察だ。

 隣室を隔てているものは壁ではなく、簡易な間仕切り。よく会議室などで見かけるスライド式のものだ。しかし、会議室と違ってそれなりの壁紙が貼ってあって、一応デザイン的には統一されている。
 間仕切りの上には欄間がある。したがって隣の声が“まる聞こえ”。某政党の某政治家には使いにくい構造となっている。


 窓辺に置かれた石の飾り物。よく分からないが、いい石なのだろうね。


 釘を1本も使っていないという。宮大工が造った建物。当然、木造建築だ。
 格天井は銭湯の脱衣場のよう。なかなか美しい。


 室内を観察していると、和服のおばさんがお茶のポットを持ってきた。土瓶も茶碗も店の銘が入っている特注品だ。
 裏を見たら「WAKABAYASHI」の文字が入っていた。伊勢佐木町の若林洋食器店の製造だろうかね。こんなので飲むと、お茶までワンランク上のような気がしてくる。


 本日の20食限定ランチが到着。1700円もするのだから、もっと仰々しく出てくるのかと思っていたら、ずいぶんあっけなく登場してきた。
 できることならば、大名行列のごとく和服の店員さんが一品ずつ持って、しずしずと入って来てほしかった。

 「下にぃ~、下にぃ~っ! 頭が高い! 控えおろうっ!」
 「この料理をなんと心得ておるのかっ。奴さんではない。ましてや冷奴でもないっ。おそれ多くも蟹肉入りフカひれスープ様でござるぞ」
 「次に控えしは、筆頭家老の車海老様だっ!」
 「その右におられるのが、将軍様であらせるヒレ肉の黒酢すぶた様である」

 なーんて感じで次々と運ばれてくれば嬉しかったのだが、現実は杏仁豆腐も含めた“一気出し”。そこらへんの小さな中華料理店のランチの出し方と変わりない。
 

 蟹肉入りフカひれスープ。この種のスープを頻繁に飲んでいるわけではないでよく分からないが、ごく普通に美味しいのではないかな。


 車海老のスパイシー風味。エビチリとかエビマヨなんかより、はるかにウマイ。
 海老にまぶしてある粉がスパイス類。中心はパン粉だろうか、何かの風味をつけて炒め、それを乾燥させているようだ。そのほかにさまざまなスパイスが混じっている。これをフリカケ代わりにしても、ご飯1杯は十分にいける。
 もちろん車海老もウマイ。これが5匹も入っていた。芝海老とは違って味が濃くて深みがある。


 贅沢にもヒレ肉と黒酢を使った酢豚である。普通の酢豚だと玉ネギ、ニンジン、ピーマンなどで増量しているが、ここのはヒレ肉で直球勝負。ピーマン、白髪ネギなどは単なるお飾りに過ぎない。

 肉を箸で摘まみ、しげしげと眺める。コロモまみれの安い酢豚と違い、薄皮をまとったトランジスタグラマーといった風情。この衣の下に隠されているお肉はどんなだろうか、などといった妄想をかきたてるのは、品格ある個室でのお食事には相応しくない。

 そして小振りだからといって、まるごと一切れを口中に放り込むのもやめようね。肉に歯を当てたらそっと噛みおろす。あまりの柔らかさに、下の歯はサックリと突き進み、あっという間に上の歯にぶち当たる。
 噛み切った肉の断面を見ると、さすが良いヒレ肉を使用しているだけあって、綺麗で清純な断層が観察された。
  
 噛み取った肉片を大事に吟味しながらモグモグする。適度なコロモが混じってウマイ。さらに香ばしい甘辛の黒酢がまつわりつくから、これはもう口中酒池肉林。ご飯がまた美味しいので、どんどん進んでしまう。

 写真の中に、お肉とは違う黄色い塊が見えるでしょ。
 これは、なんとサツマイモ! ホクホクで甘くて濃厚なお味が、ヒレ肉の酢豚にピッタリと合うのだ。

 上海路の「××」では酢豚に大根を大量投入していたが、あれとは比較にならない。大根なんて、それ自体にたいして味はない。だから「おでん」とか、「ブリ大根」や「豚バラ肉と大根の煮込み」のように、他者の旨みをその体内に取り込んで、美味しさを偽装している怪しい根菜なのだ。

 それに比べてサツマイモはえらい! それ自体に旨みがある。焼き芋などにすると、そのホコホコした甘みが、ときには栗以上に美味しいこともある。だから江戸時代には栗(九里)に引っ掛けて、サツマイモのことを“八里半”とも言った。栗より美味しいのに、半歩下がって“八里半”と称する奥ゆかしさが、大衆の支持を得たのである。

 しかも大根のように色白ではなく、赤茶けた汚い色をしている。大根の場合、泥まみれになっていても流水で洗えば、綺麗なおみ足が現れるのに対し、サツマイモは洗っても洗っても、あの冴えない色は落ちない。そんなところが、大衆受けする根菜の代表となった所以だと思う。
 それにしては最近、“九里四里(栗より)うまい十三里”なんてキャッチコピーを掲げて、ちょっと傲慢な態度が現れてきたかもしれないが…

