雑記帳(新居)

移転完了しました

Vリーグ最強の大砲、デラクルス

2008-02-20 04:07:15 | バレーボール
デラクルスはリーグ史上最強の大砲の一人という説まで出てきた。ケニーとかカルカセスは完全に超えている。比較対象になるのはもはやバーバラくらいしかいない。
参戦したのが年明けの7試合目からで、そのためセット数規定不足で集計にまだ出ていないけれども、アタック決定率52.90%、アタック決定数セットあたり6.21本とも、部門1位の荒木とパブロワを上回っており、実質1位である。(今シーズンから、Vリーグのアタック決定数はセットあたりで集計)
ベティは決定率が高いのみならず、サイドの大砲タイプの選手ではミスも少ない。体勢が不利な場合でも、ブロックを利用して外にはじき飛ばしたり隙間を抜いたりするのも上手く、それがミスの少なさという数字にも表れている。同じチームで戦うならこれほど頼りになる選手はいないし、相手にすれば全く手に負えない。

来日前のデラクルスの前評判はそれほどではなかった。一発の威力にはもちろん期待されたものの、ミスの多さあるいは精神的なムラなどを懸念する意見も多かった。(むしろ前評判ではニコリッチのほうが上。ワールドカップの成績を考えれば仕方がないが)しかしその選手がここまでやってのけるのだ。
本当に久しぶりに、世界はこれほどすごいのだと実感させてくれる選手がきた。ベティがVリーグに参戦したことを素直に喜び、そして彼女のプレーを堪能しよう。
以下の議論では、(アタック決定率-アタックミスの割合)という数字を考えることにする。この数値を(仮)効果率と表記する場合もある。
国際大会で集計される「アタック効果率」は以下の通りの定義である。
アタック効果率 = (アタック決定数-アタックミスの本数-被ブロック本数) / アタック打数
この「効果率」を用いるのが本式だが、Vリーグの集計では各選手が何本ブロックされたかが不明のため、この数字は算出できない。そこでアタックミスの割合のみ計算に含める。

女子のサイドアタッカーでは、これが35%で合格点、40%なら非常に優秀と言える。'02-03シーズン、武富士準優勝時のアルタモノワを最後に、Vリーグ女子のサイドアタッカーで、この数字で40%以上を達成した選手はいない。ところがベティは45%を超えており、はっきり言って「あり得ない」成績だ。
歴代の有名なエースおよび今シーズンの外国人エースについて、この数値を計算してみると下の表のようになる。今シーズンの選手の数字は、2/17現在である。
..............年度..打数..決定..失敗..決定率..(仮)効果率
ペレス........98-99.1187...606....50..51.05%..46.84%
イエリッチ....98-99.1810...940...128..51.93%..44.86%
アルタモノワ..98-99.1713...833....91..48.63%..43.32%
..............02-03.1129...553....70..48.98%..42.78%
カルカセス....05-06.1584...765...197..48.30%..35.86%
ケニー........06-07.1435...671...142..46.76%..36.86%
----
パブロワ......07-08.1041...481....84..46.21%..38.14%
ロンドン......07-08..531...240....37..45.20%..38.23%
デラクルス....07-08..552...292....35..52.90%..46.56%

デラクルスの数字は、イエリッチ・アルタモノワ・ペレスなど、「伝説的」選手の絶頂時に匹敵するものだ。Vリーグの絶対的エース(チームのアタック決定数に対して30%以上の決定数)でこの値が一番高いのは、'98-99シーズンのペレスで、46.84%である。ただし、ペレスは本職はセンターで速い攻撃も多かったから、この数字はベティと同格に扱うことはできない。純粋なサイドアタッカーでは、'98-99シーズンのイエリッチの44.86%が最高である。ただし、下記の数字に示されるように、当時のバーバラはとにかく打数の多さも異常であり、チームのアタック総数の半分を優に超えていた。チームのアタック総数に対し、当時のバーバラと同じ比率で打ちつづけるとすると、現在のデラクルスの1.5倍以上の打数になる。そこまで攻撃の負担が集中しては、いくらなんでも現在の決定力を保つことは不可能だろう。