「命を守る・人が死なない!防災士-尾崎洋二のブログ」生活の安心は災害への万全な備えがあってこそ。命と生活の安全保障を!

防災の第一目的は命を守ること。「あの人を助けなくては」との思いが行動の引き金となります。人の命を守るために最善の行動を!

「子どもにどう伝えるか防災教育」 小田隆史宮城教育大学准教授に聞く

2020年02月27日 12時49分27秒 | 片田氏:子ども。要支援者を守る

「子どもにどう伝えるか防災教育」
小田隆史宮城教育大学准教授に聞く

(おだ・たかし 1978年生まれ。福島県いわき市出身。
東北大学大学院修了。博士(環境科学)。
外務省専門調査員、カリフォルニア大学バークレー校フルブライト研究員
などを経て、2017年から現職。
19年4月から宮城教育大学防災教育研修機構の副機構長を兼務)


尾崎 洋二 コメント:
大川小学校の悲劇を二度と繰り返してはならない。

東日本大震災の時、お子様を亡くされた遺族の今野ひとみさんは、「いか
なる場合も子どもの命は大人が守る。
この悲劇を二度と繰り返さないことが、亡くなった74人の子どもたちが
この世に厳然と存在していたんだという証になる」と宮城県議会超党派主
催フォーラム(2019年3月23日)で叫びました。

「学校防災の本質は考えのど真ん中に子どもの命があるかどうか、この一
点に尽きる。
この事故を辛い、悲しいだけで終わらせず、教訓を未来に生かしてほしい」
と切に願う遺族の皆さんたちの声が学校防災でどのように活かされるか?

この意味でとても貴重な特集コラムです。

私自身が気になったのは、地震のみならず、集中豪雨・水害など昨今にお
いては大災害が相次いでるなかで、子ども達が、たとえ一人きりの状態で
あっても、災害危険を理解し、自主的に判断して、災害に備える行動を取
れる、命を守れる行動を取ってくれる防災教育であって欲しいということ
です。

幸い東北には東日本大震災の津波災害において、釜石の子どもたちの偉業
があります。

この「奇跡」ではない「訓練」に基づいた偉業からもっと学ぶべきかと思
います。

この時、学校にいた鵜住居地区(釜石市)の児童・生徒たち約570名は、
全員生き延びました。

釜石市内14の小中学校の児童・生徒約3000名のほぼ全員が助かったことは
命を守る防災教育の素晴らしい成果です。

命を守る避難の三原則 

その1「想定にとらわれるな」
その2「いかなる状況においても最善を尽くせ」
その3「率先避難者たれ」

この3原則を基にした片田 敏孝(群馬教育大学大学院教授、広域首都圏
防災研究センター長)さんの提案を受け入れて実践した釜石市を見習った
学校防災教育であって欲しいというのが私の願いです。


------以下 公明新聞電子版 2020/02/22 ---------------------------


 自然災害が激甚化・頻発化する中で、防災教育の必要性が高まっている。

この4月に小学校から順次実施される新たな学習指導要領では、そうした
災害の教訓を踏まえ、防災教育に関する内容が重視された。

新学習指導要領の概要を紹介するとともに、防災の知見を子どもにどう教
えるかなどについて教員の防災教育研修に携わる宮城教育大学の小田隆史
准教授に聞いた。

■(4月から新学習指導要領)各教科に防災の視点

 約10年ぶりに改訂された新学習指導要領では、子どもたちの「生きる
力」を育てるため、(1)知識および技能(2)思考力・判断力・表現力
(3)学びに向かう力、人間性――の3つの柱で各教科などの学習内容が
改めて整理された。

