「命を守る・人が死なない!防災士-尾崎洋二のブログ」生活の安心は災害への万全な備えがあってこそ。命と生活の安全保障を!

防災の第一目的は命を守ること。「あの人を助けなくては」との思いが行動の引き金となります。人の命を守るために最善の行動を!

感染症や大規模な自然災害といった国家の危機とも言う べき事態に、政治はどう対処すべきなのか。五百旗頭真氏

2020年03月11日 10時13分57秒 | 防災組織の見本事例

尾崎 洋二 コメント:

人類の歴史上、これまで数十年(30~40年)周期でパンデミックが発生していると
考えられています。

パンデミックへの準備は、台風や地震、津波、ハリケーンなどの自然災害、あるい
はバイオテロなどの人為的災害への準備などと、いかに人々の生命を守るかという
ことにおいて共通のものであり、このような危機管理の視点から世界的にその準備
は進めていて欲しいものです。

ある国の一国主義や、感染情報の秘匿傾向、後手後手対応などがあれば、世界が協
力しあっての防衛はできません。

私が危惧するのは、新型コロナウイルスの感染対応中に大地震の発生があれば、
避難所運営の問題などを中心に、さらに大混乱が予想されます。

そこまで考えた危機管理体制が地震国の日本にあるのか?と不安に思うところが
あります。

この意味では、

「日本という国は“想定外”に弱い。
そして危機とは想定外の事態にほかならない。

内閣府の中に防災担当があるが、2~3年周期で他省庁から回
ってくるような寄り合い機関だ。

災害対処は、専門的な技術やノウハウ(手法)の蓄積が欠かせない。

大災害が起きてから、どんな機関をつくるべきかなどと時間を浪費することを繰
り返すべきではない。

統合的に防災対策を担う専門家が加わった防災庁を設置し、発災後直ちに動ける
体制を構築すべきだ。

重要なのは、時のトップリーダーが誰でも対応できる体制を作ることだ」

という五百旗頭氏の意見は傾聴に値すると思いました。

----------------以下 公明新聞3月11日2020年-----------------------------

「解説ワイド 日本の危機管理は万全か」


 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、きょう11

日は東日本大震災の発災から9年の節目を迎えた。

感染症や大規模な自然災害といった国家の危機とも言う

べき事態に、政治はどう対処すべきなのか。

兵庫県立大学理事長で前防衛大学校長の五百旗頭真氏に聞いた。


(新型コロナ)情報発信は分かりやすい表現で/専門家の知見生かす研究所つくれ

Q1――新型コロナウイルスの感染に対する政府の対応をどう見るか。

五百旗頭真・兵庫県立大学理事長 感染が広がった要因には、中国の情報発信のあ
り方に問題があったことに加え、中国の旧正月に当たる春節を迎えて多くの中国人の
来日を日本が許したことも挙げられる。

また、外国船なので難しいことは分かるが、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」
での感染拡大への厳しい統一的対応が不十分で、危機管理上、最重要の初動対応がで
きなかった。

日本政府は、重大事態への認識が甘く、遅れたと言わざるを得ない。

その後、感染症の専門家を集めた会議を経て発信した対応はあるべき姿で良かった。

ただ、発表した対策の基本方針は、典型的な官僚の作文でポイントがどこにあるの
か伝わりづらかった。

危機の瞬間には、一般国民が読んで分かる鮮明な表現に心掛け、現状認識や対処方
法などを明快に論じることが大事だ。

Q2――安倍晋三首相が全国の小中高校に休校要請した判断はどう受け止めているか。

五百旗頭 危機管理上、妥当な判断である。

休校要請に至る過程で関係者への根回しや了承を得られていないと批判する人がい
たが、それは典型的な平時モードの日本的反応であり、危機管理下においては、コ
ンセンサス(同意)を得てから判断していては間に合わない。

