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奮闘記・25~鉄塔由木線

 平成6年に日本ファンタジーノベル大賞を受賞した銀林みのる氏の小説 『鉄塔武蔵野線』(新潮文庫)。平成9年に映画化されているが、ご存知の方は少ないかとも思う。物語のあらすじは、2学期から父親の転勤のため引っ越すことが決まっている小学5年生の少年見晴(みはる)の夏休みのお話。ある日、見晴が近所の鉄塔を見上げると “武蔵野線75-1号” と表記されていることに気付き、鉄塔への想いが膨らむ。そして小学3年生の暁(あきら)と共に親に内緒で “1号鉄塔” を目指して自転車での冒険が始まる。途中で作業員に怒られたりパンクしたりまたゴルフ場を越えたりしながら23号鉄塔付近でついに日が暮れて野宿になり、翌日には暁がリタイアしてその後は一人で進んで行く。しかしゴール直前の4号鉄塔付近で鉄塔保守員に見つかり家へ連れ戻されて冒険は終了。季節が変わって引っ越し先の新居に、黒塗りのリムジンが止まり中から一人の紳士が降り立って、見晴に思いがけないプレゼントが・・・・。私は “見晴” が自分の少年時代と重なって、この小説は、私の中では、芥川賞、直木賞に匹敵する名作だと思っている。それ以来、大きな鉄塔を見ると、○○線△△号という標識を確認し、『起点の1号鉄塔はどこなんだろう。』 などと想いを寄せてしまう。風景写真を撮る時にはいささか邪魔な鉄塔だが、鉄塔もそういう見方をすると興味深い。
 写真の鉄塔は、松木中学校付近の由木線21号鉄塔。道路に沿って鉄塔が立っていれば番号を追っていくことができるが、高圧線は時に道の無いところを通っているので、ランニングで追いかけるわけにもいかない。
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