その中で、社会の変化や課題に対応する力を育む教育の一つとして、「防
災・安全教育」の充実が図られている。

ただ、学習指導要領で「防災」は教科としては位置付けられていない。

そのため学校現場では、防災教育を社会や理科、道徳などの教科で横断的
に展開する必要がある。

その授業づくりの参考として新学習指導要領では、学年や教科ごとに取り
組むべき内容が分かりやすく記載。

小学校においては、全学年で防災を幅広く学ぶ視点が盛り込まれたのも特
徴的だ。

 さらに文部科学省は、防災を含む安全教育の具体的な方針として、「災
害発生の仕組みを学ぶ」など子どもの発達段階に応じた目標も示している
【表参照】。

■(意義)「共に生き抜く力」育む/社会貢献の意識高

  める効果

 ――防災教育の意義は。

小田隆史・宮城教育大学准教授 防災教育の概念は時代とともに変化して
きている。

学校現場においては避難訓練などの単発的な活動という形が長年主流だ
った。

それが近年になって、防災をより幅広く捉える傾向になっている。

大きな転機となったのが、1995年の阪神・淡路大震災だ。

自助・共助・公助の中でも阪神大震災では公助に限界があって、隣近所の
人に助けられたケースも多かった。

全国各地、世界中からもさまざまな支援があり、防災を助け合いや教訓の
継承を意識して考えるようになった契機と言える。

しかし2011年の東日本大震災によって、自分自身の命と周りの人の命
をどう守っていけばいいのか、われわれは改めて突き付けられた。

昨今においても災害が相次ぐ中で、災害危険を理解し、いかに備え、命を
守れるかを教える学校の使命は大きい。

多面的な防災教育の重要性がますます高まっている。

 ――効果をどう見るか。

小田 防災教育の目的を一言で表すなら、「共に生き抜く力を身に付けさ
せる」ということだ。

子どもたちが学校で習った防災実践が、家庭や地域に与える影響は少なく
ない。

足腰の弱いお年寄りの避難を子どもたちが支える体験学習を行ったことで、
住民の地域防災訓練への参加率向上につながったという事例も聞く。

何より多感な時期の子どもたちにとって、自分自身が社会の一員として地
域の安全・安心に貢献できるという「自己有用感」を高める意味で、非常
に大きな効果があると見ている。

■(現状)副読本、遺構など活用/全国的に授業の時間

 少なく、求められる創意工夫

 ――学校現場ではどう教えられているか。

小田 避難訓練のような形での防災実践や、理科での災害発生メカニズム
の学習は長年行われている。

今はそれに加え、多様な教科と関連させて防災教育を実施する傾向になっ
てきた。

特に大規模な災害を経験した後の被災地においては、自治体が地域性を踏
まえて作成した防災副読本をベースに、授業づくりを工夫する熱心な学校
も多い。

東北では、東日本大震災の被害や教訓を伝える遺構や施設を訪れたり、語
り部から被災体験を聞きながら、「自分には何ができるか」を考えさせる
防災学習が特徴的だ。

一方で、大災害を経験していない「未災」地域――例えば南海トラフ地震
による津波が懸念される高知県などでは、実際に被災を経験した学校や、
大学の専門家と連携して防災教育を近年一層充実させているようだ。

しかし全国的に見渡せば、防災教育にあまり時間を費やすことができてい
ない学校が多いのが実情だ。

 ――新学習指導要領をどう見るか。

小田 今回の学習指導要領の改訂では、防災や安全に関する内容を子ども
の発達段階ごとに、どの科目でどのように扱えるかが分かりやすく示され
ているという点で、大きな意義があると受け止めている。

一般的に学校には、防災という教科が存在しないので、専門の教員がいる
わけでもない。

その中でさまざまな機会を捉えて、防災のエッセンスを授業に意識して盛
り込んで教えていく教員の力量が問われている。

どういう授業づくりをするかは、学校や教員の創意工夫に委ねられている
というわけだ。

防災に必要とされる幅広い資質や能力をどう向上させていくのか、教科ご
とに一から整理するのは大変だ。

新学習指導要領が全国の学校現場に与える影響は大きいだろう。

■(今後)教員の資質向上さらに/地域・保護者の関わ

 りも重要

 ――今後の課題は。

小田 学習指導要領を踏まえて授業づくりをする上で、教員自身も災害に
関する知識や命を守ることへの知見を高めていく視点が欠かせない。

それが防災を効果的に教えられる指導力につながるからだ。

学校防災という話になるが、東日本大震災において学校の管理下で子ども
が犠牲になった「大川小での津波被災」は、教員たちに防災に関する資質
を高める必要性を突き付けた。

