4月からアニメ化するということで、評判もいいようだったので、年末年始にまとめて9巻まで一気に読んだのだが、これは想像していた以上に面白かった。
こんなに初読で面白いと思ったのは、西尾維新の戯言シリーズ以来かな。そういう感じ。
簡単に言うと、物語として、わかりやすい駆動力が複数あって、それが微妙に重なりあいながら、それなりの驚きを伴いながら進んでいく。
わかりやすい駆動力というのは、
ダメな主人公(デブでいじめられっ子)の成長物語
彼を巡る(まさかの)ラブコメ
昔の仲間と今の仲間
男子二人、女子一人の(定番的)幼馴染みの微妙な関係
ツンデレ、姉キャラ、妹キャラ、不思議ちゃん、の定番キャラ配置
仲間や絆の多様性 (チーム、思慕、尊敬、師弟、・・・)
敵対と友情、和解
どす黒い(それとわかりやすい)悪意
ブレインバーストという仮想世界の設定の妙
リアルとバーチャルのズレ
とりわけ、体感時間の違い
夢、脳、・・・、の不思議さ
見え隠れするゲームマスター
機械に宿る意志・精神
・・・
と言った具合に、登場人物についても、設定についても、比較的定番的なものをてんこ盛りにしているわけだけど、それでいながら、飽きさせない物語展開の妙。
物語に、喜怒哀楽の起伏があり、適宜、サプライズも用意されている。
主人公が構造的にコミカルに設定されているので、当然、そこから笑いも生じる。
いやー、読んでいて楽しいお話で。
とにかく、読みやすい。
きっと、定番的な要素によって、読み手に一定の方向に物語の予測を向けさせながら、それが「あ、やっぱりそうか」「え、そう来ましたか」、という納得と驚きの振幅をうまく調整しているからなのだろうな。
お約束を愚直に実現するところと、気持よく裏切るところと。
もっとも、キャラの登場や背景説明が不十分だった4巻ぐらいまでは、ちょっと微妙かなと思っていた。特に、3巻と4巻の部分は、準主人公である黒雪姫に出番がなく、そのぶん、ハル、タク、チユ、の三人で完結した話になっていて、あれ?と思っていたのだけど。
でも、9巻まで読むと、4巻までは物語全体の仕込みであったことがよくわかった。
5巻以降、それまでの蓄積(人物も背景事情も)が全てうまく繋がって物語が流れていて、一気に読めてしまった。
もちろん、その5巻以降は、裏返すと、定番的ラノベ臭さが増したことも確かで、たとえば、フーコのキャラが最初に登場した3巻と5巻以降では、慈悲的な暴力性を伴うw姉キャラにシフトしているとか(それはういとの対比もあるのだろうけど)、9巻でバラされたまさかのアッシュさんの中の人、とか、ええ!?、と思うところもあるのだけど、そのエフェクトの効いたキャラ付けが鼻につかないのが面白いところ。
それは一方で、物語の背景、というか、ブレインバーストの「世界」に関わる秘密がだんだん前面に出てきたこともあるのだろうけど。普段行う格ゲー対戦の「日常(といってもぶれいんバースト内の)モード」を面白おかしく記すために、キャラ属性のはっきりした人達によるボケ/ツッコミが、物語の憩いとして必要になるとと言うか。
でないと、バーストリンカーの中のエリート(王やその側近)が対峙するグランドマスターの思惑、それをハッキングしようとする(悪の)勢力=加速研究会、とか、話としては重たい要素は増えているわけで(3,4巻がイヤーな感じがしたのは、そういう重たい要素が多かったから)。
こういう、異能の仲間が知らず知らずのうちにチームを作っていくところが、最初期の戯言シリーズを書いていたときの西尾維新に近い印象を受けたところ。
ともあれ、想像以上に面白かった。ストーリーテリングが凄いしっかりしていて、へぇ、と驚くことも多かったし。
物語が多重進行していくホライゾンとは違って、アクセル・ワールドの物語自体は、一歩一歩前に進んでいく構成なので、確かに、これは、素直にアニメで見てみたい感じはするし、実際、楽しみ。
2クールということだから、ぜひとも9巻まで、というか「災禍の鎧」編まできちんと描いてほしい。5巻ぐらいまでを1クールで、後半の1クールを「災禍の鎧」編として扱うと物語としてはとても厚みがあるものになると思うのだけど。でも、ちょっと無理かなぁ。
ともあれ、4月に映像で見られるのが楽しみ。
そうだ、10巻も読まないとねw
しり上がりにどんどん面白くなってきているだけに、今後のラノベの展開も超楽しみ。