15世紀中頃に描かれたピエロ・デラ・フランチェスカの「キリスト復活」はイタリア・トスカーナ州サンセポルクロに在るフレスコ画です。最初に画かれたのは市庁舎の壁ですが、現在は市立博物館になって展示保管されています。
この絵には4人の兵士が、キリストの復活を阻止するよう命じられたにもかかわらず寝込んでいる場面が画かれています。そして左から2番目、のけぞった様に寝ている兵士はフランチェスカの自画像とのことです。
またこのフレスコ画は、レオナルドダビンチ等動きのある絵に押されて人気がなくなり、石膏で壁ごと白く塗りつぶされてしまいました。しかし19世紀に剥がれ落ちた石膏のなかから蘇り、人気を取り戻したのです。そして英国人の小説家オルダス・ハックスリーが、サンセポルクロの「キリストの復活」を「世界で最も素晴らしい絵画」と評価したのです。(下はフランチェスカのフレスコ画、シバの女王の聖木礼拝)
第二次世界大戦末期ここサンセポルクロはドイツ軍に占領されており、英国軍が間近に迫っていました。その英国軍を指揮していたのはトニー・クラークと言う将校。彼は攻撃命令を受けてサンセポルクロを攻撃しようとしたのですが、以前読んだことのあるハックスリーの本の中に、世界最高の画「キリストの復活」がここに在ることを思い出し、砲撃を中止したのです。そのおかげでこの町は戦火を免れました。
そして英国軍がこの町サンセポルクロに入ったときには、ドイツ軍は撤退しており、この絵は無傷で残されていました。戦後この話が有名になり多くの観光客が訪れるようになったのです。さらにこの絵はサンセポルクロ市の紋章になり、現在も使われています。
サンセポルクロという言葉はイタリア語で「聖なる墓」を意味しており、フランチェスカはこの町のアイデンティティー(存在証明)を象徴する絵画としてこのテーマの絵を画いたと推測されています。
また前回紹介したフランチェスカの「キリストの洗礼」をデザインしたTシャツをネットで見つけました。ツレとお揃いで購入し愛用しています。