厳しい事態ほど、最高責任者が迅速に四捨五入的な決断をしなければならない。

それにより主要部を救った後、不遇の人々に手当をするのが危機管理の考え方だ。

Q3――日本の感染症対策は今後どうあるべきか。

五百旗頭 今回のコロナウイルスは、第1次世界大戦中の1918年に流行した
スペイン風邪と呼ばれるインフルエンザ以来の深刻な感染症となってしまった。

はるかにグローバル化が進んだ今、国家を挙げて対策を事前に制度化していくこ
とが不可欠だ。

欧米では組織の整備が進んでいる【表参照】。

特に米国では、政府内に疾病対策予防センター(CDC)と呼ばれる感染症対策
の総合研究所が設けられ、世界の感染症の動向が常に研究されている。

日本には国立感染症研究所があるが、主な機能は基礎研究にとどまっている。

日米では国力も大きく違うので同規模ではあり得ないが、専門家の知見を生かし
て実際的な政策を考える日本版疾病対策センターを創設すべきである。

米国は非常にロジカル(論理的)で、一つでも歴史上の前例があり、科学的に
危険性があると判断すれば即座に動く。

日本は実感主義なため、今、必要でないと判断すれば後回しにする傾向が強い。
これでは、後追い対応しかできない。


■(大震災)発災後直ちに動ける体制構築急げ/南海トラフ対策は国の根幹的任務

Q4――その視点は災害大国としての危機管理にも通じるのではないか。

五百旗頭 その通りだ。

過去の大災害における政府の対応を振り返ると、関東大震災では復興院という各省
庁とは別の大組織を設置したものの頓挫。

阪神・淡路大震災では、少人数の復興委員会が地元の意向を吸い上げ、政府を挙げ
実施に当たった。

東日本大震災の際は復興構想会議を立ち上げて総合的なプランを策定してから、復
興庁を設立した。

近い将来に起こると予測される南海トラフ巨大地震は、被害が甚大にして被災地が
あまりに広範。

対処の道筋をまとめるのも難しくなるに違いない。

災害に対する危機管理体制の整備は国の根幹的任務であるが、日本的後追い対応で
は悲惨な結果を招くだろう。

必ず来るのだから、津波危険地域に住むことを禁ずるなどの事前対処を始めるべきだ。

内閣府の中に防災担当があるが、2~3年周期で他省庁から回ってくるような寄り
合い機関だ。

災害対処は、専門的な技術やノウハウ(手法)の蓄積が欠かせない。

大災害が起きてから、どんな機関をつくるべきかなどと時間を浪費することを繰り
返すべきではない。

統合的に防災対策を担う専門家が加わった防災庁を設置し、発災後直ちに動ける体
制を構築すべきだ。

Q5――政治家の資質も問われる。

五百旗頭 東日本大震災の被災地を訪ねて痛感したのが、トップリーダーの資質差
が復興に直結したことだ。

災害発生の直後は危機管理であり、一人でも多くの命を救うために、全責任を負っ
てトップが即断行動することが必須である。

しかし、その後の復旧・復興過程においては、住民の意向を尊重しながらまちづく
りを進めることが鉄則だ。

それを勘違いしてトップダウン式に復興プランを押し進めようとして摩擦やトラブ
ルを招くケースもあった。

政治家は、常に人々のため全力を尽くすが、人々の明示の同意を取り付けるいとま
もない危機状況にあっては、孤独な決断も必要である。


■(“想定外”の事態)国防、経済資源、災害、疾病が重要/さまざまな脅威に備
えた法整備を

Q6――日本を取り巻く危機は多様化しているのか。

五百旗頭 1979年、日本の安全保障政策に関して当時の大平正芳首相がつくっ
た「総合安全保障」という研究会があった。

私の京都大学時代の恩師だった猪木正道元防衛大学校長が議長を務めた研究グルー
プで報告書がまとめられた。

この中で、安全保障とは国民生活をさまざまな脅威から守ることであり、主に三
つあるとする。

いわゆる国防を一つ目の柱に、二つ目に石油に代表される経済資源、三つ目に大
災害を挙げ、これらで総合安全保障を構成するとした。

しかし、今われわれが直面しているのは、当時は想定されていなかった感染症に
代表される疾病だ。

これからの日本の安全保障は、国防、資源、災害、疾病の四つの観点で考える必
要があろう。

Q7――こうした安全保障を構築するには何が必要か。

五百旗頭 中曽根康弘元首相や今の安倍首相のように危機対処に情熱を持つリー
ダーもいる。

しかし実は重要なのは、時のトップリーダーが誰でも対応できる体制を作ることだ。

私は、憲法を改正して緊急事態に対応する危機管理条項を盛り込むべきと考えている。

しかし、日本において憲法改正は非常に敷居が高く、改正は容易ではない。

とはいえ、憲法改正にこだわる必要もない。

感染症などの緊急事態における危機管理についての基本法を制定すれば十分だ。

実際、例えば「災害対策基本法」は機能している。

基本法ではなく、個別的な法律でもよい。

しっかりした制度を作って危機に備えることだ。

今回、安倍首相は、「緊急事態宣言」を発令できる「新型インフルエンザ等対策特
別措置法」を改正して対応する方針のようだが、一つのやり方だろう。

日本という国は“想定外”に弱い。

そして危機とは想定外の事態にほかならない。

想定外には二重の意味がある。

事態の激烈さが一つ。

もう一つは日本の法制度に収まらない状況だ。

役所も司々で担当が決まっており、タテ割りに収まらない事態に当たらなければな
らないのが現状だ。

だからこそ、国家の危機管理において求められるのは、被害を最小限に食い止める
ために初動段階でトップリーダーが思い切った判断ができるかどうかだ。


 いおきべ・まこと 1943年生まれ。文化功労者。

京都大学大学院法学研究科修士課程修了。

神戸大学法学部教授、防衛大学校長、熊本県立大学理事長などを歴任。

東日本大震災では、政府の復興構想会議議長を務めた。

2012年から、ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長を兼務。

18年から現職。

写真キャプション
写真キャプション新型コロナウイルスの感染拡大防止のため休園したUSJ=2月29日 大阪市

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