DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

謎(11)

2014-03-20 17:31:44 | ButsuButsu


男はまだ湖底にいた。

ゆらゆらと水の動きに漂いながら、丹念に湖底を調べていく。

水は濁っていて、時々よく見えなくなる。

1980年代に潜ったときには、もっと視界がよかった記憶がある。

随分と変わったものだ。

時々、円形パッチのような模様が目に入る。

真ん中が白っぽく、その周辺が青みがかっていて、そして茶色な湖底が広がる。

白い部分は、魚が死んだあとだ。

分解されて、何も残っていない。

骨さえもない。

青い部分には、嫌気的なバクテリアがいるのだろうか。

2007年にはたくさんの魚が死んだことが思い起こされた。

暖冬の年、夏は暑くなり、急激に湖底の溶存酸素濃度が低下した。

確か、2ppm以下となった記憶がある。

多くのイサザとスジエビの死体が捕獲された。

それを見たとき、男は悲しくて、涙ぐんだ。

湖が大きく変わり始めたころだった。

今は、このような死骸の跡を見ても、格別な感じはない。

自然とはそんなものだ。

やがて崖にぶつかり、次第に上昇する。

島ではない。

湖底に沈んだ山だ。

湖底山とでもいうのだろうか。

水深30mほどまで、急激に浅くなる。

上を見ると空が透けて見える。



体の力を抜き、後はゆっくりと上昇する。

死の世界から生の世界への帰還。

静から動への変化でもある。

3月19日(水)のつぶやき

2014-03-20 05:17:07 | 物語