本日は晴天なり

誰しも人生「毎日が晴天なり」とは行かないものです。「本日は晴天なり。明日はわからないけどね」という気持ちを込めました。

名もなき小さな花を愛す

2006年05月07日 22時33分48秒 | 洋画・海外ドラマ
昨日「ヴェラ・ドレイク」というイギリス映画のDVDを見ました。
久しぶりにビデオでも見るか、と思ってうちのパートナー殿と家から徒歩10分のところにあるTSUTAYAに出かけたのが先週の日曜日。そして何を見ようかと考えながらビデオ/DVDの陳列棚の間をウロウロとしばらく彷徨ったあげく見つけたのがこれであります。その映画の監督である、マイク・リーの前作「秘密と嘘」があまりに良い映画だったので、この監督の映画をまた見たいと思ったのであります。なぜそれが1週間もして返却日ギリギリに見ることになったかと言うと、うちのパートナー殿はどうもDVDケースのカバー写真のなにやら地味な雰囲気に、暗そうな映画のようだと見当をつけたようであり、一緒に見るのを渋っていたからであります。

それがどんな話かというと....今回の映画の舞台は第二次世界大戦後間もないイギリス。
主人公はあまり裕福ではない家庭の中年の主婦、ヴェラ・ドレイク。彼女は若くもないし、美人でもなければ頭がいいというわけでもありません。だけど働き者で心が優しい。夫と成人した息子、娘と共にアパートの一室に4人で暮らしていますが、貧しいながらも家族は仲良く幸せに暮らしています。
ヴェラは昼間は家政婦をして働きながら、年老いた気難しい母親の家に毎日通って世話をしたり、近所に一人暮らしの気の良い男性がいれば、夕食に誘ってあげたりと、いつも他人への気配りを忘れない人です。
しかし、彼女には家族にも話していない秘密がありました。
彼女は当時妊娠中絶が違法だったイギリスで、望まない妊娠をした女性を助けるために堕胎を手伝っていたのです。
ある日、堕胎を手伝った女性が体調が悪くなって病院に運ばれたことから、医師の告発によって彼女の存在が明らかになってしまいます。
警察による捜査が行われ、とうとう彼女の家に警察が来てしまうのです....

といったあらすじです。
大変重いテーマですが、見る側が深刻な淵に沈む間もなく淡々とお話は進んで行きます。しかし、ところどころに制作者の価値観が押し付けがましくなく散りばめられます。

例えば、ヴェラの夫とその弟の会話。ヴェラの夫も気の良い男性でヴェラを非常に愛しています。夫の弟も気の良い人で、親を亡くしてから自分の親代わりをしてくれた兄とヴェラを心から慕っています。彼は車の修理会社を経営し、若くて美人で派手好きな奥さんと贅沢に暮らしています。その二人の会話。「兄さんはいい奥さんをもらったよね。彼女の心はまるでゴールドのようだ」すると兄は言います。「ゴールド?いいや、彼女はダイヤモンドだよ」

この監督の作品は、非常に平凡で地味な生活の中で、優しい心を持って暮らしている人たちをいつも愛情を持って描いていて、感心させられます。
派手で目立つことばかりが優先されてしまう現代の世の中で、ヴェラ・ドレイクのように、お金にも才能にも名誉にも美しさにも縁がなくても、美しい心を持って一生懸命生きている人を素晴らしいと思って映画の主人公にする、というのはなかなかできることではないでしょう。

でも、こんな視点の映画が、もっと増えてくれたらいいなと思います。

ちなみにパートナー殿のこの映画を見終わってのコメントは、「え?これで終わりなの?こんなのやりきれない~~!!!」でありました。
結末が気になる方はどうぞ本編をご覧下さい。

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2 コメント

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ものすごく強い返球 (壱独舎)
2006-05-08 23:23:18
いつも読んでます。歌に力いれてるとか。多才ですね。執筆、とてもいいですよ。歌もいいんだろうけど、文才感じるけどなあ。すごく読ませてくれるなあと思います。あなたの優しい人柄、心で考えてるいろんなこと、解説がすごくわかりやすくてこちらも入っていけます。それからあなたが敬意を評している「パートナー殿」の存在が見え隠れして微笑ましい。いい意味でパートナー殿あってこそって感じがします。これからも

隠れて読者させてくださいね。
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力強い返球に感謝! (ちえ蔵)
2006-05-09 10:18:45
壱独舎さま



力強い返球、どうもありがとうございました。きちんと読んで下さっていて、コメントも丁寧に書いてくださって、とっても感激です。嬉しさのあまり部屋の中で飛び跳ねてしまいました!

よし、これからも頑張って書いていこう!という気になりました。

どうもありがとう!!

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