その一方で、興行に絶対的な重きを置くハリウッドではスター主義が貫かれいました。
ダグラス・フェアバンクスやルドルフ・ヴァレンチノ主演する活劇作品は大ヒットし映画産業は活性していきました。
そんな中でもアメリカにおいても映画芸術は芽生えます。
代表は徹底したリアリズム手法の完全主義者エリッヒ・フォン・シュトロハイムでした。
彼は『愚かなる妻(1921)』『グリード'1924)』『結婚行進曲(1928)』などの傑作を残したものの、完全主義なゆえの莫大な製作費が原因で制作会社と衝突を繰り返しました。
その結果、ハリウッドは芸術よりも実益を求め、シュトロハイムは敗北します。
エリッヒ・フォン・シュトロハイム監督『愚かなる妻』
またハリウッドでも芸術で名声を得たヨーロッパの作家を招き入れるなどの動きもありました。
アメリカにおけるヨーロッパ映画界取つぶし作戦ともいわれ、優秀な欧州映画人がドルを積まれて続々とハリウッドに吸い寄せられました。
しかし、商業主義でスター主義のアメリカでは、映画の実権を握る製作者や俳優とのトラブルが絶えず、
作家の個性は押しつぶされ、芸術の芽は摘み取られていきました。
そんな中でも、商業主義と妥協しながらも芸術の香りを感じさせたジョセフ・フォン・スタンバーグやエルンスト・ルビッチなどは例外中の例外でしょう。
この作戦の最大の成果はグレタ・ガルボとマレーネ・ディートリッヒというドル箱スターを手に入れたことかもしれません。