当然、全国の教員がそれを重く受け止めていると認識している。

教員として最低限どのような知識や能力を身に付ける必要があるかを具体
的に整理し、教員の防災力の底上げを図ることが求められている。

一方で、地域や保護者が学校の防災実践を支えていくことも必要だ。

特に地域の災害リスクを理解するために、自主防災組織や町内会の防災リ
ーダーが積極的に学校と関わりを持つことも重要になってくる。

 ――どういった支援があるか。

小田 今充実しつつあるのは、さまざまなグッドプラクティス(優れた実
践事例)を共有するプラットフォーム(基盤)だ。

文部科学省や国土交通省は、インターネット上にポータルサイトを立ち上げ、
防災や学校安全に関わる教材や実践事例を提供している。

また宮城教育大学の防災教育研修機構でも、昨年から国交省地方整備局など
と協働し、現場の教員を支えるための共同研究や研修を始めた。

授業づくりをどのように進めたらいいか、防災の専門家と一緒に考えている。

ともあれ教員は多忙だ。

その中で、防災教育を何か難しく過重なものとして捉えるのではなく、実践
することで子どもが、地域が変わったと語る教員が増えて、全国で実践が広
がっていくことを願っている。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「命を守る教育-3.11からの教訓」片田 敏孝氏:家族で、地域で、学校で、そして行政でという連携が必須

2019年05月23日 08時41分03秒 | 片田氏:子ども。要支援者を守る

尾崎洋二コメント:「津波」の言葉を同じ自然災害である「集中豪雨」と置き換えて考えてみたらどうなのだろうか?と考えてしまいました。

2018年の死者224名、行方不明者8名、負傷者459名(重傷113名、軽傷343名、程度不明3名)を出した7月集中豪雨においても、津波のみならず、温暖化が止まらない今の時代環境において、大きな災害を起こす「集中豪雨」対策が、どのように各地域でとられているのか気になるところです。
 やはり、子どもと要支援者をなにがなんでも守る。そのためには家族で、地域で、学校で、そして行政でという連携が必須かと思いました。

 このような視点から片田氏の著書を、前半を中心にまとめてみました。

--------------------------------------------------------------

「命を守る教育-3.11からの教訓」PHP研究所\1,200

片田 敏孝-群馬教育大学大学院教授、広域首都圏防災研究センター長

要点抜粋箇条書き

 

 3.11の津波発生時、学校にいた鵜住居地区(釜石市)の児童・生徒たち約570名は、全員生き延びました。

 釜石市内14の小中学校の児童・生徒約3000名のほぼ全員が助かったことは津波防災教育の一定の成果といえるでしょう。P27

 釜石市では、親を亡くした小学生が20名、中学生は8名でした。亡くなった親御さんは合計28名ということになりますが、釜石市の死者・行方不明者が約1,100名に及ぶことを踏まえると、犠牲になった親御さんは数としては少ないと思います。

しかし私たちは犠牲者ゼロを目指しています。P107

 

防波堤だけじゃダメ。「災害社会工学」が提案する津波対策とは?

災害社会工学とは?
1-災害に強い街や社会をつくる。

2-自然災害による人的被害を出さないために、地域社会や住民対応力をいかにして高めるかという研究をする。P30

3-防波堤や砂防ネットがあっても完全に食い止めることができないような、想定を超える災害が起きる可能性は常にあるから、ソフト面を非常に重視する。

4-災害が起きたとき、地域社会ではどんな対応をすればよいのか。住民はどういった行動を取れば助かるのか。社会や人の自然災害への対応力を高めること、つまり防災教育に重きを置く。


津波常襲地域で避難率わずか1.7%の現実

三陸地区での津波

1-    明治29(1986)年の明治三陸大津波では三陸地域では、約22,000人が亡くなった。

2-    宮古市の田老地区(田老町)では村人が1,859人亡くなり、生存者(沖合に出ていた漁師のみ)はたったの36人。

3-    釜石市(当時釜石町)では当時の人口6,529名のうち、4,985名、人口の約4分の3が亡くなった。

4-    昭和8(1933)年の昭和三陸津波。

5-    昭和35(1960)年のチリ地震津波

6-    2003年5月:三陸南地震が起きたとき気仙沼市での避難率は1.7%。三陸地域においてでも、気仙沼市に限ったことではない。

 

