4・ネトル
和名で「セイヨウイラクサ」は、日本でも雑草の一種とみなされています。
しかし、ビンゲンのヒルデガルトは、
「地中から芽が出たばかりのネトルを茹でて、料理の材料に使えば、
胃が綺麗に掃除される」
とネトルを讃えています。
農家にとっては雑草扱いのスギナ、タンポポ、ヨモギも
驚くべき効能のあるものですが、
ネトルのように雑草として邪魔者扱いをうけています。
さて、ネトルは、体の中の老廃物(酸化物や尿酸などの代謝産物)の
排泄を促すことによって血液を浄化しますので、
アトピー性皮膚炎や花粉症、リウマチといったアレルギー性疾患や
痛風や前立腺肥大といった代謝性疾患を予防する
ハーブとして用いられています。
そのためヨーロッパでは春先にエルダーフラワーや
ダンディライオン(タンポポ)とともにネトルを摂取し、
体質改善をはかる春季療法と呼ばれるハーブ療法が確立されています。
日本では、血行を促進し体を温めるユズを冬至の時期に入浴に用いる
ユズ湯の習慣がありますが、
同じようにネトルなどをいかしたヨーロッパならではの
ハーブ療法があるのです。
(以下はメディカルハーブ安全性ハンドブックを参照)
ネトルの含有成分は、
1・クエルセチンなどのフラボノイドやルチンなどのフラボノイド配糖体
2・それにクロロフィル(葉緑素)やβ-シトステロールなどのフィトステロール
3・β-カロチンやビタミンC
4・ケイ酸、カルシウム、カリウム、鉄などのミネラル・葉酸などの微量要素
と多岐にわたります。
特に葉緑素の分子構造は人間の赤血球の血色素(ヘモグロビン)の分子構造と類似しており、
葉緑素の分子構造の中心がマグネシウムであるのに対し、
血色素の分子構造の中心には鉄が配置されています。
また、ネトルには鉄が含まれているため、貧血の人や妊婦さんが服用するケースがあります。
鉄は体内での吸収率が低く、また、動物性食品に含まれている鉄よりも
植物性食品に含まれている鉄のほうが吸収しにくいことが知られています。
ネトルの場合はビタミンCが含まれているため鉄の吸収が高まりますし、
また、フラボノイド類が鉄イオンをキレート化して可溶化するため、
吸収が高まると考えられています。
ケイ素は骨や歯、爪や髪などにカルシウムとともに存在し、
また、コラーゲンやエラスチンといった結合組織に働いて
構造を強化することでも知られています。
ネトルが血液浄化とは別に爪や髪の弱質化や瘢痕の修復など、
植物美容学や植物皮膚学の領域でも用いられているのはこのためです。
ネトルはドイツの植物療法の公的機関である
コミッションEのモノグラムにも収載されていますが、
そこでの適応はリウマチや膀胱炎、尿道炎、
それに尿砂(結石の原因となる砂)を洗い流す目的で用いるとされています。
ネトルの根にはβ-シトステロールなどのフィトステロールが含まれ、
良性の前立腺肥大の際の排尿障害などに用いられます。
ネトルの茶剤(ハーブティー)の服用法は、
ティースプーン山盛り3~4杯(約4g)の乾燥したネトルの葉に熱湯を150mℓを注ぎ、
フタをして10分間抽出したものを1日3回服用するのが基本です。
葉緑素が多いため、お抹茶のような風味で和菓子に良く合います。