『12月11日』はアルゼンチン・タンゴの発展に偉大な功績を残したカルロス・ガルデルとフリオ・デ・カロの
誕生日であることからアルゼンチンではこの日を国民的記念日である “タンゴの日” とされています。
【誕生日】
☆カルロス・ガルデル Carlos Gardel (1890.12.11~1935.6.24)
今なおアルゼンチンの国民的英雄「タンゴの神様」としてあがめられている伝説のタンゴ歌手です。
未婚の母の子としてフランスのトゥールーズに生まれ、当時は道徳的に許されなかったこともあり、一年後に社会的不名誉から
逃れるためにアルゼンチンに移ったといわれています(諸説あり)。少年時代はブエノスアイレスの下町で育ち、貧しい家計を
支えるために靴みがきなどをしながら歌を学び、1907年頃から吟遊詩人として唄いはじめました。1911年にホセ・ラサーノと
デュオを組んで成功を収め、1917年に『わが悲しみの夜』をエスメラルダ劇場で初演してタンゴ歌曲の始まりをもたらしました。
ガルデルの出現はタンゴ・カンシオンの大革命となり、作詞家や作曲家もすぐれた楽曲を競いあい、エポカ・デ・オロ=黄金時代の
到来となりました。
以後はオデオン・レコードのドル箱歌手として2000曲を超える録音を残し、秀でた美声でタンゴの地位を飛躍的に高め、欧米は
もとより世界にタンゴを広めました。しかし、映画や歌に絶頂期だった1935年、公演先のコロンビア・ボゴタ市のメデリン空港で
飛行機事故に遭遇し不帰の人となってしまいました。
【主要歌唱曲】
『アディオス・ムチャーチョス』Adios Muchachos【YOUTUBEより】
『ジーラ・ジーラ』Yira, Yira 視聴
『今宵われ酔いしれて』Esta Noche Me Emborracho Letra 視聴
『カミニート』Caminito 視聴
『ア・メディア・ルス』A media luz 視聴
『マドレセルヴァ』Madreselva 視聴
『ソーロ・グリス』Zorro gris 視聴
『ラ・クンパルシータ』La Cumparsita【YOUTUBEより】
『交わす盃』Tomo y obligo 視聴
『わが悲しみの夜』Mi noche triste 視聴
『タコネアンド』Taconeando 視聴
『マノ・ア・マノ』Mano a Mano【YOUTUBEより】
☆フリオ・デ・カロ Julio De Caro (1899.12.11~1980.3.11)
枯れた演奏スタイルで、アルゼンチン・タンゴの草創期に編曲という概念を定着させたタンゴ界の功労者です。
音楽教師の父親という音楽一家にブエノスアイレスで生まれました。最初はピアノを習っていましたがヴァィオリンに転向し、
1916年にエドアルド・アローラスのオルケスタやオスワルド・フレセドなどの楽団を経てファン・カルロス・コビアンの楽団に
入り、後にコビアンの楽団を引き継ぐ形で1922年にフリオ・デ・カロ六重奏団を立ち上げました。この楽団にはデ・カロ三兄弟の
他ペドロ・マフィア、ペドロ・ラウレンス、シリアコ・オルティスなど屈指のテクニシャンが在籍し、既存曲に大胆なアレンジを
加えることによって一世を風靡しタンゴの世界に編曲という概念を定着させました。これにより場末のダンス音楽であったタンゴに
それぞれの楽団が個性的なアレンジを施す演奏スタイルが樹立され、一つの楽譜をコピー演奏するのではなく、それをいかなる
素材でいかなる味付けで提供するかがマエストロの腕の見せどころ、そして聞かせどころになりました。そういった意味でタンゴ
音楽の特性を確立させた功労者であるといわれています。また、当時の録音技術ではヴァイオリンの音色は拡散されてまともに
捕捉できなかったアコースティック録音の時代にシュトロー・ヴァイオリン(コルネット・ヴァイオリン)で録音したことでも彼の
功績は高く評価されました。
また、リズムを抑えて高度な演奏技術でアレンジを展開するスタイルは門下生であったペドロ・マフィア、ペドロ・ラウレンス
などがそのスタイルを受け継いだことで「デカリシモ(デ・カロ風な演奏)」と呼ばれ、さらにアニバル・トロイロやオスヴァルド・
プグリエーセの枯れた演奏へとつながりを見せてその精神がタンゴ表現の原点として脈々と次世代に展開されていきました。
【主要演奏曲】
『バンドネオンの嘆き』Quejas de Bandoneón【YOUTUBEより】
『チケ』Chiqué 視聴
『マーラ・フンタ』Mala Junta 視聴
『ラ・クンパルシータ』La Cumparsita 視聴
『デレーチョ・ヴィエフォ』Derecho Viejo【YOUTUBEより】
『マイポ』Maipo 視聴
『ノスタルヒアス』Nostalgias 視聴
『機関車』El Espiante 視聴
『エル・アランケ』El Arranque 視聴
『ジーラ・ジーラ』Yira Yira 視聴
『木曜日』Jueves【YOUTUBEより】
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ちなみに、カルロス・ガルデル主演でわが国に唯一輸入された映画『ベノスアイレスの灯』Las Luces de Buenos Aires
では、映画の音楽担当に同じ誕生日のフリオ・デ・カロが起用されています。これも何かの縁なのかもしれませんね。
↓映画音楽史(319) 『ベノスアイレスの灯』
https://blog.goo.ne.jp/chochi4510/e/b7a8dac264eba35e659990dc25e7ae1b