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久しぶりに小説を読んだ(「業平」髙樹のぶ子)

2023年06月17日 09時23分37秒 | 

久しぶりに小説を読んだ

「業平」髙樹のぶ子作
落語でも有名な「ちはやぶる、、」の和歌と、伊勢物語の主人公として知られる
在原業平の物語で、何ヶ月か前に図書館から借りてトライして読むのを辞めてしまった本だ

再挑戦となったのだが、そのきっかけは何だったのか忘れた
(多分、この作の後の小野小町を主人公とした「百夜」が
 アマゾンからお勧めとして紹介されたからと思う)

年を重ねると記憶力が情けないことになって、登場人物の名前や
肩書が何だったのか等が飛んでしまって本当に困る
そのうち思い出すだろう、、と読み進めていくしかないが
ホント落ち込みそうだ

物語は読んでいく過程で、事件・エピソードを体験していくことになるが
これは主だった事件を予め知っている方が良いと実感した
当時の権力闘争や応天門の変、橘逸勢の事件、藤原高子と在原業平の関係などは
作者は読者はそれらを知っていると仮定して書かれているようだ

自分は知らないので、その都度ネットであれこれ調べて
時代背景を理解しようとした

この小説はは歌人としての在原業平の心象風景を紹介したもので
本の最初と中頃に趣のある絵と一緒に和歌がいくつか取り上げられている
いくつかの章ではそれらが使われているのだが
知恵比べとか心理戦を和歌を通じて行っている男女の関係は
それなりに余裕があって良いものだ、、とも思う

節操のない源氏物語の光源氏は、関係を持たないようにした女性たちがいる
それは出家した女性、それと斎王となる女性だったと記憶しているが
この物語ではとてもロマンティックにこのタブーは破られる

小説の筆力のせいだろうが、業平の反則行為をついつい応援してしまう
(それはドン・ジョバンニの勢いに任せた行為を許すような気持ちと似ている)
行為は直接的な描写はないが、それが故に切なかったり情感に訴えるものだった
斎王が病気になったと偽って、しばらく表に出なかった行為は
それ以上の説明がなくても見当がついた(共寝すれば必然的に起きてしまう出来事)

実生活に無関係な和歌は、和歌の上手い下手で、それなりの立場の人の能力(ポテンシャル)
がわかるので、何かを見極めるには良いと思われる

話は飛んで、こうしたフィクションは想像の世界での創造物は
現状を分析し、いますべきことを効率よく紹介した啓発本とか社会の解説本よりは
どこか余裕があって良いものだ、、と読みながら実感した

小説の最後の業平の和歌はなかなか面白い
「つひに行く道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思はざりしを」
なるほど、そうかも知れない

こうした本を読んだ後、百人一首のお気楽な解説本を読むと
人間関係もわかった後なのでより楽しむことができる
昔の人は、余裕があったものだ






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