キャリー・バンクス・マリス
1944年生まれ。
アメリカ合衆国ノースカロライナ州レノア出身の生化学者。
ポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) 法の開発で知られ、その功績により、1993年にノーベル化学賞及び日本国際賞を受賞した。
彼の自叙伝が早川書房から出版されている。
1979年にシータス社で働いていた頃の話である。
自由な研究環境が、会社の発展とともに窮屈なものに変わる。
会社における形式主義者の台頭だ。
安全管理者が組織化され、どんな些細なことも危険視するようになった。
ある朝、キャリーが研究室へ来てみると、安全管理者によってそこらじゅうにステッカーが貼り付けられていた。
あるキャビネットなど、ガラス扉の半分以上もステッカー覆われていた。
キャリーは、安全管理者のところへ怒鳴り込んだ。
「オレの研究室の人間は四六時中、危険だ、危険だと言われる必要なんか全然ない。オレたちはそんなにたいして危険な中にいるわけではないし、危険なことをしているわけではない。お前の貼ったステッカーのお陰で、いったい何が危険で、何が危険じゃないのかがわからなくなったじゃないか。お前にかかると全部が危険物にされてしまう」
この文章を読んで、私は強行採決された特定秘密保持法案のことを思い出してしまった。
何が秘密で、何がそうでないのかが分からなくなってしまう、恐ろしい法案だ。
二つのことが問題だと思う。
一つは、秘密が保持されているかどうかを極秘に監視する、秘密警察が設置されることだ。
小泉さんが総理大臣になった時、1999年から行っていた中国での湖沼調査が突然中止となった。
中国の研究者に理由を聞いたら、秘密警察からの指示だと言うことだった。
湖の調査のどこが秘密なのかが分からないが、理由なく調査が出来なくなった。
もう一つの問題は、偽装か真相かの区別がつかなくなることだ。
今、レストランの食材偽装が問題となっている。
国が冒した過ちが公表されなくなる。
国に不利益になるからだ。
国民は常に泣き寝入りとなるのか。
私たちに出来ることは、今回の強行採決に賛同した国会議員には今後投票しないことだろう。
わが国が秘密警察国家にならないことを祈っている。
日本は、独自の平和国家路線を貫いたほうがよい。