防災教育の目指すところ p39

1-    人はなかなか逃げないもの。

2-    その人が自発的に逃げるようにすること。

3-    その人が自分の命を自分で守れるようにすること。

4-    地域社会や住民の自然災害への対応力を高めること。

5-    釜石市では、津波防災を文化のレベルまで引き上げて、あえて語らなくても「地域知」として常識化することにより、津波による犠牲者をゼロにすることを目的に掲げた。

 

釜石市における津波防災文化の醸成 p41

1-    子どもたちを対象にすることにより、子どもたちに接する大人たちの関心を喚起できる。

2-    さらに長期的な効果:小学生のうちにしっかり教育すれば、10年後、その地域には防災意識が高い大人が、20年後、その土地には防災意識の高い親が暮らすことを意味する。

3-    そうなれば、防災意識の高い親が子どもを育て、災害から身を守る意識と術が家庭のなかで受け継がれていくことになる。

4-    「10年一区切りで、20年は腰を据えて教育に取り組もう」。そう決意し、大人を対象とした講演活動ではなく、学校で津波防災を教えるという方向に切り替えた。

 

「津波防災教育」に乗り気でない先生方に、関心をもってもらうには? P43

 時間的余裕がありません。

 総合学習がいっぱいなんです。

 津波ばかり時間は割けません。

これらの先生方の声に対して、教育委員会にお願いして、釜石市の全小中学校の先生方に集まっていただき、講演で以下のように訴えた。

「過去の統計を見れば、子どもたちが生きているあいだに津波がやってくることは間違いありません。しかし。いまのままで、子どもたちは津波から自分の命を守れるでしょうか。

 英語や国語など、先生方も子どもに教えなければいけないことはたくさんあると思いますが、津波がきたときに生き延びられる子どもにすることは、すべての教育に優先することではないでしょうか」

 すると、あきらかに会場の空気が変わりました。

 多くの先生方が津波防災教育の必要性を感じ取り、私の意見に賛同してくださったのです。

 

「君がひとりで家にいるとき、大きな地震がありました。さて君ならどうしますか?」 p53

  実際に学校で津波防災教育がスタートしたのは2004年。最初の授業のとき、私は自動にアンケート用紙を配った。

 「このアンケート用紙にはひとつだけ質問が書かれています。とても簡単な質問です。みなさんだったらどうるすか正直に書いてください」

 生徒の回答

1-    お母さんに電話する。

2-    家族の誰かが帰ってくるのを待つ。

ほとんどの子どもの予想通りの回答、否定せず、そのかわり、ひとつお願をしました。

「そのアンケート用紙に紙を貼りますので、今日おうちに持って帰って、おうちのいかたに見せてください。かならず見せてくださいね」

 保護者に向けた質問状を貼り付けました。P54

「お子さんの回答を見てください。あなたのお子さんは今度大津波がきたとき、生き延びることができるお子さんでしょうか?」

 小中学校の親御さんの世代は、いわば働き盛り。仕事や子育て、家事、地域活動などでもっとも多忙な世代といえます。

 それはつまり、防災講演会を開いても、足を運べない人たち、足を運ばない人たちということです。

 子育てに忙しくて防災どころではない。残業続きで講演会どころではない。そんなかたたちにこそ、津波防災に興味を持ってもらわなければいけない。

 そこで子どもたちを仲介役にしたのです。

 親御さんはどなんに忙しくても、わが子のこととなると真剣になります。自分自身のことは脇に置いても、わが子のことを最優先させます。たとえ防災講演に足を運ぶ余裕はなくても、お子さんを介すれば、こちらの話に耳を傾けてくれます。

----------------------------------------------

参考までに下記をご参照ください。

人が死なない防災-東日本大震災を踏まえて:片田敏孝氏の防災教育

なぜ人は避難しないのか?人が死なない防災2- 片田 敏孝 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする