こんにちは。
今月の文芸春秋に、『吉本興業がテレビを駄目にした/「ゲバゲバ」の天才プロデューサーが語るテレビ界への遺言』という記事がありました。
作家の小林信彦氏と元日本テレビプロデューサーの井原高忠氏の対談企画ですが、良質なコンテンツ作りのヒントが語られていたので、ちょっと御紹介したいと思います。
井原:本場のバラエティ・ショウのノウハウを、日本でもいくつか試してみたかったんですよ
小林:お得意の“本邦初”ですね
井原:というのも、『光子の部屋』をやっている頃、アメリカに行って本場のショウビジネスを見て感心したことの一つに、お客さんを入れた番組作りということがあったんです。それまで、日本のバラエティ・ショウは狭いスタジオで全部作っていましてね。
ところがアメリカでは、古い劇場を改装したスタジオを使うんです。『ペリー・コモ・ショウ』にしても、マンハッタンにある劇場をテレビスタジオに仕立てているから、客席にいるお客さんの目の前でショウを演じることになる。(※中略)となると、出演者に必要な役割はサービス精神、つまり接客業なんです。(※中略)
小林:井原さんは「ショウビジネスで成功するために絶対必要なのは、時間と金と才能だ」と盛んにおっしゃいましたが、これは至言だと実感しました。アメリカのハリウッドやブロードウェイを見るまでもなく、日本映画の最盛期だって、才能豊かな人材が集まって、時間と金を大量に投下して映画作りをしていた。
井原:テレビも同じです。たとえば、『ゲバゲバ90分!』には、ドラマでさえ1本800万円の予算が上等とされていた時代に、1,500万円かけていました。
小林:今なら5,000万円以上の予算です。
井原:ただその代わり、スポンサー探しは広告代理店と一緒に僕が直参していました。だから、月に6,000万円かけて自分の道楽ができた。昨今、いわゆるテレビのヤラセや捏造問題が起きた時に、番組制作費のあり方話題になりましたね。スポンサーがテレビに1億円払っていても、実際に番組を作る制作プロダクションに下りてくるときには予算が数百万円しかない。つまり、広告代理店やテレビ局が抜いているわけです。これじゃ、いい番組は作れませんよ。(※中略)
小林:それだけに井原さんのギャグに対するこだわりは相当なものでした。作家だけでも40、50人いたとか。
井原:ええ、マンションの一室に集まって、昼夜を徹して書いて、90分番組1本について、出てきたギャグが500個。それを作家の河野洋がまとめながら、面白くないものはどんどん捨てていって、130個くらいまで吟味して本番を撮影したんです。それでも僕が本当に面白いと思ったものは3つか4つですね。(※中略)
井原:アメリカでは、テレビ局と製作会社は商売として競争する関係にあったんです。良い番組を製作会社が作れば局は高く買うし、内容が落ちれば値切る。これ、日常茶飯事です。でも、日本は違った。ろくな番組さえ作れないプロデューサーが製作会社に居丈高に振舞って、一方では強力な芸能プロの前では土下座せんばかりに萎縮する。
僕が現役だった頃は、アメリカ的で芸能プロも製作会社も対等だったんです、これが本来の姿。でも、渡辺プロだけが「俺の方が偉いんだ」と言い出したから、僕はカチンときて怒っちゃった(笑)。
井原さんの言葉の中に、良いクリエイティブを作るための時代を超えた普遍性を見た気がしました。今考えている交流会は、こういう貴重な人生の先輩の声を共有できる場にできればいいなと考えています。
今月の文芸春秋に、『吉本興業がテレビを駄目にした/「ゲバゲバ」の天才プロデューサーが語るテレビ界への遺言』という記事がありました。
作家の小林信彦氏と元日本テレビプロデューサーの井原高忠氏の対談企画ですが、良質なコンテンツ作りのヒントが語られていたので、ちょっと御紹介したいと思います。
井原:本場のバラエティ・ショウのノウハウを、日本でもいくつか試してみたかったんですよ
小林:お得意の“本邦初”ですね
井原:というのも、『光子の部屋』をやっている頃、アメリカに行って本場のショウビジネスを見て感心したことの一つに、お客さんを入れた番組作りということがあったんです。それまで、日本のバラエティ・ショウは狭いスタジオで全部作っていましてね。
ところがアメリカでは、古い劇場を改装したスタジオを使うんです。『ペリー・コモ・ショウ』にしても、マンハッタンにある劇場をテレビスタジオに仕立てているから、客席にいるお客さんの目の前でショウを演じることになる。(※中略)となると、出演者に必要な役割はサービス精神、つまり接客業なんです。(※中略)
小林:井原さんは「ショウビジネスで成功するために絶対必要なのは、時間と金と才能だ」と盛んにおっしゃいましたが、これは至言だと実感しました。アメリカのハリウッドやブロードウェイを見るまでもなく、日本映画の最盛期だって、才能豊かな人材が集まって、時間と金を大量に投下して映画作りをしていた。
井原:テレビも同じです。たとえば、『ゲバゲバ90分!』には、ドラマでさえ1本800万円の予算が上等とされていた時代に、1,500万円かけていました。
小林:今なら5,000万円以上の予算です。
井原:ただその代わり、スポンサー探しは広告代理店と一緒に僕が直参していました。だから、月に6,000万円かけて自分の道楽ができた。昨今、いわゆるテレビのヤラセや捏造問題が起きた時に、番組制作費のあり方話題になりましたね。スポンサーがテレビに1億円払っていても、実際に番組を作る制作プロダクションに下りてくるときには予算が数百万円しかない。つまり、広告代理店やテレビ局が抜いているわけです。これじゃ、いい番組は作れませんよ。(※中略)
小林:それだけに井原さんのギャグに対するこだわりは相当なものでした。作家だけでも40、50人いたとか。
井原:ええ、マンションの一室に集まって、昼夜を徹して書いて、90分番組1本について、出てきたギャグが500個。それを作家の河野洋がまとめながら、面白くないものはどんどん捨てていって、130個くらいまで吟味して本番を撮影したんです。それでも僕が本当に面白いと思ったものは3つか4つですね。(※中略)
井原:アメリカでは、テレビ局と製作会社は商売として競争する関係にあったんです。良い番組を製作会社が作れば局は高く買うし、内容が落ちれば値切る。これ、日常茶飯事です。でも、日本は違った。ろくな番組さえ作れないプロデューサーが製作会社に居丈高に振舞って、一方では強力な芸能プロの前では土下座せんばかりに萎縮する。
僕が現役だった頃は、アメリカ的で芸能プロも製作会社も対等だったんです、これが本来の姿。でも、渡辺プロだけが「俺の方が偉いんだ」と言い出したから、僕はカチンときて怒っちゃった(笑)。
井原さんの言葉の中に、良いクリエイティブを作るための時代を超えた普遍性を見た気がしました。今考えている交流会は、こういう貴重な人生の先輩の声を共有できる場にできればいいなと考えています。