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詰将棋の街路樹

自作の詰将棋をはがきに描いて掲載しています。それから詰将棋鑑賞、日記。

第37期竜王戦七番勝負(藤井竜王―佐々木八段)~藤井竜王、激闘のシリーズを制す

2025-03-29 21:21:29 | 特集(将棋タイトル戦)
第37期竜王戦七番勝負。竜王は3連覇中の藤井聡太竜王、2002年生まれ。挑戦者は佐々木勇気八段、1994年生まれ。二人の因縁は第30期竜王戦にまでさかのぼる。デビュー以来負けなし、しかも29連勝の新記録を打ち立てていた藤井聡太四段(当時)の30連勝を、第30期竜王戦決勝トーナメントで阻止したのが佐々木勇気五段(当時)だった。それから7年、タイトル25期に達していた藤井竜王への挑戦者に、タイトル初挑戦となる佐々木勇気八段が名乗りを上げた。

第37期七番勝負開幕局を藤井竜王が制するも、激闘が続き、第4局終了時点で2勝2敗、残り3番で星は五分。第2局、第4局は竜王が完敗と認める内容。
新竜王誕生もあるか―
そう思わせる展開の中、竜王が底力発揮で第5、6局を連勝。竜王防衛でシリーズを締めくくった。
藤井竜王にとって竜王戦前半戦で星を五分に繋ぎとめることが出来たことが大きかった。その前半戦で勝利に寄与した第1局と第3局の竜王の寄せに着目してみた。


第37期竜王戦七段勝負 第1局 
主催:読売新聞社・日本将棋連盟


第1局は2024年10月5、6日、「セルリアンタワー能楽堂」で開催された。戦型は相腰掛け銀。立会人の森内九段に渡した封じ手関連で佐々木八段は話題を作ったが、その封じ手直後の指し手で先手の藤井竜王がペースを掴んでいき第一図の最終盤を迎えた。

■第一図


第一図は116手17同桂成までの局面。佐々木八段が114手目25桂と打った勝負手に竜王が17桂と打ち返し同桂成となった局面。115手目からの3手が見えて勝ちになったと、竜王が後手玉を必至に討ち取る。その117手目を見て佐々木八段投了。この手なら成桂で香を取られることはない。


第37期竜王戦七段勝負 第3局 
主催:読売新聞社・日本将棋連盟


第3局は10月25、26日、「総本山仁和寺」で開催。戦型は角交換振り飛車。先手の藤井竜王は、苦戦するも逆襲に転じ超難解な終盤に持ち込む。そして二枚の角を盤上に放つ華麗な寄せで明解な勝ちの局面になった第二図。

■第二図


第二図は98手75金までの局面。75同歩と金を取り一手詰みを防ぎながら竜取りも見る手が目に付くが、竜王の指し手は違う。約20手の詰みに討ち取る。その99手目を見て佐々木八段投了。


第一図と第二図の次の一手は「フォトドキュメント 第37期竜王戦七番勝負」(読売新聞社)で確認出来る。




フォトドキュメントには全6局の棋譜・観戦記が完全収録されており、写真は充実していてコラムもある。竜王インタビュー、会心の一局として第一局の自局解説がある。第6局翌日に藤井竜王が「創意」と揮毫した色紙を掲げている写真もある。

「最善に寄せる」と意気込みを表現し七番勝負に臨んで竜王を苦しめた佐々木八段だったが、「藤井さんに見えている終盤の景色にはなかなか追いつけない」との言葉も残した。

藤井竜王は4連覇達成。永世竜王の資格は5連覇もしくは通算7期。来期は「永世竜王」がかかるシリーズになる。


終盤の思考 藤井八冠独占の第71期王座戦―再戦へ

2024-09-02 21:49:19 | 特集(将棋タイトル戦)
第72期王座戦挑戦者決定戦が7月22日に行われ、前王座の永瀬拓矢九段が王座24期の羽生善治九段に勝ち、藤井聡太王座への挑戦権を獲得した。藤井挑戦者に1勝3敗で敗れ八冠独占を許した1年後に、再び挑戦者として名乗りを上げた。前期王座戦は勝ち星が逆でもおかしくない名勝負と言われた。結果は第3局、第4局で藤井竜王・名人が終盤で逆転して永瀬王座との五番勝負を制し八冠独占を成し遂げた。

王座戦主催の日本経済新聞社が出版した本で、八冠独占となった歴史的な第71期王座戦を振り返ってみる。
「藤井聡太が勝ち続ける理由 王座戦―八冠の先へ」が、その本だ。



藤井王座のトークショー&自戦解説、観戦記者が語る藤井の素顔&永瀬とのライバル関係、羽生九段などのプロ棋士が語る日経掲載の記事、巻末の「将棋王座戦70年を振り返る」、と興味深いものばかりだが、一番の読みどころは勝又清和七段による5番勝負全4局と本戦準々決勝の藤井竜王・名人対村田顕弘六段戦の解説か。

その本から局面を二つばかり、勝又七段の解説を参考に紹介しよう。

一つ目に紹介する局面は第71期王座戦五番勝負第4局(先手:永瀬拓矢王座―後手:挑戦者 藤井聡太竜王・名人)の終盤122手目55銀までの局面(A図)。

A図


A図は永瀬王座勝勢の局面。藤井挑戦者は馬取りの55金ではなく44に効かせるほうが勝負のあやがあると55銀。これで読み筋を外され既に1分将棋の永瀬九段は、53馬と指してしまい玉が捕まらず逆転負けとなった。A図では42金以下、37の角をを引っこ抜いて勝つ順があったとのこと。また42金以下、難解な詰み手順もあるとのことで調べてみると、42金、22玉は32金、13玉、22銀以下。またA図以下42金、同金以下の主要な詰み手順は、本で解説されているので確認してほしい。
それから詰将棋のような手順で藤井挑戦者が勝った第2局の手順・解説なども必見。

次に紹介する局面は第71期王座戦本戦準々決勝の藤井聡太竜王・名人対村田顕弘六段戦(村田が先手)の75手までの局面(B図)。

B図


B図は村田六段勝勢の局面。このままだと藤井玉は42銀、52玉、51金以下詰まされてしまう(42銀に61玉は51金まで。)。八冠達成に向け挑戦者になるのは、もはや駄目かと思われていた局面。しかし、ここから藤井竜王・名人は8手後に村田玉に約20手の詰みを生じさせ勝利する。分析してみると
藤井76手目 詰めろ逃れ
藤井78手目 詰めろ
藤井80手目 詰めろ(勝又七段指摘の鬼手)
村田81手目 詰めろ逃れの詰めろ
藤井82手目 詰めろ逃れの詰めろ
藤井84手目 詰み逃さず
勝又七段によると詰めろ逃れの詰めろの応酬のところで逆転。直後の難しい詰み手順を逃さず。藤井竜王・名人の終盤の超絶技巧が生んだ渾身の逆転劇だった。手順は本でご確認を。
敗れた村田六段だが、この対局で優勢を築いた新村田システムが脚光を浴び、「新村田システム」の本がマイナビ出版から上肢される運びとなった。また村田システムなど独自の工夫に対して升田幸三賞特別賞も受賞した。

「藤井聡太が勝ち続ける理由 王座戦―八冠の先へ」の中で勝又七段は「詰将棋的終盤思考」の言葉を用いて藤井王座の終盤力を語っている。その終盤力を誇る藤井王座に永瀬九段は、どう挑むのか。藤井王座対永瀬九段の「王座戦ダイレクトリマッチ」となる第72期王座戦第1局は、9月4日神奈川県秦野市「元湯陣屋」で。


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