 いけない、話が横にそれてしまった。ここは「サツマイモ論」を語る記事ではなかった。元に戻そう。

 ヒレ肉だらけの酢豚の合間に食べるサツマイモ。これがまた美味しいのだ。
 タレに絡められたサツマイモと言えば、真っ先に思い出すのが大学芋。そんなところに使われてる地味なヤツが、「華勝楼」なんていう晴れ舞台に、しかもヒレ肉などという豪華役者と競演しているのだ。これが不味かろうはずがない。


 食後のデザート。ここでは「マンゴープリン」か「ふわふわ杏仁豆腐」か、どちらかひとつを選べる。
 これは散々迷った。マンゴープリンも捨てがたいし、フワフワにも心惹かれるものがあるし…
 できれば「両方!」と言いたいところだったが、1分ほど迷ったすえ杏仁豆腐を指名する。

ひと口頬張ると、
 やっぱりウマイわぁ…

 普通の店の普通のランチに付く普通の杏仁豆腐は、ひし形の寒天状のものに缶詰のカットフルーツが入っていて、強い香りがすることが多いのだが、コレはシンプルななかに旨みのあるデザートだった。
 一気に食べるのがもったいないくらい。幸い、ここは個室。誰にも見られていないので、ふるふる状態をチビチビとすくって食べていたら、これひとつ食べきるのに7分もかかってしまった。


 いつものランチだと、早ければ15分、遅くとも30分で食べ終えるのだが、今回のランチは65分間という贅沢なひと時を過ごすことができた。
 しかも個室だ。誰の眼も気にすることなく食事ができるし、タバコの煙とも無煙、いや無縁。
 テーブルの近くをスタッフがウロウロすることもない。こちらが必要なときには壁の呼び鈴を押せばいいのだ。
 
 まあ、とにかく最高のランチだった。近頃は1000円台で食べ放題なんかやっている店があるけれども、あれを食べるんだったら、ほぼ同じ値段で「華勝楼」の限定ランチをいただいたほうがいい。
 ランチとしては1700円という高い価格設定であるが、あの宮大工が作った素晴らしい建物拝観料が300円、手動ドアの開け賃100円、個室で誰にも見られない代300円が含まれていると考えたら、格安のランチだと思う。

 この日、食事を終えて外に出たのは午後1時15分。1日20食限定ランチとあって、早くも完売であった。2時までのサービスとはいえ、やはりこれを食べるんだったら12時過ぎには入店しないとダメかもしれない。
 
 あっ、それから、食事に1時間以上かかるから、昼休みが12時から13時なんていう会社の人はやめたほうがいいよ。焦って食べたりして、せっかくの料理や雰囲気が台無しになるから。


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23 コメント

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うらやましい (とも2)
2008-11-09 09:28:18
素晴らしいランチレポです!
思わず「ワシも逝きたい」と思ってしまいました(が、逝けないだろうなぁ…)。
素敵な時間が過ごせてよかったですね♪

ところで、そろそろB級グルメの食べ過ぎの続きも読みたいなぁ(笑)
返信する
個室独り占め (本須)
2008-11-09 09:58:46
とうとう行かれましたか。

個室独り占めのランチはなかなか良いですよね。
ゆったりのんびりとランチが楽しめます。

間仕切りの防音は確かに悪いです。
何年か前に私が食べた時には隣が孫連れの老夫婦でしたが、
結構声が響いてきました。

今の杏仁豆腐はふるふるタイプのようですが、
昔食べた時は昔ながらの菱形+フルーツタイプでした。
老舗も時代に合わせて流行りを取り入れたりしているんですね。
返信する
この廊下…、 (seikoMTD)
2008-11-09 13:22:15
華勝楼の中ってこんなにゴージャスだったのですね。

ピッカピカの廊下を拝見し、何故か金沢八景駅前、琵琶島神社脇の「料亭 千代本」を思い出しました。
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食べすぎ (管理人)
2008-11-09 16:04:05
◇とも2さん
そうでしたよね。
「食べ過ぎに注意」シリーズ。
出します。
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個室 (管理人)
2008-11-09 16:09:31
◇本須さん
個室独り占めのランチは最高です。
いいですねぇ。
返信する
平潟湾 (管理人)
2008-11-09 16:12:41
◇seikoMTDさん
あの廊下は土足のままでOKなのです。
申し訳ないですよね。

ところで、琵琶島神社脇の「料亭 千代本」、入ったことはありませんが、昔はよく、あのあたりを徘徊しました。
返信する
高価なランチ (金魚)
2008-11-09 21:29:59
こんにちは

うーん、華勝楼は一度行ったことがありますが、やっぱりちょっと入りにくいですね。
高価なランチと言えば、均昌閣の選べるランチが好きです。水龍宮館があった頃は個室で一人で食べたこともあったし。
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Unknown (BDR529)
2008-11-10 14:39:48
凄い!
私は空間のプレッシャーで潰されてしまいそうです。
このコースは1通りだけですから、2人で行っても
意味が無いのですね。やはり1人で行くのが正解。
なのですね。
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Unknown (つちころり)
2008-11-10 22:08:27
名店だけに、料理は丁寧そうですね。
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Unknown (アリーマ)
2008-11-11 01:31:59
ランチもおいしそうだし、店内もステキだし・・・

でも、廊下撮影時の「カメラの紐」がどうやってあのように画面に入り込んだのか・・・という謎で頭がいっぱいのワタシです。

真下に向いた廊下に垂直に立って・・・?
マジックハウス・・・?
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